黒猫

Open App

《届いて、、、》
どうか届けと希う。
このささやかな願い事が、いつか叶えられるように。


俺は、代々とある一族に仕える家系だ。
俺はそんな自動的に定められた自分の将来が、運命が嫌だった。
生まれついてからずっと、その一族のために様々な教育を受けさせられ、両親の関心は俺がどれだけ一族の役に立てるか。
どれだけ俺が優秀か。
俺は褒められたことがない。
ただ、「役に立て」と言われるだけだ。
両親は俺に興味はない。
誕生日を祝われたことも一度もない。
一族の為に、体術を習い、護身術を身につけ、主の為に死ねと言い聞かせられる日々。
両親に従順だった妹は、その言葉の通りに、幼い時に、一族を反射的に庇って死んだ。
誰もが妹を褒めたたえ、死を悼む者は誰もいなかった。
庇われた一族のゴシソクサマですら、当然だとトウシュサマに玩具を強請った。
俺は一族が大嫌いだ。
一族のせいで、妹は死んだし、誰も俺を見てくれない。
誰も俺が死んでも悼んでくれない。
ただ当然だという目を、賞賛の目を向けて、家の存続に貢献するだけ。
俺はそんなのは御免だった。
俺は道具ではなく、人間になりたい。
俺はただ、命の危機に瀕さずにまともな温かい食事が食べてみたい。
床ではなくて、柔らかい所で眠ってみたい。
物語の本を読んでみたい。
外の世界を歩いてみたい。
誰かと話をしてみたい。
学校に行ってみたい。
自分の全てを話してもいいと思えるような、相手に出会いたい。

どうか、どうか、来世は、この願いを、1度でいいから、叶えてください、神様。

7/10/2025, 8:56:31 AM