黒猫

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《あの日の景色》
(《手を繋いで》の別視点)

俺は一生忘れられない。
二人の辿った結末を。

俺には学校で仲良くしている二人組がいた。
と言っても関わりは薄く学校の屋上でしか会ったことがないし、六ヶ月程度の仲だった。
それでも、二人は本当に仲が良かった。
お互いのことを話す時に少し変わる声色や、お互いを見る目が、此方が泣きそうになるほど優しくて。
大事なんだろうな、とただ思った。
だから、目の前の光景が信じられなかった。
目の前には血に濡れた二人の姿があった。

いつも通り、屋上に向かいながら二人と話す話題を考えていた。
すると、屋上には立ち入り禁止の黄色のテープが貼ってあり、警察がいっぱいいた。
自慢ではないが、俺は視力が良かった。
だから、見えてしまった。
昨日も普通の日常を過ごした二人の死体を。
呆然と立ち尽くしていた。
何がなにやら分からなかった。
でも、一つだけ理解できた。
もう、当たり前だった昨日は二度と来ない。
立ち尽くす俺に警察がそこを退けと指示を出す。
遺体が運び出される。
反対側を向いていたため、見えなかった二人の顔が一瞬みえた。
その二人の顔に、らしさを感じた。
人に殺されるというのに、あんな穏やかな顔ができるものか。
自分で殺した癖に、人を殺し慣れている癖にあんな絶望した顔ができるものか。
気がつけば、泣きながら笑っていた。
この世は、残酷だ。
殺した彼にとっては、全く優しくない世界だった。
せっかく仲良くなった彼を殺すことを強要されたのだから。
でも、殺された彼にとっては、少し優しい世界だったのかもしれない。
知らない人に恐怖しながら殺されるよりかは、泡沫の夢を与えてくれた大切な人に優しく殺される方がずっといい。




俺は二人に秘密にしていたことがある。
俺は、殺し屋のあいつに復讐するために近付いた。
でも、二人と接して復讐の機会を伺ううちに気がついた。
殺し屋のあいつが、ターゲットの彼を殺すのが一番の復讐になる。
あれだけ情が移っていたのだ、少しくらいなら無様なあいつを笑えるかもしれない。
彼もあいつに殺されるなら本望だろう。
その結果は予想以上だった。
殺し屋のあいつは、ターゲットの彼の後をおった。
あれだけの絶望顔をしながら。
満足だった。
今日は宴だ。
でも、何故か涙は止まらない。

7/8/2025, 10:49:12 PM