「え?ガーデニングをやってみたい?」
「……う、うん……ちょっと興味があるっていうか、こう、ね?き、気分転換?あ、空いてる時にちょっと教えて欲しいなー、なんて」
いつもの品物を買うついでにとそんな相談をされ、チガヤはキョトンとする。暫く姿を見せなかったかと思いきやトレードマークとも言えるほどに長かった髪をバッサリと切った友人の、俯いてもにょもにょと口篭る姿を物珍しそうに見つめた後、ふむ、と考えるように視線を上に向けた。
「……や、忙しいなら大丈夫なんで、そいじゃあ」
「まってまって、違う違うよ、どういう花をおすすめするべきかなぁって考えてただけだから」
暫しの無言に耐えられなかったのかスっと帰ろうとする背中を引き止めて、立ち話もなんだしさと作業場兼休憩場所となっているバックヤードに通す。彼女は店は良いのかと心配していたがどうせ馴染みの客しか来ないだろうし呼んでもらえれば聞こえるのだから問題ない。
「はい、ここ座って。ごめんね、ちゃんとした椅子なくて」
「えっ、わっ、いや、今じゃなくて良いんだけど」
「いやいや、ナギさんはそう言ってもう声をかけてこないでしょう?せっかくやってみたいって思ってもらえたんだもの、すぐやってみようよ」
「で、でも、今、君は仕事中だろって」
「僕はナギさんが暫くお店に来てくれなくて寂しかったんだけど」
「人の話を聞け?」
「せっかく久しぶりに会ったのに、ナギさんは僕とのおしゃべりに付き合ってくれないの?はい、どうぞ」
椅子をすすめても気まずそうに立っていたが、お土産に持ってきてくれたクッキーと休憩時に飲もうと用意していた紅茶を簡易的にテーブルにしている段ボールに置くとさすがに観念したのか椅子に座った。その対面に座ってまずは紅茶を1口。お客さんから貰ったものを適当に用意したが、なかなか美味しい。これはリピありだ。彼女も紅茶に口をつけたのを見届けてから口を開く。
「とりあえず、ナギさんはお庭をどんな感じにしたいかな。難しい花を育てるとか複雑なレイアウトでも僕一緒にやるし、なんでもやれるよ」
「なんで君もやるの前提なんだよ」
「え〜?僕も人様のお庭でガーデニングしたぁい。ナギさん家のお店ってさ、お庭も結構広めだから手を入れてみたかったんだよね」
「私欲しかねぇな」
ボソッと呟かれた言葉は聞かなかったことにして、ガーデニング雑誌や庭園の写真集なんかを引っ張り出す。
「この中にこういう感じとかあるかな」
「うーん、うわ、庭ってこんなカラフルになっていいんだ」
5/2/2026, 5:23:08 AM