光と闇の狭間を生きる
・光と闇は、まるで山と谷だ。
人生山あり谷ありという諺は人生の特徴を表している。山に登れば光が当たるし、山を下れば光は山の影に消され闇となる。
それを行き来しながら進む我々は、人生の勾配に左右されて生きなければならない。
だが、神経質にならなくても、下り坂はいつか平坦な道になり、やがて上り坂となり再び光が当たる。終わりのない闇はない。
・輝いている人の裏に苦労してる人がいると聞くが、これも光と闇、山と谷を表しているように感じる。高い山ばかりが太陽の光で輝き、低い山や谷はその山に遮られ光を浴びられずにいる。
だが、その高い山も、かつて低い山だったりするものだ。地殻変動やらで何とか高くなったのだ。その上に居る者も、登るまでは苦労していた筈だ。自分の力で登りきって、太陽の下で輝いているのだ。
光は、全ての地面に平等に広がっている。山も谷も、人生の良し悪しも、常に上下する。その狭間に生きている我々はある意味平等に生きているかもしれない。
距離の脅威
・距離は時々人を騙す。
分かりやすい例えは目的地までの距離だ。駅から5分なんてすぐ着くと思ったら実際15分とかザラにある。
・あと、距離は人の気持ちで左右する。移動が楽しければ短く感じるし、辛ければ長く感じる。その気持ちが強ければ強いほどその傾向が見られる。
その時には駅から5分でさえ、1時間かかることだってあり得る。大袈裟かもしれないが、私は経験したことがあるのだ。
さらに道に迷ってしまえば、解決するまでずっと辿り着かないだろう。
・距離を短くしたいのならば、移動を楽しく感じることが有効だと思う。そして、事前にその土地のことをよく知る。そうすることでその土地との心理的な距離は近づき、目的地までの距離も短く感じれることだろう。
短い小説 『冬の始まり』
いよいよ朝が本格的に寒くなってきた。ストーブを手放せなくなった私。もう情けないだのだらしないだの言われても構わない。私はとにかく温まりたいのだ。
とは言え、いつまでも寝てたらお腹が空く。寝ても食べ物はやって来ない。仕方なく自分から取りに行くことにした。
…と思ったら棚にも冷蔵庫にも食べ物がない!なぜ買っとかなかったのか。冬眠の準備を忘れた熊のような気分だ。のんびりな日は急に修行の日に変わった。
ぶるぶると震えながら外に出た。吐息が白いことに気づく。鼻と口を手で覆うと、鼻が冷たく、吐息が温かかった。
はあ、もう暖かくなることはないんだな…。
本格的な冬の始まりを目の当たりにした私は、落ち葉だらけの道をスニーカーで踏み歩く。
コンビニで肉まん買って食べて、温まってからスーパーで食べ物集めよう。そう考え、コンビニへの短く長い道のりを歩くのだった。
短い小説 『微熱』
無限に草原が広がり、太陽がポカポカと照っている心地よい日。人間含め、生物はこの日ものんびりと暮らしていた。
人間は他の生物と比べ、毛が薄く、これといった能力もないため、常に集団で行動しなければならなかった。
一人バタリと倒れた。周りに仲間が群がる。おでこを触ってみると少しばかり熱かった。
そういえばここ数日食べ物もろくに獲得できず水もろくに飲まずで歩き続けていた。倒れる人が出てくるのも当然だ。
医療の“い”の文字の一画目も発達していない時代。微熱すらも大事であった。
群れの中に治療法を知っている者がおり、前に出てきた。
彼は藁の入れ物から木の実やらどんぐり、薬草やら取り出し、それらを自分の口に入れた。しばらく咀嚼した後、地面に大きめの木の葉を敷き、その上に全部吐き出し、少しずつ患者の口に入れた。
数時間すると患者はむくりと起き上がり、すっかりと元気を取り戻した。
今では有り得ないようなことだが、当時はこれで治ると信じられていた。プラセボだとしても、これはある意味効果絶大だったのだろう。
短い小説 『太陽の下で』
記録的な炎天下。強い朝の日差しに照らされ、私は起き上がった。窓を開けると、大きな太陽が空に上がっていた。記録的に大きい太陽。これは新しい天体ショーか何かか。
外に出たらあっという間に日焼けしそう。でも、こんな滅多にない日に出かけないなんて、なんだか勿体無い。私は日焼け止めを満遍なく塗り、日傘を持ち、思いっきり外に出た。
走っている姿を、まるで太陽が追いかけているかのようだ。遠くから見れば、きっと太陽の中にすっぽりと私のシルエットが収まっていることだろう。それにしても暑い。当たり前だが。
途中で丘を見つけた。太陽をもっと間近で見れると思い、登ってみた。
大した変化はないが、只、下は崖でその先に広がる森林が煌びやかに輝いていた。
「どいて」
突然、後ろから声が聞こえてきた。振り返ると若い女の人がこちらに近づいてきた。私は即座に丘を下りると、女の人は丘を登り、太陽を見上げた。
女の人は、両手を上げ、組み、地面に片膝付けて祈りだした。
何を祈ってるか訊くと、女の人はこちらを見ずに答えた。
「この太陽、年なのよ」
星は年を取ると膨張する。聞いたことある話だがこんなに一日で老けるのか?
「これは何かおかしいとあたしも思う。でも、原因は何となく、分かる。多分、あたしたちが宇宙に行けるようになってから、色々なことをしてきたと思うの。太陽も、たくさんいじったからじゃないかしら」
だが、私は逆のことを考えた。今まで太陽が寿命が近いのを隠して、アンチエイジングさせてたのではないかと。そしてその限界が来たのではないかと。
すると女の人は下を向いているようだった。本当は分かっていたのではないのか?
私は女の人の横に立ち、自分も涙を拭い、一緒に太陽の下で祈った。