もっと、もっと、上に成らなければ……。
もっと、もっと、強く成らなければ……。
あの頃は、かなり思い詰めていた。
強さばかりを追い求め、いつも努めていた。
強く成らねば、生きる意味は無い。そう、感じるほどに。
己の有する全ての才能を、研ぎ澄ませることしか……眼中に無かった。
若さ故に……無知が故に驕り、傲慢だった。
かつて、誰よりも完璧で無ければ、己を許せなかった。
かつての己は、苛烈で独善的だった。
まるで反面教師にしていた、師匠のように。
何も考えず、いとも容易く、躊躇も無く、淡々と命を奪ってきた。
命の重さは、皆等しく同じだ。
重罪人とて、それは変わらない。
かつて、命を奪うことは己を強くする手段の一つでしか無かった。
でも、今は違う。
今の己は、命を奪うことの重さを知っている。
己の強さは、他者を思い遣らねば、成立しないことを知っている。
研ぎ澄ませてきた……己の強さは、他者が苦しまぬ為に在る。
高みを見るのでは無く、眼の前のことに集中する。
そして、その一瞬が生涯に幕を閉じる者の『人生』を決めるのだと思う。
10/14/2023, 2:34:38 PM