これからも、ずっと、隣にいるんだと思ってた。だって、生まれた時からずっと隣にいたから。どこに行くのも何をするのも一緒で、隣を見れば目が合うし、いつだって楽しそうな君の顔を見てた。君はあたしで、あたしは君で。一緒に大人になって、一緒におばあちゃんになって、一緒に死ぬんだと思ってた。
なのに。
知らなかった。離れ離れが辛いことを。遠くに行った君の気配を探して歩き回った。星を見に行った丘に登っても、花かんむりを作った花畑に行っても、魚釣りをした川に行っても、どんなに探しても君はいない。隣を見ても誰もいないし、誰もあたしの手を引いてくれない。空気に触れる左手がひどく冷たかった。これがずっと、これからも、ずっと続くんだ。目がじわっとあったかくなって、涙が出た。でも、涙を拭ってくれる君はいない。
もう、隣にいてくれる君はいない。
「わぁ〜!きれい!」
彼女の歓声に息が切れて下を向いていた顔を上げる。
「わぁ……」
小さな宝石を散りばめたような満点の星空に感嘆の声が漏れる。
「きれいだね!××!あっ、見て!流れ星!」
ぎゅっと握られた手を引き寄せられて彼女の指差す方向に目を滑らせた。流れる星と書いて流れ星。言葉としては知っていたけれど、見るのは初めてだった。夜空を泳ぐように光の軌跡を残す星達はこれまで見た何よりも綺麗だと思った。こんなに綺麗な星空の下で彼女と星を見ることができるなんて少し前まではミリとも思っていなかった。
「なんだ、お前ら流れ星見るの初めてか」
「あ、ししょう!来るのおそいよ!流れ星終わっちゃう!」
後ろから声をかけられて振り向くと師匠と兄弟子が歩いてくるところだった。
「流星群だからそんなに急がなくても終わらないよ」
兄弟子がゆるりと微笑み頭を撫でる。
「りゅーせーぐん?」
「そう、流星群。今流れてるこの星たちはね……」
兄弟子の長話が始まったので興味深そうに聞いている彼女を残して少し距離をとった。天体とか星座とか難しい話は少し苦手だった。
「おまえも聞いておいた方がいいんじゃないのか?」
「うるさいな、あとで××に聞くからいいもん」
頭に肘を乗せてにやにやとこちらを覗き込んできた師匠の顔を押しやって睨みつける。
「そんな可愛い顔したって怖かないね」
本が閉じられる。あたしが綴じられる。最後にどうしても突き飛ばしたあなたが心配で振り返ると目が合う。縋るような目だった。弱々しげに伸ばされた手はあたしに届かない。それでいい。あなたが生きてくれたらそれでいい。さよなら、あたしの全て。あたしの分まであなたが生きて。
ねぇ、起きてよ。もうお昼になっちゃうよ?
そう声をかけられて目を覚ます。寝ぼけた視界に君の顔。枕元のスマホで時間を見る。4月1日11時37分。今日は晴れ。無視されてむくれる君を横目にまた布団に潜り込む。
あっ!なんで寝ちゃうの!?起きてよ!ねぇ!
布団越しに喚く君。今日は4月1日。エイプリルフール。そう。明日になれば君の声は聞こえない。その声は、私が作り出した偽物だ。
ご飯を食べてる時、眠る時、遊びに行く時
君の方を見ればいつだって目が合う
私が君を見てない時も君は私を見つめてるんだろうね