komaikaya

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3/30/2026, 7:50:43 AM

<登場人物>
 カナエ:高校生(腐)女子。
アイザワ:大学生男子、カナエの家庭教師。


「……うん。合ってる、よく出来ました。よし、じゃあ今日は、ここまでかな。なにか質問はありますか?」

「アイザワ先生、身長は何センチですかー?」

「175センチでーす、ってカナエさん、そうじゃなくて勉強の、」

「そっちはないから、いっかなーと思ったの! そういえばこの前も、バッタリ会っちゃったよねー。またキシダさんと二人で、並んでこっちに歩いてきて……キシダさんの身長は、何センチですかー?」

「アイツは確か185、って……」


(アイザワ’s heart)
 ──カナエちゃんやっぱり、キシダ狙い?
 キシダの身長知りたくて、俺のから聞くとか……。
 フフッ、ちょっとカワイイじゃん?

(カナエ’s heart)
 ──よしよしよしよし、よーし。
 それぞれのプロフィール、充実してきたぁ!
 ふんふん、10センチ差か、なるほど……。


「そっかー、うん。先生ってばキシダさんのこと、軽く見上げてたもんねー」

「っ、そりゃ……そうなるよ、アイツのほうがデカいんだから」

「え、あれ。先生背低いの、気にしてた?」

「いや、そういうわけじゃないし。でも175はそんなに低くないよね?」

「うん。そんなに低くないよ?」


(アイザワ’s heart)
 ──んん? なんか、ニヤニヤしてる……?
 や、そりゃ……ちょっとだけ、気にはしてたけども!
 ってかカナエちゃん、それ見抜いて俺をディスりたかっただけ、だったりする?

(カナエ’s heart)
 ──ちょっ、やだ、先生ってば!
 ナニソレ、もう……かーわーいーーー!!
 うんうん、気にしてたんだよねっ、キシダさんとの差にちょっとイラって、「そのうち追いついてやるからなっ」とか、ゆっちゃう? ゆっちゃってるのっ? ハァ尊いわー……こんなの、筆が進んじゃうから……。

 先生、待ってて! 二人のこと、私……『ハッピーエンド』迎えるまで、ちゃーんと書くから、ねっ?



(ご興味ある方は『My Heart』もどうぞー)

3/29/2026, 9:35:06 AM

 眼鏡越しだっていうのに──「俺に愛されてるって、わかってるだろう?」と言わんばかりの、あの目が全部、いけないんだと思う。

 彼に『見つめられると』本当に、どうしたらいいのか、わからなくなってしまって。この「わからなくて怖い」状況から逃れたくて、彼との距離を少しでも稼ぎたくて、でも彼から目を離せずに背を向けられないまま、じりじりと後退する。

「……逃げたく、なっちゃった?」

 ふいに──優しい声で、問われ。
 私はハッとして、それから、足にグッと力を入れて、その場に踏み止まった。

「っ、ごめんなさい。もう、逃げません」

 この先を期待して彼を自分の部屋に上げたのは、他ならぬ私、なのだ。

 なのに。とにかく、動悸が止まないし、止まないし、止まないし──自分の体が、自分のものじゃないみたいな、地に足が付いてないようなこの感覚を、どうしたらいいのかわかんなかったけど、でも。

 もう……逃げたく、ない。
 私だって彼と、この先に……。

「……あ」
「え? ……あっ。私、これ……鼻血?」
「おっとっと、ほらティッシュ、押さえて!」


☆ ☆ ☆

「……つまり。俺の眼力のせいだ、と?」

「ううっ、ごめんなさい! 鼻血なんて私、こんな、のぼせちゃうなんて……あーもうっ」

「べつに謝ることないし。じゃあ、まぁ……それならさ、よいしょっと。……こういう、バックハグなら、どう? こうやって後ろからだったら、俺の目、見えないだろうし?」

「っっ?! 〻£⁂⌘$<%〆#!!」

3/28/2026, 2:46:54 AM

<登場人物>
 カナエ:高校生女子。
アイザワ:大学生男子、カナエの家庭教師。


「お邪魔しまーす。こんばんは〜カナエさん、さっそくだけど今日は……ん? それは、英作文かな?」

「うん、そんな感じ。『My Heart』っていうお題でね、考えてたの」

「お題? 宿題ってこと? どれどれ、

"Don't forget that my heart is always with you."

"I love you with all my heart."

 ……うん、ちゃんと書けてるね」

「そりゃそうだよ、だってこれコピペだもん」

「っ、コピペって、」

「悩んでるのはね、訳のほう」

「そうなんだ。んーでも、カナエさんレベルなら、そんな難しくはなさそうなんだけど」

「そんなことない」

 サラサラサラ…(シャーペンを走らせる音)

「……うん。よし、書けた。じゃあ先生、ちょっと読んでみて?」

「え? あっはい、えーと…"忘れんなよ、俺の心はいつだって、お前と共にあるんだ"……なんか、翻訳がアツいね?」

「んー。もうちょっと、心を込めてくれると……」

「え? 心を?」

「うん。じゃあ心を込めて、こっちも読んでみて」

「……"俺はお前を、心の底から愛してる"」

「……グ、フッ。アイザワ先生、すっごくいい」

「っっ?! えーと、それって……え?」


(アイザワ’s heart)
 ──ま、まさかっ?
 カナエちゃん、俺のことが好きなのかっ……?

(カナエ’s heart)
 ──やっぱり。思ってた通り、先生は「受け」。
 ここぞって時に、こういうセリフを「攻め」にサラッと言っちゃう系の、天然入った「受け」だよね、グフッ、グフフフフ……。


「あ、そうそう! この前、先生とばったり会ったときに先生と一緒にいた人、お友だちですか?」

「えっ? あー、うん。アイツは同じサークルの、キシダっていうんだけど……」


(アイザワ’s heart)
 ──ま、まさか?
 あの一瞬でカナエちゃん、キシダ狙いかよ?
 ……なーんだ、そっか。
 まぁアイツの顔面、なかなかだもんなー……ハァ。

(カナエ’s heart)
 ──キシダ、さん。
 キシダ×アイザワ……グフッ。

3/27/2026, 8:08:13 AM

(昨日のつづき。1800字越え…お覚悟を!)


 国の少子化対策の一環として始まった、お狐様の祝福、通称「狐の嫁入り」。
 この祝福は無作為に、晴れの日の小雨とともに授けてくれるもので、わかりやすく花びらを一緒に散らしてくれる、ということになっている。

 お狐様からの祝福を受けた者は、24時間のうちに運命の人と出会う、のだそうで──私は絶対にそれを避けたかったから、この祝福が降る予報が出た日には、必ず傘を持って出掛けていた。

 ……それなのに。
 あろうことか、電車から降りたところで傘が、どういうわけか、車内にいた乗客のリュックに引っかかり、そのままドアが閉まってしまい。
 そして私が呆然とその電車を見送っていたところで、屋根のないホームの空から、水滴と花びらが……。

「……ユキヤナギだ、これ」

 びっしょり、ではないけれど。
 雨に降られて濡れた髪を耳にかけながら、私はボヤいた。

 柳のような枝にびっしりと、可憐な小さな白い花を咲かせるユキヤナギの、あの小さな白い花びらが、たーっくさん──濡れた髪や服に、気前よく、降りかかっていて。

「どうすんのよ、これ」

 こんな、花びらが小さいのを大量にって、一種の嫌がらせとも思えるんだけど?
 このまま洗濯機に入れらんないし、でもまぁ、乾けばパラパラと落ちてくれるかな……。

 ああでも、そんなことよりも。
 これから24時間のうちに、私に、いったいなにが起こるのやら──。

 ………………。
 っ、あ〜もうっ!
 このまま帰ろう、仕事なんか、休んでやる。

 24時間を自宅で、やり過ごしてしまえば──押し付けられた運命とか、そんなモノからも逃げられるはず!

 ホームにいる人たちから、「あの人、祝福受けた…」的な、なんとも言えない視線を感じる。
 にしても、ホームには結構人がいたのに、上手いこと私だけが花びらまみれなのには、あきれるのを通り越して感心する。
 まったく、いったいどういう仕組みになってんだか……。

 降りた番線と反対側の番線に、下りの電車がすべり込んで来て。
 それに乗り込むべく、ハンドタオルで花びらを払いながら、ホームドアの脇に寄った私は、突然耳に飛び込んできた「あのっ!」という声に、ビクッと身を震わせた。

「ごめんなさい、傘!」

 電車から降りて来た人の、どうやら私に向けて放った声に、驚いて顔を上げると。
 さっきの、ドア付近であのリュックを抱えていた、学生さんらしき男の子だ。

 そこでベルが鳴って、ホームドアが閉まり。
 乗り損ねた電車が走り去るのを、彼の背後に眺めているうちに少しずつ、私の頭が働き始めた。

「……え。わざわざ、戻ってきてくださったんですか?」
「もういないかとも思ったけど、いてくださってよかったです! 本当にごめんなさい、ボクがリュックをしっかり抱え込んでなかったから、」
「いえそんな、私の傘の持ち方も、甘かったので」

 傘を受け取ってお礼を言い、彼とお互いに、ペコペコと頭を下げ合い……。

 んん、ん?
 まさか……ね。
 この子が例の「運命の相手」だとか、言わないよね?

 別に『ないものねだり』するわけじゃないけど、この子だと……年上でもないし、私と同じくらいの背で、私より体重も軽そうな細さで?
 そして学生さんならもちろん、経済的に自立してる年齢でもないし、でも顔は……。

 って……いやいやいや。
 さすがに、違うでしょ。
 ってか、そんな目線……彼に失礼だし!

「じゃあ。私は、これで」
「はい。……あれ? また電車に、乗るんですか?」
「ええ。ちょっといろいろあって、帰らなくてはいけなくて」

 ……と。
 そんなふうに、お互いの名も名乗らずに別れた、私と彼、なのだけれど。

 いろいろあってその後、しっかり偶然の再会を果たす、とか──。

「あの朝。実はボクも、祝福を受けてたんですよね」

 後に──未だ敬語の抜けない彼から、聞いたところによると。

「ボクのは、チューリップの花びらでした。マンションのエントランスを出たところで、降られて……慌てて部屋にかえって、ホウキとチリトリとゴミ袋を持って戻りました」

 あー、もう。
 本当に、なんって律儀な子なのかしら?
 で、それで、まぁ……私は彼のそんなところに、すっかり絆されてしまったわけで。

 ……ったく、お狐様め。
 相手がまだ社会人じゃないとか、歳の差とか、世間体とか……いろいろと、本当にいろいろと、いったいどうしてくれるのよ?


3/26/2026, 9:57:21 AM

「……は晴れ。『ところにより雨』や祝福の花びらが降るでしょう」

 朝のニュースで天気予報をチェックするのが、仕度の最後。
 テレビを消して玄関へと足早に移動し、靴を選んで履いて、迷わずに長いほうの、UVカットも兼ねた傘を手に取る。

 まったく。いくら少子化対策待ったなしだからって国も、お狐様に頼むってのは、どうなのよ?

 で、「いいよー」とばかりに安請け合いした……のかどうかはわからないけど。
 お狐様はしっかり、国民への祝福を約束してくれた。

 この「狐の嫁入り」という名の祝福。
 無作為に、晴れの日の小雨とともに授けてくれるのだけれど、わかりやすく花びらを一緒に散らしてくれる、ということになっていて。

 その祝福を受けたくない者は、傘を差せばいい──そして。
 私は絶対に、その祝福を受けたくなかった。

 テレビやSNSで見た、祝福を受けてしまった人たちの話によると、どうやら、たいして『好きじゃないのに』相手と結婚に至ってしまった、そんな事例もあるのだそうで。
 そんなのって……それも出会いの一つ、だなんて私は、ちょっと怖くて割り切れない。

 祝福を受けて、24時間のうちにあなたは、お狐様のご縁で、運命の人と出会えるでしょう──って?

 喜びの声も多く、なーんて報道もあるけど、さ?
 みんな、本当に……どうかしちゃってるよね?



<つづく>
……かどうかは今後のお題と気分次第!


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