もう走る場所は見失った。
俺は人とは違う趣味をしていて、よく子供の頃は親や祖父母に注意されていた。
それは、誰にも言ったことが無いような森奥をただボーッとしながら1人で歩き続けること。
少しでも人が作ったような物があれば俺は直ぐに其処から引き換えした。
「次は何処に行こうか…少し遠くでも良いな……」
俺は部屋で膝付きの付いている椅子に少し体勢を楽にしながらそんな事を呟いた。
カタッ、と椅子の音がした。
その時に俺は思い付いてしまったのだ。
「……あ、彼処の森奥、言ったこと無いな。」
何気に行ったことのない近所の森を思い出した。
俺はそれが思いつくと、直ぐに向かった。
「熊よけの物は持ったし……よし、行くか。」
俺は歩き出した。
数時間ぐらい、ずっと続いていそうな森奥をただ進み続けていると、とある看板を見つけた。
あぁ、これは誰かが作った物だ。と思った俺は直ぐに引き返そうとした。
だが、何となくの勘が働いてしまったのか、いつもとは違う目で自分自身を誰かが見ている気がした。
「…………仕方ない、見てみるか。」
仕方ない程度で俺はその置いてあった看板を覗いてみた。
その看板を見た瞬間に、俺はもうその場から動くことが出来なくなってしまった。
"もう歩く道は見えない。
そして、帰り道も見えなくなってしまった。
ただ見えるのはお前の姿だ。"
8/30/2024, 12:31:53 PM