れもねーど

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秋が、嫌いだった。雨は多いし、虫も多いし。寒いのか暑いのか、はっきりしないから服装めんどくさいし。春、夏、冬には休みがあるのに、秋にはないし。


そう、思ってた。

いつか、先輩と二人で、公園に出かけたことがあった。秋の終わりごろ。辺りは紅葉の赤や黄色が踊っていた。
私の大っ嫌いな季節だけど。普段だったら、極力出かけない季節だけど。先輩と二人だから、そう思って張り切っていたのを、今でも覚えてる。
その時、先輩はすごく幸せそうな顔で言った。
「秋って、いいよね」
その言葉に、私は言葉がでなかった。うんともすんとも言えなかった。私は先輩のことが...好き、だけど。先輩の好きなものと私の好きなものは違うんだ、って。なんか気付かされた気がした。
それに、その時。『こんな“秋アンチ”の私が一緒にいても、楽しくないんじゃないか』とっさにそう思ってしまった。

「どしたの?」

そう純粋に尋ねてくる先輩に、またしても、なにも言えなかった。でも。

「ねむちゃんの好きな季節は、なに?やっぱさ、人それぞれ好みは違うから、尊重しないとねー」
そうやって優しく聞いてくれた先輩を見て、なんか、胸がキュンってなった。上手くいえないけど、なんだろう。
あんなくだらない考えでで人の好きなものを否定するようなことをした自分が、バカみたいに思えた。

「ふふっ」
自然と笑みがこぼれた。それに反応して、
「え?僕なんか変なこと言った?」
って聞いてくる先輩がなんともかわいくて。

それ以来、秋が一番好きになった。

#秋🍁

9/26/2024, 11:12:19 AM