世界のおわり

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4/28/2026, 11:16:20 AM

《刹那》
私の主と結婚された美しい奥様は、いつも主に白色のつぼみの花が刺繍された贈り物を送る。
学がない私に奥様は花の名前はスズランというのだと教えてくださった。
いつも主には「しあわせが訪れるという伝説があるのよ」と説明なさっていた。
それに主が「今が1番十分に幸せだ」とお返しになるのがいつもの光景だった。
「私には信じられない程長い時を送るあなたたちには私との時間は本当に一瞬、刹那の出来事よ」
そっと秘密を告白するように奥様は私に仰った。
私は我儘なのよ。
だから、白色を見る度に、せめて白色の花を見る度に、私を思い出して欲しいの。
そうほんわかと微笑む奥様に、「そうですね」と返すしかなかった。

ねぇ、奥様。
そんなことをなさらなくても、主は一瞬たりともあなたのことを忘れることはありません。
それにね、奥様がいないと主は二度と幸せになれませんよ。
奥様は主の唯一の番なのですから。



『鈴蘭の花言葉が書かれたページを眺め続けるとある侍従の過去の記憶』

4/28/2026, 4:53:50 AM

《生きる意味》
「お前に生きる意味はねぇ!!」
殺す直前にそんな言葉を投げかけられた。
その言葉が頭から離れない。
まず湧いたのは怒りだった。
『うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさい!
お前に何が分かる!!』
お前は生きるのに、何も困ることはなかっただろう。
次の瞬間些細なことで自分が知らぬうちに自分の死が決定するようなことがなかっただろう。
そんなお前が、俺の人生をよく知らないで、べらべらべらべらと決めつけるな。
次に浮かんだのは納得だった。
自分が死んでも守りたいと思うものがなかった。
自分が好きな物も何もなかった。
でも、絶対に死にたくはなかった。
その意思でここまで生き延びてきた。
いつか、生きる意味をみつければ、自分が死んでもいいと思える瞬間が訪れるのだろうか。
なら、俺は生きる意味を知りたい。

3/24/2026, 3:20:20 PM

《ところにより雨》
僕を拾って手当してくれたニンゲンは目の見えないお人好しだった。
僕はだいたいの身体的特徴はニンゲンであるため、だと勘違いしてしまったのだと思う。
僕は恩を返したらすぐに家を出ていこうと決めていたのだが、目が見えない分普通よりも危なっかしい。
恩を受けた子が命を落とすのは目覚めが悪い為、ここまで成長したら出ていこうということを繰り返している内に長い時間を共にすごした。
ここまでくると自分の仲間だと認識する他ない。
もうでていく気はなくなった。
邪魔者になるまで、ニンゲンの傍で一生を見守ることを決めた。




私が拾った同居人はやさしいヒトだ。
私のことを幼子とでも思っているのか、とても過保護だ。
私は目が見えない代わりに他の五感はより敏感だ。
だけど、私は目が見えないから、ヒトと違うところを見つけることはできない。
だから、可愛い同居人はヒトなのである。

だってあなたの秘密を知ることより、あなたを失ってまたひとりぼっちになるほうが怖かったのだから。
少し嘘つきで私を傍で見守ってくれるあなたが大好きだったから。


ニンゲンに寿命が迫ってきた。
何かやりたいことはないか、と聞いても
「あなたといつも通りの日々を」としか望まれない。
だから、ニンゲンの死臭に気が付かぬふりをして、いつも通りの日常を送ることしかできない。
ニンゲンは眠ることが多くなった。
日課の散歩も満足に歩けずに、僕が抱きかかえるようになった。
僕を忘れた。
お兄さんと呼んで慕ってくれるようになった。



ニンゲンが死ぬ日になった。
何故か今日死ぬという確信があった。
自己紹介をして、散歩をする。
ちゃんと、ちゃんと。
いつも通りの日々を。

散歩の途中に、ニンゲンが船を漕いで段々目を閉じていく。
「また起きたらあそぼう」
まだ寝ない、とグズるニンゲンにそう約束をする。
何かの間違いでもう一度会えないかの下心もある。


「今日の天気は晴れときどき雨だ」
寝ているニンゲンに対してそう呟く。
雨が降るかもしれないのだから、傘も差さないで寝ているニンゲンに水滴の跡が残るのは、当然のことなのだ。



今日もまた、いつもの家を出て、散歩をする。
ニンゲンにまた会う日を待っている。

3/23/2026, 2:28:39 PM

《特別な存在》
私、あなたの『特別な存在』になりたかったの。
でもね、あなたの大切な人の座はもう収まっている人がいる。
なら、こうするしかないでしょう?




あなたの大切な人を、これ以上ないくらいぐちゃぐちゃにして、私を一生忘れないように、刻みつけるの。
そうすれば、あなたは命尽きぬ限り、私を見続ける。
あなたの愛はとてつもなく重い。
私がどれだけの力を持ったって、あなたはどれだけのコストをかけてでも、私の元へたどり着いて私の全てを滅ぼすのでしょう。
どのような不可能も可能にしてみせるのでしょう。
その目に初めて私が刻みつけられたその時から、私はあなたが私の元へ来るのを楽しみに待っているわ。

3/20/2026, 9:41:48 AM

《胸が高鳴る》
まち望んだその瞬間に私の胸が抑えきれず高鳴る。
ようやくあの方の屈辱をはらすことができる。

綺麗で美しい、輝くあなたに言われることは分かっている。
「こんな馬鹿なマネはやめて!!」
「そんなことは本人も望んでないよ!!」
「そんなことやったって帰ってこない!!」

そんなことは私も身に染みてわかってる。
だから、何だ?
あの方が穢され、貶められ、辱められた。
その末に命を落とされた。
その事実は変わらない。
私はあの方に侍るもの。
あの方がどのような道を進もうと、道の終わりまで付き従うが我が使命。
なら、その使命を果たすことが出来なかったら?
自分が至らぬせいで、自分が誓った忠義に反してしまったなら?
しかも、主人が貶められたのなら?
その時傍に控えなかった自分の不手際を置いておいて、
まずその要因を排除し、報いを受けさせる。
その後、主人に向けて詫びるため、切腹する。


もう一度、あなたの傍へいくのを許されるのならば、あなたの笑顔がみられるならば、私は、

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