陶器みたいに白い足。ゆーらゆーら揺れて、靴下の布がおいてかれて、追いついて、おいてかれる。
ふつう、足首にキュッとひっつくために、靴下にはゴムがあるけれども、ゆーるゆるになっちゃったら、彼女のように、なる。
「ヒラヒラして、フリルが足から生えてるみたいだね」
ひくっと、白い足が静止。
わたしはベランダの塀に手をかけて、かけようと思ったけど、やっぱやめた。
「お外みてるの?」
上から垂れる白い足。
わたしは知ってる。わたしの上はちょうど屋上で、だから気になる。
「お、お、お、ぉちぃそうなのぅ……ま、ま、まま……ま……」
きれいで静かな、お姉さん声。
声に合わして、足、ふいふいーと揺れた。
わたしは知らないお部屋を振り返って、「ママもパパもここにいないよ」
「え、で、んわ、や、えと、あ、あ、だ!だだれかよんで!よんで!おとな、ぉとなっ」
わたしはベランダの下をわざわざ覗きみなくても、その様子や、高さは知ってる。
足はさまよって、地面がどこにもないからさまよって、行き場なくしてパニック。
ふらッふら。
「死にたくないの?」
「うぉ、や、いま、いい!おとな、な……」
「死にたくないの?」
お姉さんは大声で泣き出した。
色々限界みたい。
「助けぇて!!助けぇてぇ〜!!」
お姉さんの足がちょっとずつ降りてきた。
ズリッズリっ音が上から降ってくる。
「ってぁ」
落ちた。
スカートがひるがえって、長髪の黒髪が空に吸い込まれるみたいに、しゃらしゃら、お姉さんの絶叫はあっという間にずっと下からこだま。
わたしは地面を蹴って、ベランダから飛び降りる。
空中で一回転!飛び込み競技なら、何点?わかんない。
もっとしりたいこと、いっぱいあったよ。
「あっべ!?ぅああ!」
お姉さんの手、両手で掴んで、お姉さんのすさまじく落ちる速度はふわっときえる。
「えっ、えっえっえ、」
お姉さんの顔はやさしいかんじで、お母さんににてる。お姉さんの目をじーっと見つめて、ちゃんとじゅうぶん見つめたら、わたしはにいっと笑って、お姉さんといっしょにすいーっとお空へ上がってく。
「わたし、ゆうれい。いっしょにいこお」
3/28/2024, 3:41:34 PM