写真を撮るのが好きだった。
私は小さい頃にお父さんに誕生日プレゼントとしてカメラを貰ってから、写真を撮るのが好きだった。
動物にもカメラを向けて、植物にもカメラを向けて、建物にもカメラを向け続けた。
「よく飽きないね。」
私の様子をよく見ていた幼馴染の口癖は何時もそうだった。
写真や風景に興味が無い幼馴染からすれば、そう思ってしまうのも無理はない。
「…当たり前でしょ?私は小さい頃から写真を撮るのが好きなの。」
「ふーん…お前ってどんなモノでも撮るの?」
疑問そうな顔も浮かべず、ただジッとした目で私にそう聞いてくる幼馴染。
「…珍しいものとかだったら撮るかも。」
「ほら、彼処に交通事故が起こってるよ。カメラで写真撮ってきな。」
「珍しいモノの写真を撮るのが好きなんでしょ?」
慈悲の眼差し
とある有名な殺人鬼が居た。
夜間に行動が盛んになると言われていて、両親や祖父母には絶対に夜中外に出るな、と言われていた。
そんな時に私は殺人鬼に出会ってしまった。
「あ…」
普通に歩いている所を見かけてしまって、目が合ってしまったのだ。
私はその場から動く事が出来なくなってしまって、歩行者が居ても、助けてくれる人は居なかった。
目で助けを呼んでも見て見ぬふりだった。
「絶対に見ちゃ駄目よっ…、!!」
近くからそんな声が聞こえてくるのだ。
そして、私の頭上には血濡れたシャベルを振り上げた大きな影。
殺人鬼は慈悲の眼差しを私に向けながら、シャベルを下に思いっきり振り下げ、私の頭に当たった。
鈍い音とあの殺人鬼の慈悲の眼差しは私の頭に残っていたんだ。
「殺人鬼にもきっとココロがあったはずよ。何処かで道を間違えてしまったんだろうね。」
その言葉が私の頭に浮かんだ瞬間、私の生涯は閉ざされたのだろう。
いつまでも捨てられないもの
今日は長年付き合った彼女との思い出を無くす。
俺は元カノから貰った写真付きのカレンダーを手にとって、中身を少しだけ覗いた。
その時にズカズカと友人が家の中に入ってきた。
「よっ!勝手に入ったったわ〜笑、で、何を燃やすんだ?段ボールの中に何も入ってないけど。」
「あ、すまん。これとこれとーーーーーーーーー」
俺は空の段ボールに指を差しながらそういう友人にさっきのカレンダーを後ろに隠した。
「こんなに捨てて良いのかよ。」
「もういいよ。何か持ってても未練が変に残るだけだしな。」
俺はそんな簡単な嘘をついて、友人に持っていってもらった。
「ありがとうな。」
「良いって事よ!俺の家も要らないもの燃やそうとする時にいいタイミングだったからな!」
「(正直だな………)気を付けて帰れよ。」
「おう!」
俺が開けられた友人の車の窓から顔を覗かせて、車に乗っている友人にそんな事を言う。
友人は良い意味でも悪い意味でも正直な友人に困惑したが、まぁ其処が彼奴の良いところなのだろう。
友人の車が動き出して、俺の家の前から消える。
「残しちゃったなぁ………」
部屋に戻って、また俺はカレンダーを手にとってそんな事を呟いた。
俺はその後に自分の部屋のゴミ箱に放り投げた。
何も無いわけじゃ無いよ。
「この先な?ーーーーーーーーーーーーーーーー」
私はこの時間が大っ嫌いだ。
美味しいご飯を食べている時に父親がいきなり将来について語り出す。
私の意見も何も聞かずに。
将来はあーだこーだとかこれからどうするんだとか。
そんなの知るわけ無いじゃん。
今考えたって、未来が分かるわけでも無いのに。
「本当にお前は何時も将来とか考えず…何というか能天気に暮らしてるかもしれないけどさ?」
私が低く見られているのはよーく分かる。
何で此処まで言われて、私が将来を見ないのかも父親にはきっと分からないだろう。
「元から将来が気にならないんじゃない。何も見えない将来が怖いから考えないようにしてるんだよ。」
そんな言葉も今の父親には伝わらないのだろう。
自転車に乗った君の背中を見送った。
幼馴染は自転車に一人で乗ったことが無いらしく、俺は取り敢えず練習に付き合った。
暇という理由もあるけれど、普通に頑張っている姿が面白いというのが一番大きかった。
「前に……前に進めぇ!!!!」
「ちょ、待てよ。」
俺が気合いだけで進ませようとすると幼馴染が一番冷静になっていた。
幼馴染はそれでも楽しそうに自転車に乗っていた。
「ふっ……後ろに乗っても良いんだぜ?」
「遠慮しとく。」
調子に乗っていたりもしたけど、楽しそうに自転車に乗っている幼馴染を見て俺は自然と笑顔になる。
「あ、ごめん。俺今から予定があるんだったわ。」
「うお!マジか!俺も一緒に帰ろ。」
俺と幼馴染は家の方向が途中から違うから、自転車に乗って家に向かっている幼馴染の背中を見送った。
そして俺は家まで足を進めた。
「マジかぁ。俺の自転車壊れちゃったかぁ……。」
最近買ったばかりの自転車が壊れたことを俺は普通にショックを受けてしまった。
自転車を乗った彼奴の背中を見送ってから―――