短い小説 『イルミネーション』
街中はすっかり夜に包まれ、ちらほらと街灯がついていた。
駅前では沢山のあらゆる光が目映く光り続けているが、駅から少し離れたこの町はどうしても光が少なくなってしまう。
深夜。住民が寝静まっている町を、一人の影がうろうろ歩き回っていた。彼は雷夢という男だ。
雷夢はとある能力を持っていた。
町の民家や道路、植え込み等をまじまじと見て、悲しくなった。深夜の町は改めて暗く寒いと感じた。
雷夢は左右を見て誰もいないことを確認し、両手を広げた。するとみるみるうちに民家やそれを囲む塀、木々にイルミネーションが出来上がった。彼の能力で町は一気に明るくなった。
自分でも思わぬ結果になり、ちょっとやりすぎたかと戸惑った。と同時にどこかのドアが開く音がした。雷夢は急いでその場を離れた。
ドアから出てきたのは小さい子供だった。眠れなく、外の異変に気づいたのか、外に出たようだ。
子供は明るくなった町に一瞬だけ、思わず目を瞑った。もう一度目を開け、町がイルミネーションで絶景になっていることが分かり絶句した。
「キレイ…」その子は、イルミネーションを見たことがなかった。見たこともない景色に感動し、素晴らしい日となった。
このイルミネーションは、その後も町全体を輝かせてくれることとなった。
12/15/2022, 4:06:35 PM