眼鏡越しだっていうのに──「俺に愛されてるって、わかってるだろう?」と言わんばかりの、あの目が全部、いけないんだと思う。
彼に『見つめられると』本当に、どうしたらいいのか、わからなくなってしまって。この「わからなくて怖い」状況から逃れたくて、彼との距離を少しでも稼ぎたくて、でも彼から目を離せずに背を向けられないまま、じりじりと後退する。
「……逃げたく、なっちゃった?」
ふいに──優しい声で、問われ。
私はハッとして、それから、足にグッと力を入れて、その場に踏み止まった。
「っ、ごめんなさい。もう、逃げません」
この先を期待して彼を自分の部屋に上げたのは、他ならぬ私、なのだ。
なのに。とにかく、動悸が止まないし、止まないし、止まないし──自分の体が、自分のものじゃないみたいな、地に足が付いてないようなこの感覚を、どうしたらいいのかわかんなかったけど、でも。
もう……逃げたく、ない。
私だって彼と、この先に……。
「……あ」
「え? ……あっ。私、これ……鼻血?」
「おっとっと、ほらティッシュ、押さえて!」
☆ ☆ ☆
「……つまり。俺の眼力のせいだ、と?」
「ううっ、ごめんなさい! 鼻血なんて私、こんな、のぼせちゃうなんて……あーもうっ」
「べつに謝ることないし。じゃあ、まぁ……それならさ、よいしょっと。……こういう、バックハグなら、どう? こうやって後ろからだったら、俺の目、見えないだろうし?」
「っっ?! 〻£⁂⌘$<%〆#!!」
3/29/2026, 9:35:06 AM