「返せよ俺の人生!!!」
「え…」
俺自身でも心と瞳が動いたのが気付いた瞬間だった。
実の父親に言われた。
母が病死し、その日から父親は変わった。
毎日部屋に閉じこもり、俺との会話も減った。
「伝染病だったんでしょ?」
母が死んだ理由はそれだった。
元々は人一倍強く、誰よりも頼り甲斐がある人だった。
伝染病になってから骨は脆く、咳をすれば骨が折れてしまう程だった。
「…死んだ?」
山菜を採りに行き、帰っている途中だった。
知らない奴からお前の親父が死んだ、とだけ言われた。
持っていた山菜を落とし、踏んでしまった事を気付くこともなく、俺は無我夢中で家に入った。
知らない奴等が沢山いた。
「アンタの親父、自殺をしたんだよ。」
首吊り。
俺が生まれた事を恨んでいた父親だったが、遺書を読むと"私が呪われていた"。と書かれていた。
自分が誰かに呪われていたせいで母も死んだと思い詰めていたのだろう。
涙も出ない。
「…可哀想な子供だな。」
「!!」
昔から言われ続けた言葉だった。
町の人達は父親の虐待に気付いていた。
誰も助けてくれなかったくせに。
全てが憎かった。
「じゃあな。…俺もすぐ"そちら"へ行くから。」
父親は母と同じ墓へ入れてやった。
本当に父親の言う通りだ。
「俺達の血筋は呪われている。こんな末路。」
死ぬ前に俺は父親と母と血縁関係があった奴らを殺し、俺は死んだ。
「天国へは行けないけどよ、親父。」
嫌いだったが恨んではいなかった。
実の親だったしな。
そして、俺は死ぬ前に遺書を書いた。
"これを見た奴等は全員殺してやる。"
明日を生きたい君には向いていない。
「俺も仲間に入れてよ。」
ボス「…いつ死んでもおかしくない、それでも良いのか?」
「そこまで考えたこと無かったけど別に良いよ。」
俺がこの軍に入ってから数年後、新しい奴が入った。
よく分からん奴で失敗も多かった。
「お前、何でこの軍に入ろうと思ったの?」
新人「人助けに憧れてたからですかね、笑」
「…ほーん。」
正直に目の前で言っても良かった。
誰かを助ける前に、お前が先に死ぬぞってな。
まあ、けど新人の希望をかき消すほど、俺の性格は悪くないと思ってる。
ただ、これだけは俺からも言いたい。
「お前みたいな明日を生きたい奴には軍は向いてないよ。」
数年後、他の国との戦争が起こった。
ボス「緊急命令だ!!お前ら一時避難しろ!!」
相手の方が人数が多くて、コッチは押されていた。
「俺行きますよ。他の奴らより体力はまだある。」
ボス「無理をするな。避難しろ。今行ったら確実に死ぬぞ。」
「…ボス。俺がこの軍に入ったのは__________________
死にたかったからかもしれません。」
ボス「…!」
この出来事は歴史を刻んだ。
1人の勇敢な兵士のおかげで国が逆転勝利したという。
自爆特攻をしたあの兵士は、最後まで自分自身の素性を明かさなかった。
これは、死にたかったあの兵士が自分自身という記憶を残さなかったためなのか、それは誰にも分からない。
口癖なんかやめなよ。
「あーもう死にたいな。」
今日も口癖でそう言っている私の友達。
私「……やめなよ、笑」
曖昧な言葉で返しているのは分かっている。
私「…私がもし生きて、◯◯が死んだらさ、生き残ってた私の気持ちを考えることはあるの?」
ふと、聞いてしまった。
「そんなの、…」
口が止まった。
私「ごめんね、変なこと聞いて。」
私はずっと生きてるのが偉いっていうエゴを押し付けられすぎてしまっただけなのかもしれない。
聞きたくなかったな。
今日は俺が死ぬ日。
誰に相談しても解決しなかったし、キリが良い日だったから、此処に来た。
ただ、屋上の柵の前居る俺には、ほんの少しの心残りが沢山あった。
「…別れが悲しいなら、最初から出会わなければ良かったな。」
俺の唯一の心残り。
素直にありがとうって伝えれば良かったなって。
後一歩、前に踏み出せば死ねる今、何やってるんだろうって。
生きるのに余裕がある時はこんな事考えもしなかったのに。
カタッ、
風が少し吹いた、柵が動いた。
最後に
「別れがあるから人の世は美しくなるんだよ。」
天使共が俺を嘲笑った。
みんなあいしてます。