れもねーど

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10/4/2024, 5:24:59 AM

やばい、遅刻するっ!
今日の朝、目が覚めるともう8時だった。うちの学校はなぜか朝が早く、門が閉まるのは8時15分。『遅刻する』脳内でとっさに叫んだ。ご飯も食べずに急いで着替えて靴を履く。カバンの中身を確認し、あわてて外に出た。今の時期、どうしても遅刻するわけに行かないんだ。今は9月。もうすぐ前期の成績がついてしまう。こんなときに遅れたら...!成績爆下がり間違いなしだ。髪の毛はボッサボサ。目もあまり開いてなくて、とにかく寝ぼけていたが、それでも必死に足を動かす。
ドッドッドッドッド...地面を力強く踏みしめて、先を急ぐ。まだ間に合う。あとはこの坂をかけ降りて角を曲がるだけっっっっ!遅刻せずにすむかもしれなi

ドォーン

時間内に学校に着く、と確信した瞬間、派手な音がした。驚いて目をつぶる。
...なんだったんだ?転んだのかな。膝がズキズキと痛む気がする。...なんて、こんな冷静に考察している暇はない。早く行かなくては。転んだことを気にしている余裕はない。
急いで目を開けたとたん、え!?と大きな声を出してしまった。なぜなら、そこには美少女の顔が...

これが、少女漫画の世界...!?なんて、妄想を抱いていると、想像していたよりも遥かに大人っぽい
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」という声が聞こえてきた。
そんな声にも惚れ惚れしていると、彼女はあっという間に絆創膏で手当てをして、立てますか、と言って立たせてくれた。もうこれが現実かすらわからない。内心浮かれながら僕が
「こちらこそすみません」
なんて、真摯な台詞を言うと、
「いえ、大丈夫です。...時間がないので、さようなら」
...と、こんな風に冷たく反応されてしまった。正直、寝坊して良かった、って思った。こんな美女に出会える機会、そうそうない。もうこの時には、恋に落ちていたのかもしれない。


運命なんて信じないタチだけど
今この瞬間に『また巡りあえたらな』
なーんて、そんなくだらないことを考えてしまった。
君とまた出会えるなんて、あるわけないのに。もう一回同じようなことが、起こるわけないのに。

...あれ以降、寝坊をするたびに内心ワクワクしている自分がいる。

#巡り会えたら

10/2/2024, 8:53:06 AM

「なん...で?わ、たし...あ、なた...を、あ、い...してっ............!」
「ごめん、ごめんね。ほんとに、ごめん...自分勝手でごめん。辛いよね。痛いよね。でももう、これしか...ないんだ。」

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赤く染まった■■が異様な匂いを放つ。急いでキャリーケースに入れて、臭いも閉じ込める。手袋をして、指紋は残らないように。
赤く染まった床を雑巾できれいに拭く。指紋が残らないように。誰かに見られないように素早く。でも慎重に、慎重に...
「よし、おっけ。」
緊張していたからか、汗がブワッと噴き出す。ふぅ.........赤い床は綺麗な真っ白に戻った。証拠隠滅。完全犯罪だって夢じゃない。僕は、なにも...僕は!.........なにもしてない。
机の上にあらかじめ用意していた「失踪の手紙」を置く。字体もアイツに寄せたから、バレることはない。
玄関に置いていたキャリーケースに目をやると、血が染み込んできているようだった。急いで車に乗り込み、山奥へ出かける。キャリーケースと一緒に。
山奥に、キャリーケースから取り出した■■を埋める。そして、キャリーケースは別のところに捨てる。......かんぺき。
また急いで車に乗り込む。微かに血の臭いのする車にファ◯リーズをして、微かな臭いすら消した。もう、未練はない。後悔はない。罪悪感は...ちょっとあるかもだけど。

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「もう夕暮れか。」
車の窓から外を眺める。
...たそがれ時の空は、いつもより赤黒く染まっていた。

#たそがれ

9/30/2024, 11:17:59 AM

きっと明日も、晴れる。
誰かにバカにされても、くじけそうでも。試合で負けても、うまく行かなくても。

そう思えるのは
そこに、君がいるから。

#きっと明日も

9/26/2024, 11:12:19 AM

秋が、嫌いだった。雨は多いし、虫も多いし。寒いのか暑いのか、はっきりしないから服装めんどくさいし。春、夏、冬には休みがあるのに、秋にはないし。


そう、思ってた。

いつか、先輩と二人で、公園に出かけたことがあった。秋の終わりごろ。辺りは紅葉の赤や黄色が踊っていた。
私の大っ嫌いな季節だけど。普段だったら、極力出かけない季節だけど。先輩と二人だから、そう思って張り切っていたのを、今でも覚えてる。
その時、先輩はすごく幸せそうな顔で言った。
「秋って、いいよね」
その言葉に、私は言葉がでなかった。うんともすんとも言えなかった。私は先輩のことが...好き、だけど。先輩の好きなものと私の好きなものは違うんだ、って。なんか気付かされた気がした。
それに、その時。『こんな“秋アンチ”の私が一緒にいても、楽しくないんじゃないか』とっさにそう思ってしまった。

「どしたの?」

そう純粋に尋ねてくる先輩に、またしても、なにも言えなかった。でも。

「ねむちゃんの好きな季節は、なに?やっぱさ、人それぞれ好みは違うから、尊重しないとねー」
そうやって優しく聞いてくれた先輩を見て、なんか、胸がキュンってなった。上手くいえないけど、なんだろう。
あんなくだらない考えでで人の好きなものを否定するようなことをした自分が、バカみたいに思えた。

「ふふっ」
自然と笑みがこぼれた。それに反応して、
「え?僕なんか変なこと言った?」
って聞いてくる先輩がなんともかわいくて。

それ以来、秋が一番好きになった。

#秋🍁

9/24/2024, 11:33:01 AM

「形の無いものを、大切にするんだよぉ」
これが、おばあちゃんの口癖だった。最初は何を言っているのか、よくわからなかった。
形のないものなんて、どうやって大切にするんだろう。手で持ったり、箱にしまったりできないのに、大切に扱うなんて無理だ。
おばあちゃんの言うことは難しいんだなぁ、なんて思うだけだったし、特に考えようとも思わなかった。

...それからしばらくして。おばあちゃんはもう80歳になっていた。おばあちゃんが認知症になった。ボケがすすんで、介護が必要になった。
正直、最初はショックだった。大好きだったおばあちゃんが、私のことを忘れちゃって。みんなのことを忘れちゃって。
しっかりものだったおばあちゃんが、他の人に注意ばっかされるようになって。わからないことが増えていって。なくしものも増えて。
だからこそ、頑張って介護した。毎日朝一番に起きて、おばあちゃんの着替えを用意して、オムツを用意して。時間になったら起こして、トイレにつれていって。ご飯を食べさせて、口を拭いてあげて、食器の片付けをして。洗濯をして、干してあげて.....。....最初は、頑張ってたんだよ?でも...疲れちゃって。
次第に起きるのが遅くなって、おばあちゃんを起こさなくなって。食べさせるのもめんどくさくて。洗濯も、やめちゃって、全部お母さんに任せっきりになっちゃって。
...そしたら、お母さんは頑張りすぎて倒れちゃって。お父さんは仕事があるって言って家に帰っちゃって。
みんな、どんどん壊れていって。私だけが健康で、私だけが苦しんでなくて。悔しくて、悔しくて...でも、やっぱりやりたくなくて...

結局、堂々巡り。

...お母さんは結局回復して、また忙しく介護を続けた。お母さんがせっせと介護をしているようすをただぼーっと見るだけの日々。なんでだろう。最初は手伝って、と言っていたお母さんも、いつの間にかそういうことを言わなくなった。一人で抱え込むようになって、夜に静かに泣いていることもあった。...でも、やっぱやりたくなくて。介護しなきゃいけない人がおばあちゃんだって、認めたくなくて。

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