まだ元気だったあの夏。
俺は昔から夏が好きだった。
夏になると、家が近い幼馴染の家に行って、虫取りをしたり一緒にゲームしたりする。
楽しくて、楽しくて、夏休みはずっと続けば良いってそんな事をずっと思っていた。
だけどそんな夏は数ヶ月で終わってしまう。
冬休み、俺は何時も婆ちゃんの家に行っていた。
「(今年のお年玉どれくらいだろ、早く婆ちゃんお年玉くれないかなぁ。)婆ちゃん!お久しぶり!」
「お久しぶりだねぇ……これ、お年玉。」
まぁ言うて、俺が婆ちゃんの家に行く理由はお年玉目当てぐらいしか無い。
婆ちゃんの家に行ったらやること無いし、あの幼馴染と遊ぶ事も出来ないし。
だけど、これは俺が中学生になった頃だった。
「は…?」
「貴方の幼馴染だった○○が事故で入院してるって…、お見舞いでも行ってあげなさい。」
幼馴染が冬休み中に不運にも、交通事故に遭ってしまったという。
俺は誕生日で貰った自転車に乗って、母親が言っていた病院に向かった。
勿論、冬だから何回も凍った場所に滑って落ちた。
【ガラガラ】
身体中がボロボロになりながらも、病院に着いた。
病室の扉をゆっくり開けると、見慣れた顔がベットに横になっていた。
「お前………よく原型は留めてたな。これ、林檎置いていくから食えよ。」
あまり顔は見たくなかった。
俺はそう言い、部屋を出ようとした。
その時に嫌な音が俺の耳には入ってしまったのだ。
【ピッピッ……ピーーーーー】
彼奴の心臓が止まってしまった音。
彼奴は13という若い歳で死んでしまったのだ。
だから俺は、何故冬が嫌いなのか、と聞かれたら俺は何時もこう答える。
「昔は…夏は良かったよな。」
8/31/2024, 12:28:55 PM