風邪について思い浮かんだこと
・『風邪』ほど曖昧で大雑把な病気はないと思う。
風邪の症状は多岐に渡り、他のほとんどの病気にも当てはまる。
ちょっとしんどかったり、声が変だったりすると大体みんなは「風邪引いたの?」ときいてくる。
体調を崩せば『風邪』という言葉で片付けれるなんて、まるで『風邪』は全ての病気を表しているかのようだ。
・風邪は至るところに潜み、人間にいかにして忍び込むかを常に模索している。だから人間も常に油断せずに対策している。お互い休みなくそれをしているのだからどちらも大変で、立派である。
風邪はいつ暴走するか分からない。二年前はコロナとして暴れ回っていたのだから、恐ろしいものだ。今日も、そんな風邪に侵されぬよう体を鍛えるぞ。
短い小説 『イルミネーション』
街中はすっかり夜に包まれ、ちらほらと街灯がついていた。
駅前では沢山のあらゆる光が目映く光り続けているが、駅から少し離れたこの町はどうしても光が少なくなってしまう。
深夜。住民が寝静まっている町を、一人の影がうろうろ歩き回っていた。彼は雷夢という男だ。
雷夢はとある能力を持っていた。
町の民家や道路、植え込み等をまじまじと見て、悲しくなった。深夜の町は改めて暗く寒いと感じた。
雷夢は左右を見て誰もいないことを確認し、両手を広げた。するとみるみるうちに民家やそれを囲む塀、木々にイルミネーションが出来上がった。彼の能力で町は一気に明るくなった。
自分でも思わぬ結果になり、ちょっとやりすぎたかと戸惑った。と同時にどこかのドアが開く音がした。雷夢は急いでその場を離れた。
ドアから出てきたのは小さい子供だった。眠れなく、外の異変に気づいたのか、外に出たようだ。
子供は明るくなった町に一瞬だけ、思わず目を瞑った。もう一度目を開け、町がイルミネーションで絶景になっていることが分かり絶句した。
「キレイ…」その子は、イルミネーションを見たことがなかった。見たこともない景色に感動し、素晴らしい日となった。
このイルミネーションは、その後も町全体を輝かせてくれることとなった。
心と心
・瞑想している時、心が二つあるように感じることがある。
一つは、考えるのをやめようと思っている心。
もう一つは、それを邪魔する心。
考えるのをやめて無になろうとしても、もう一つの心があれこれ喋り出して遮ってくる。
…まるで人格が二つあるように聞こえるが、これは瞑想してると誰でも起こることだ。というより、誰もがそうなってしまうのだ。
情報が溢れかえっているこの現代は、私たちは何も考えたくなくても色んな情報が入ってきて考えざるを得ない。これでは心がいくつあっても足りないと思う。
そういう時は自分の思考を観察することが大事だとよく言われる。自分の心を客観視するのだ。
やがて自分の内の相反する二つの心は落ち着き、ようやく自分を取り戻せる。そうなれば、他人との心も繋がりやすいのではないだろうか。
短い小説 『部屋の片隅で』
部屋の片隅で、慶太はごそごそしていた。
何をしているのかきいても、何も答えてはくれなかった。
変なのと思い、私はその場を去った。
瑠香が来た時も慶太はごそごそしていた。瑠香は気になり、何をしているのかきいた。
すると慶太は瑠香の耳元に顔を寄せ、小声で言った。
「○○さん(私)にプレゼントしようと思ってるんです」
慶太が私のサンタになってくれていたと分かったのはクリスマスの次の日だった。
短い小説 『眠れないほど』
真夜中私は寝室に一人でレポートを書いている。
今日は変なミスで時間を取られ、仕事は業務時間内に終わらず、残りを家で仕上げる羽目になった。
家でならストレスなくできると思ったが、眠気が強くなってきている。眠気との戦いもまた、ストレスだ。
傍らに栄養ドリンク。飲んでも大して変わらず。私は頭を抱えた。
部屋の外を誰かが通った。光越だ。光越はハミングをしていて、何だか上機嫌だ。
何をしているのかきくと、光越は陽気な感じで「絶品果実を食べたんだ」と答えた。
“絶品果実”?私は思わず言葉を繰り返した。
光越は「冷蔵庫に入ってるからお前も食べろよ。眠気吹っ飛ぶぞ」と言い、笑いながら去っていった。
“眠気吹っ飛ぶ”それは今正に私が求めていたものだ。
興味本意で冷蔵庫を開けた。丸く赤い果実。だが今まで見た果実とは違う。これは一体何だろうか。
口に入れたら、苦い。と思ったその直後に突然刺激が口の中で飛び出し、全身を伝った。その刺激は何とも言えない快感であり、仕事の疲れなど微塵もなくなった。
すっかりハイになり、仕事に取りかかった。不思議なことに数分で終わった。
あの果実は凄い効果である。どんな眠気でも眠れないほど集中力が高まる。今度光越に会ったら何の果実かきいてみよう。