テツオ

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4/19/2024, 3:04:27 AM

幼少期のわたしは、ただただバカでした。

頭でさまざまなことを考えていましたが、所詮保育園児、まるでトンチンカンなことしか、浮かんでいなかった。

たとえば、赤を血の色だと知った時、プチトマトが母親の手によって、グチャグチャに潰れてしまったのを見た時、わたしは、「赤を10回見たら死ぬ!」という、そんなワケないのだが、もしかしたらそうなるかもしれない、という、予想をした。

わたしはそのとき、自家の二階にひとりで尻もちをついていて、そう、そのとき、まだオムツを卒業出来ていなかったのだ。だから、尻が重くて、立ち上がったりはあまりしなかった。
それで、座っているだけだから、赤色なんて目に入らない。

しかしわたしは、「死ぬ!」と予想つけているのだから、よせばいいのに、頭を回して、目を回して、二階の部屋から赤色を探し出した。
好奇心の始まりだ。

あっというまに、10個、赤色を見つけ出して、出したが、死にはしなかったので、「もしかすると、100回みなきゃ死なないのかもしれない」と、途方もない考えを思いついた。

それから、すこしは赤色を意識して見ていたが、やはり、所詮は保育園児の妄想だ。
三日と経てば、この薄い赤は赤に数えられるんだろうか、この赤は昨日もみたような気がするが、これも一回に数えられるんだろうか、などと、つまらないことを思いつめ、終いには、ヒドイことに、自分が赤を何度見たか忘れた。

それで、「たぶん、この三日で赤なんて100回より多く見てるし、赤はこんなにたくさんあるんだから、死ぬまで危険なものじゃない」と、なげやりに終わらせた。
そんな、変な考えばかりを思いついて、中途半端に終わらせてばかりだったから、保育園でも小学校低学年でも、友達がすくなく、いじめられていたのだ。と思う。

しかし、幼少期の思い出は、あまり楽しいものがない。
0はなによりも大きい数字だ!などと思いつき、保育園中を触れ回ったりだとか、保育園児らしく、泥団子に熱中したりとか、それくらいだ。

だというのに、思い出の彩度はやけに高く、コントラストが派手で、まるで、サンバやサーカスみたいに映るのだ。
かといって、「パプリカ」の、華やかすぎて、気色が悪い、パレードのシーンみたいな、それじゃない。
そんな彩度で、まぶしいのに、そして起こっていることはたしかに嫌なことで、暗い思い出のはずなのに、カラフルで、美しいのだ。

そう、たとえば、保育園ではじめてプールにはいった日のこと。

プールなんだから、当たり前だが、よくある折りたたみ式のプールに、冷たい水がしきつめられているのがなんだかふしぎだった。
ナイロン袋に水を敷き詰めて、そこに飛び込もうとしてる、みたいな感覚に近い。

わたしは何人かの園児たちとともに、暑そうにタオルなんかを首にまいている先生らに見守られながら、冷えた水に体をひたした。

青いプールの底が、水に映っていたので、てっきり水は青色だと思ったのだが、手ですくいあげてみると、それは肌の色に変貌した。
バジャッと、となりにいた、園児に、強く水をぶっかけられて、その瞬間見えた色は、白と、空の透き通った青色だった。

アニメでおぼえた、透明という言葉は、この水に使われるんだろう、と察し、わたしは水を浴びた。

水の、無色という綺麗な色を感じて、そのヒンヤリとした冷たさと、頭に被ったプールキャップとの違和感に、体が引き締められたのを、今でもよく覚えている。

当時のわたしには、たしかに、透明という色が見えたのだ。

3/31/2024, 11:35:09 AM

「幸せんなってね」

うみの水面と、私の視界はゆれている。
ゆりかごよりゆっくり、くらげより早く、ゆれ歪むなかで、みさとちゃんは笑ってた。

「幸せんなりたいね」

喫茶店で、ちょっと古いカフェで、向かいの席に座るみさとちゃんは、あいさつをするくらいすんなり言う。

私は、みさとちゃんの性格をよく知ってるつもり。だからエッと思って、大人しく、手は両膝に乗せたりなんかしちゃって。次の言葉を待った。

「……1000円ずつでど?」
「っん?」
「えっ。フツーに」
「アレ、もう会計いくかんじなの」

みさとちゃんは、三つ編みをポロッと肩から落とすくらい、深くうなずく。

パチンと二人目を瞬きあったけど、みさとちゃんはそのまんま、自分の羽をついばむ鳥みたく、手を白いカバンに突っ込んで、お財布を取り出し、あとぐされもない感じで、ガタッと立ち上がった。

「えあっあっ、えっ起きた!」

白いベットに寝てる私のむねに、転がりこんでくるみさとちゃん。
私ら、さっきまで喫茶店いなかったっけ?

「あんた覚えてないの?自殺しようとしたんだよ」

いつか、いつか忘れちゃった。いつか観た映画みたいに、シーンつなぎがこう、ツギハギなかんじ。

喫茶店はって言おうとしたら、声が出ない。
口に酸素マスクつけてあった。

「ねえ、1000円ずつがいけなかったの?あんた、お金無かったの?あたしになんで相談してくれなかったの?」

みさとちゃんの三つ編みがくすぐったくて、私はクスクス笑った。

「なに〜?」

みさとちゃんもクスクス笑って、私を見た。

「みさとちゃんのこれ、きれいだねえ」

私はみさとちゃんの綺麗に編まれた三つ編みを指さして、羨ましがる。
またシーンが飛んでるの。でもツギハギじゃないかも。

「みさとちゃあーん!お母さんがお迎え来たよー!」

保育園の先生が、スラッとした人影つれてやってくる。
みさとちゃんはわーっと駆け出して、私も後を追う。みさとちゃんの三つ編みから、綺麗な香りが漂って、私は、ふうっと幸せに息をついた。

「彼氏できちゃった!」

今度はお泊まり会。私の手にはホットミルク入りのマグカップ。
紺色のカーテンは閉まってる。

「えーっみさとに?」

私はおどけた感じで言ってみて、みさとちゃんはそれに怒って、バタッと立ち上がる。
そんで、机揺らして、ホットミルクこぼして、二人いっしょにやけど。

「あっ」

みさとちゃんの足に当たって、凄まじく机が揺れた。
私とみさとちゃんのマグカップが一緒にこぼれて、一緒に叫んだ。

ザザーッと波が足首までこみあげて、私はびっくりする。

「声帰ってこないねえ」

綺麗な衣服を生暖かい南風にゆらし、みさとは私に言った。

「海びこってないんだね」

私は言って、みさとはクスッと笑った。
行こ。とだけ言って、みさとはきびすをかえす。
防波堤に置いていた、上質なバックをひっかけ、車のキーを取り出してる。

「なんでも相談してね」

みさとはサイフからお金を出して、私に押し付けた。
これは、多分、自殺云々のあと。
このあとどうなるか、私は知ってる。
なんで知ってんだろ。

「いらないよ」
「いいよ。遠慮しないで」
「いらないって」

私は強めにみさとを押しのけて、きびすをかえす。
ぱつっと、みさとに腕を掴まれて、失敗。

「お金、必要なんでしょ」
「……あんたの彼氏からなんて、もらいたくないよ」

振り払って、そのまま帰った。

みさとといっしょに歩いてると、電話。母からだった。でてみると。
嫌にしずかで、つめたいかんじがしたのを覚えてる。
少ししたら、知らない男の人の声で、お母さんが倒れたことを知らされた。

がん。
治療にお金が必要だった。

「女手ひとつで、あんた育てたってね」

ベンチで塞ぎ込む私に、ああやって酷く振り払った私に、みさとは優しく、いい生地でできた上着をかけてくれた。

「困ってんならいって。
あと、その上着、あげるね」

えっと驚いて、私が顔を上げてみると、夕暮れのバターの中に、みさとの優しい笑顔があって、みさとは、「未練、残したくないの」。

私の目から、涙が溢れて、汚いけど、ちょっとだけ鼻水がでて、私が覚えてるなかでいちばん綺麗な夕焼け空があった。

「今月もスケジュールつめっつめ!売れっ子アイドルかっての」

みさとはひとつにくくったポニーテールをゆらっと揺らし、アイスを一口にくわえる。
扇風機がわたしたちに風を送って、私はみさとのいい匂いをふーんと嗅いで、香水のことを、なんとなく聞いてみる。

「つけてるわけないでしょ。香水なんて買うだけムダじゃん!あたしの香りは自然の香りなんだから」

得意げに話すみさと。
汗臭くなくていいなあなんて、私はその時思ってたんだっけ。

これ、走馬灯なんだね。

何で私、死んじゃったの

3/28/2024, 3:41:34 PM

陶器みたいに白い足。ゆーらゆーら揺れて、靴下の布がおいてかれて、追いついて、おいてかれる。

ふつう、足首にキュッとひっつくために、靴下にはゴムがあるけれども、ゆーるゆるになっちゃったら、彼女のように、なる。

「ヒラヒラして、フリルが足から生えてるみたいだね」

ひくっと、白い足が静止。
わたしはベランダの塀に手をかけて、かけようと思ったけど、やっぱやめた。

「お外みてるの?」

上から垂れる白い足。
わたしは知ってる。わたしの上はちょうど屋上で、だから気になる。

「お、お、お、ぉちぃそうなのぅ……ま、ま、まま……ま……」

きれいで静かな、お姉さん声。
声に合わして、足、ふいふいーと揺れた。
わたしは知らないお部屋を振り返って、「ママもパパもここにいないよ」

「え、で、んわ、や、えと、あ、あ、だ!だだれかよんで!よんで!おとな、ぉとなっ」

わたしはベランダの下をわざわざ覗きみなくても、その様子や、高さは知ってる。
足はさまよって、地面がどこにもないからさまよって、行き場なくしてパニック。
ふらッふら。

「死にたくないの?」
「うぉ、や、いま、いい!おとな、な……」
「死にたくないの?」

お姉さんは大声で泣き出した。
色々限界みたい。

「助けぇて!!助けぇてぇ〜!!」

お姉さんの足がちょっとずつ降りてきた。
ズリッズリっ音が上から降ってくる。

「ってぁ」

落ちた。

スカートがひるがえって、長髪の黒髪が空に吸い込まれるみたいに、しゃらしゃら、お姉さんの絶叫はあっという間にずっと下からこだま。

わたしは地面を蹴って、ベランダから飛び降りる。

空中で一回転!飛び込み競技なら、何点?わかんない。
もっとしりたいこと、いっぱいあったよ。

「あっべ!?ぅああ!」

お姉さんの手、両手で掴んで、お姉さんのすさまじく落ちる速度はふわっときえる。

「えっ、えっえっえ、」

お姉さんの顔はやさしいかんじで、お母さんににてる。お姉さんの目をじーっと見つめて、ちゃんとじゅうぶん見つめたら、わたしはにいっと笑って、お姉さんといっしょにすいーっとお空へ上がってく。

「わたし、ゆうれい。いっしょにいこお」

2/7/2024, 11:54:45 AM

人生を変えてくれた大好きなキャラを自分の力で有名にする

2/1/2024, 10:36:16 AM

ゆかちゃんがブランコに乗ると、高くまでのぼる。
ぼくはブランコを下りるのが苦手で、あんまり乗らない。

今日も、ゆかちゃんがブランコに乗ってるのを見ていた。
今、どんだけ高いのかな。横に回って見てみる。
見ていたら、止まっていたのに石につまづいて、横だったから柵もない。

ぼくの小さい頭に迫ってくるブランコ。
海の高い波みたいに見えた。

ガガガッン!頭がキーーーンッとなって、ぼくはううううんっとへたり込む。
チャイムの音が変な風に歪んで聞こえて、頭がボーッとして、そのまま、ぼくは寝てしまった。

「あれ」

起きると、ゆかちゃんと、なんでか、あんまり喋ったことのないはなちゃんがいた。

ぼくは保健室のベットに寝ているみたいで、ぼくは声をかけようとする。
しかしふたりはさっさと立って、さっさと歩いて、ぼくが呆気にとられているうちに、保健室の引き戸がピシャンと鳴った。

引き戸の外から、先生の、「ちゃんと謝った?」
ゆかちゃんが、「はい」遅れて、はなちゃんも「はい」

ぼくは全然、意味が分からず、口を開けていた。

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