失ったものはもう無い。
俺達の目の前には荒れ果てた野原だった筈の場所。
そして、俺等の足元には血が飛び散っていた跡。
「☓☓っ…!!」
悲しげな背中を見せている俺等の味方。
俺達はコイツを家に返そうと、此処に来たのだ。
服はもうボロボロになって、所々肌が露出しているが、其処には痛々しい傷に血が出ていた。
「……負けたわ。全員、死んでしまったわ。」
俺等の顔も見ずに背中を向けながらそう言う彼奴。
そんな事より俺達は彼奴が生きているだけで嬉しくて、涙が出てしまっていた。
「もう良いからっ……早く、早く帰ろうぜ、?」
「……俺はっ…、彼奴等のヒーローにはなれなかった。救世主にもなれなかった。」
今にも消えてしまいそうな彼奴の強い背中に、俺達は泣くことしか出来なかった。
開けないLINE
いつもだったら普通にウキウキして開けるのに。
何で開くことが怖くなっているんだろう。
私はただ、「おやすみ。」とLINEを送っただけ。
怖いと思う理由なんて何処にも無いだろう。
「あぁ……何で開けないんだろ……」
既読なんて付いていない事だって分かってる。
それも受け入れてるはずなのに。
「それも束縛なんじゃないの?ずっと自分の側に居て欲しいっていうのも。」
私はそう、幻聴が聞こえながらも布団に包まった。
まだ元気だったあの夏。
俺は昔から夏が好きだった。
夏になると、家が近い幼馴染の家に行って、虫取りをしたり一緒にゲームしたりする。
楽しくて、楽しくて、夏休みはずっと続けば良いってそんな事をずっと思っていた。
だけどそんな夏は数ヶ月で終わってしまう。
冬休み、俺は何時も婆ちゃんの家に行っていた。
「(今年のお年玉どれくらいだろ、早く婆ちゃんお年玉くれないかなぁ。)婆ちゃん!お久しぶり!」
「お久しぶりだねぇ……これ、お年玉。」
まぁ言うて、俺が婆ちゃんの家に行く理由はお年玉目当てぐらいしか無い。
婆ちゃんの家に行ったらやること無いし、あの幼馴染と遊ぶ事も出来ないし。
だけど、これは俺が中学生になった頃だった。
「は…?」
「貴方の幼馴染だった○○が事故で入院してるって…、お見舞いでも行ってあげなさい。」
幼馴染が冬休み中に不運にも、交通事故に遭ってしまったという。
俺は誕生日で貰った自転車に乗って、母親が言っていた病院に向かった。
勿論、冬だから何回も凍った場所に滑って落ちた。
【ガラガラ】
身体中がボロボロになりながらも、病院に着いた。
病室の扉をゆっくり開けると、見慣れた顔がベットに横になっていた。
「お前………よく原型は留めてたな。これ、林檎置いていくから食えよ。」
あまり顔は見たくなかった。
俺はそう言い、部屋を出ようとした。
その時に嫌な音が俺の耳には入ってしまったのだ。
【ピッピッ……ピーーーーー】
彼奴の心臓が止まってしまった音。
彼奴は13という若い歳で死んでしまったのだ。
だから俺は、何故冬が嫌いなのか、と聞かれたら俺は何時もこう答える。
「昔は…夏は良かったよな。」
もう走る場所は見失った。
俺は人とは違う趣味をしていて、よく子供の頃は親や祖父母に注意されていた。
それは、誰にも言ったことが無いような森奥をただボーッとしながら1人で歩き続けること。
少しでも人が作ったような物があれば俺は直ぐに其処から引き換えした。
「次は何処に行こうか…少し遠くでも良いな……」
俺は部屋で膝付きの付いている椅子に少し体勢を楽にしながらそんな事を呟いた。
カタッ、と椅子の音がした。
その時に俺は思い付いてしまったのだ。
「……あ、彼処の森奥、言ったこと無いな。」
何気に行ったことのない近所の森を思い出した。
俺はそれが思いつくと、直ぐに向かった。
「熊よけの物は持ったし……よし、行くか。」
俺は歩き出した。
数時間ぐらい、ずっと続いていそうな森奥をただ進み続けていると、とある看板を見つけた。
あぁ、これは誰かが作った物だ。と思った俺は直ぐに引き返そうとした。
だが、何となくの勘が働いてしまったのか、いつもとは違う目で自分自身を誰かが見ている気がした。
「…………仕方ない、見てみるか。」
仕方ない程度で俺はその置いてあった看板を覗いてみた。
その看板を見た瞬間に、俺はもうその場から動くことが出来なくなってしまった。
"もう歩く道は見えない。
そして、帰り道も見えなくなってしまった。
ただ見えるのはお前の姿だ。"
勇者がコロされた!?!?
この物語は勇者が現れ、その勇者が途中で仲間を連れて、ただ魔王を倒すという物語です。
村人達は大喜び。
プレイヤーや読んでいた者達は皆、口を揃えて、そして画面では何時もこう出る。
「ハッピーエンド。」
魔王城は静けさだけが響いていたのだった。
かつては魔王"だった筈"の肉体が床中に広がっている。
そんな時に血濡れた勇者の剣を誰かが拾った。
チャキンッ、
フードを深く被った一人の男は、何時もより冷たい目線で"勇者の剣"を握った。
その瞬間にフードを深く被った一人の男は、誰も居ない静けさだけが残った魔王城でこう呟いたのだった。
「絶対に殺してやる。待っていろ、勇者。」
魔王城から姿を消したフードを深く被った一人の男はハッピーエンドを迎えた勇者の元へ向かう。
軽い足取りで、森奥から勇者の住む平和な村を眺めていた。
風が吹いた時に勇者には、長年修行をした鋭い警戒の感が働いてしまったのだった。
俺「あぁ、少し林檎を彼処から貰ってくるよーーーーん?」
「…………家から出てきたら後ろから殺してやる。」
勇者が林檎を貰うために、家から出ていった瞬間に、フードを深く被った一人の男は動いた。
グサッ、
俺「っ……!?!?…ガハッ、……」
【魔王を倒した勇者は後ろから何者かに殺されてしまった!!! BADEND………】
フードを深く被った一人の男が勇者を後ろから剣で、身体が貫通する程深く刺した瞬間に、画面にはそう文字が出てきたのだった。
勇者は血を口から吐いてしまい、その場に倒れた。
「これはお前がした事と同じことだ。俺等の正義を殺し、平和を奪った。なら、これが
俺らにとってのハッピーエンドだよな?w」