しがない学生

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12/1/2025, 11:55:18 AM

バカほど根に持つ

僕は馬鹿だ。今更言う事でもない。
成績は下から数えた方が早いし、内申点もそろそろ危機感を持った方がいいと担任に言われたほどだ。

所謂、劣等生だ。

親も僕には飽き飽きしているようで、最近は通信表やテストの点数など聞いてくることは無くなった。
親は僕に構っているより、兄に構ったほうがいいだろう。
兄は成績優秀で学年上位、最近は生徒会長にもなったらしい。

母「テストはどうやった?」

兄貴「ああ、国語は94点やったで。前より上がったわ。でもまだ他の教科は返されてないんや。」

父「相変わらずお前は凄いなあ。同じ血が入ってるはずなのに彼奴は……もうええか。」

勉強しているはずなのに報われた事は無い。

先生「今回もこのクラスは平均点が低いなあ。」

点数が書かれた紙を僕に渡す時、先生は僕の事を睨見つけてくる。
その時でもう何となく察する。

沢山勉強した努力が"32点"という無情な結果で返ってくる。

そして、ノー勉の奴が72点という事実も聞こえてくる。

僕「もうなんなん…ほんまに……」

同じ血で、同じ環境で。
僕には元あるはずの才能が1つもない。神様は平等じゃないのか?
生まれた瞬間から必ず人は才能を持ってるはずだろ。
何で僕は小さな才能も無い?

僕は部屋で泣いた。

ずうっと頑張ってきたのに。







兄「まるで悲劇のヒロインだね笑」






僕の耳元で兄はそう囁いた。

11/29/2025, 2:15:40 PM

間違った選択

中学生の娘が初めて夜中まで遊んだ。
俺に許可は無い、女房に許可を取り遊んだとの事。
今の時期は冬。
夜8時は物凄く暗く、田舎では危険が沢山だ。

俺「まだ中学生だしな、高校生まで我慢しろよ?」

説教をした時、分かりやすく娘は落ち込んでいた。
だけど娘の気持ちも理解出来る。

説教が終わったあと、普段は明るく無邪気な娘は居なく、話し掛けても「うん。」としか言わなくなった。
話す時必ず相槌をする娘だが、危険だからなあ、と優しく言っても相槌も何も無かった。

数カ月後、娘にこう言われた。
お泊まりに行きたい。と。
前も一緒に遊んだ子と2人で駅近のホテルに泊まりたいとの事だった。
俺は悩んだ。
子供2人で大丈夫なのかと。
だから俺は娘にこう言った。

俺「いいから、断れ。」

そう言った瞬間、娘は何も言わず自分の部屋に戻っていった。

娘が高校2年生になった頃だ。
通信高校へ進学した娘は中学の頃より友人達と遊ぶ機会が減った。

俺「最近あの子とはどうなんだ?」
娘「…………死んだ。」
俺「え、?」
娘「病気で死んだ。」

淡々と話す娘に恐怖心を覚える程だった。
そう言えば、高校に上がってから娘の笑顔も減っていった。
人形のように真顔で自分から話す事も無くなった。

娘「……お父さんのせいだよ。」
俺「、!」
娘「余命があっても私と遊びたいからって、ずっと誘ってきてくれてたのに。」

俺は間違った選択をしていたのか?
娘を守りたいから、傷付けたくないから注意をしただけなのに。

娘はそう言い、部屋に戻っていった。

その後、娘は何に対しても関心を示さなくなった。

リビングを通り過ぎる娘に

俺「今日はお前の誕生日だろ?ほら、母さんとケーキを買ってきたぞ。皆で食べよう。」

娘は言う。

娘「そんなの要らない。」
俺「何が欲しい?」
娘「……もう、何も要らない。なくなればいい。」

日に日に感情が衰えていく娘を見ると泣きたくなる。
いや、泣きたいのは娘の方だろう。
申し訳ない事をした。





その後、娘は死んだ。




最近家に帰ってくることも少なくなっていた頃だ。
俺は酔っ払いながら、娘と女房に寿司をお土産に持って帰った。
女房はリビングにいた。

俺「おぉ~ー…まだ起きてたのかぁ。」
女房「あら、お帰りなさい。」
俺「彼奴はもう寝たのかぁ?」
女房「寝たんじゃないの?私は知らないわ。」

やけに女房が冷たくなっていた。

俺「そおかあ。」

俺は部屋で寝てる娘を少しだけ眺めようかと、彼奴の部屋に入った瞬間だった。

ガチャッ、

俺「は…?」

酔いも覚めた。
娘は首吊り自殺を計った。

女房「全部貴方のせいよ。」

10/25/2025, 11:49:36 AM

【揺れる羽根】

祖母「ねえユイカちゃん。天使って知ってる?」
私「天使?」
祖母「人では無いの。でもね、もう死んじゃうっていう時に現れてくれるのよ。
特に火の関係で亡くなっちゃうときに来てくれるみたい。
そう、"天国まで運んでくれる役目"があるのよ。」

小さい時の夢を見た。
まだおばあちゃんが生きていた頃。
"天使"という存在をよく話してくれていた。

いや、話されていた。

この事を思い出す度に、死んでしまった両親も"天使"に会ったのかなと思う。
放火事件に巻き込まれただけの両親。
天国に行けていたら良いなって。
ただ、恩返しが出来なかった事だけが心残りだ。

友達「てか聞いた?ユナちゃん死んだの。」

電話中の友達がそう言った。

私「ユナちゃん?」
友達「ほら、中学の時に高嶺の花だったさ。」
私「あー!えー!?何で亡くなっちゃったの?」
友達「確か……爆発事件。最近〇〇神社で行われた夏祭りで爆発事件起こったじゃん。」
私「あー……」

私達の地元で行われた夏祭りで爆発事件が起こった。
確か…店主の不注意?みたいなので。
それに巻き込まれたらしい。

友達「もう全身丸焦げだってさ。」
私「えー……怖いね……」
友達「何が起こるか分からないからねえ……」

この日はこれで話は終わった。
何だか両親も友達も、火に関するもので亡くなっていて少し寒気がしてしまった。
自分自身も、火を見ると目を逸らしてしまうようになった。
そう、ただそれだけだった。

バイトが終わった時間は夜。
狭い道で向こうからは「火の用心」と言う集団が前を歩いていた。
火のような物を持っていた。

私は無意識に、火を避けるために曲がり角を曲がっていた。

私「(早めに帰ろ……)」

トントン、
後ろから軽く肩を叩かれた。
振り向くと若い男の人だった。

若い男「これ、落ちましたよ?」
私「ありがとうございま……え、」
若い男「ああ、すみません。」

ハンカチを拾ってくれたのは良いけど、その場に落とされた。
と言うかわざと落としたような感じがある。
薄暗い場所だし少し怖い、この人。

私「(変な人…)ありがとうございます……はっ?」

ジャバジャバ、
落とされたハンカチを拾おうとしゃがんだ瞬間、頭の上から何かを掛けられた。

若い男「ふふっ、」

男は笑っていた。
そして、片手にはライター。
私はそれを見た瞬間、すぐに察した。
掛けられたのはガソリンだ。

私「まっ…待って!!!誰か!!助けて!!!」
若い男「すぐに済みますよ。」

カチャッ、
若い男は焦る私に対してニコッと微笑み、火を付けたライターを私に投げた。

死ぬんだ、私。
その時におばあちゃんの言葉を思い出す。

「特に火の関係で亡くなっちゃうときに来てくれるみたい。
そう、"天国まで運んでくれる役目"があるのよ。」

私「天使さんっ……助けてっ………」

意味も無い、若い男に手を伸ばす。

若い男「ははっ、無様。」

神様は死にそうな私に天使も送らず、

今までの"放火・爆発事件の犯人"を送った。

7/30/2025, 1:39:15 PM

「返せよ俺の人生!!!」

「え…」

俺自身でも心と瞳が動いたのが気付いた瞬間だった。
実の父親に言われた。
母が病死し、その日から父親は変わった。
毎日部屋に閉じこもり、俺との会話も減った。

「伝染病だったんでしょ?」

母が死んだ理由はそれだった。
元々は人一倍強く、誰よりも頼り甲斐がある人だった。
伝染病になってから骨は脆く、咳をすれば骨が折れてしまう程だった。

「…死んだ?」

山菜を採りに行き、帰っている途中だった。
知らない奴からお前の親父が死んだ、とだけ言われた。
持っていた山菜を落とし、踏んでしまった事を気付くこともなく、俺は無我夢中で家に入った。
知らない奴等が沢山いた。

「アンタの親父、自殺をしたんだよ。」

首吊り。
俺が生まれた事を恨んでいた父親だったが、遺書を読むと"私が呪われていた"。と書かれていた。
自分が誰かに呪われていたせいで母も死んだと思い詰めていたのだろう。
涙も出ない。

「…可哀想な子供だな。」

「!!」

昔から言われ続けた言葉だった。
町の人達は父親の虐待に気付いていた。
誰も助けてくれなかったくせに。
全てが憎かった。

「じゃあな。…俺もすぐ"そちら"へ行くから。」

父親は母と同じ墓へ入れてやった。
本当に父親の言う通りだ。

「俺達の血筋は呪われている。こんな末路。」

死ぬ前に俺は父親と母と血縁関係があった奴らを殺し、俺は死んだ。

「天国へは行けないけどよ、親父。」

嫌いだったが恨んではいなかった。
実の親だったしな。
そして、俺は死ぬ前に遺書を書いた。


"これを見た奴等は全員殺してやる。"

6/14/2025, 10:58:11 PM

明日を生きたい君には向いていない。

「俺も仲間に入れてよ。」

ボス「…いつ死んでもおかしくない、それでも良いのか?」

「そこまで考えたこと無かったけど別に良いよ。」

俺がこの軍に入ってから数年後、新しい奴が入った。

よく分からん奴で失敗も多かった。

「お前、何でこの軍に入ろうと思ったの?」

新人「人助けに憧れてたからですかね、笑」

「…ほーん。」

正直に目の前で言っても良かった。

誰かを助ける前に、お前が先に死ぬぞってな。

まあ、けど新人の希望をかき消すほど、俺の性格は悪くないと思ってる。

ただ、これだけは俺からも言いたい。

「お前みたいな明日を生きたい奴には軍は向いてないよ。」

数年後、他の国との戦争が起こった。

ボス「緊急命令だ!!お前ら一時避難しろ!!」

相手の方が人数が多くて、コッチは押されていた。

「俺行きますよ。他の奴らより体力はまだある。」

ボス「無理をするな。避難しろ。今行ったら確実に死ぬぞ。」

「…ボス。俺がこの軍に入ったのは__________________


      死にたかったからかもしれません。」

ボス「…!」

この出来事は歴史を刻んだ。

1人の勇敢な兵士のおかげで国が逆転勝利したという。

自爆特攻をしたあの兵士は、最後まで自分自身の素性を明かさなかった。

これは、死にたかったあの兵士が自分自身という記憶を残さなかったためなのか、それは誰にも分からない。

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