【書く練習】
[君と僕の散歩道:9君がいなくなっても]
君がいなくなった
涙はでなかった
わかっていたはずなのに
ただただ呆然として現実を受け入れられなかった
君の好きだったもの、一つ一つ手にとって、そっと撫でる
君の遊ぶ姿を思い出して胸が苦しくなった
いつもの散歩コースを一人で歩いた
僕の前にはいつも君が歩いていた
ああ、いつもこの辺で動かなくなったな
立ち止まって空を見上げる
いない君に話しかける
なんでここで止まってたのさ
お前と一緒にこの景色を見たかったんだよ
風が吹いて、草原がザザザと波打つ
川辺の水はキラキラと反射していた
確かに美しい、いつも見ている景色のはずなのに
うん、確かに良い景色だね
だろっ!
…君が居なくて寂しいよ
新しい犬を飼えばいいだろ
いやだよ、僕は君がいいんだ
女々しいやつだな
…君のことが大好きだよ
はずかしーやつ
ふふっと笑みがこぼれた
ああ、笑えるんだ、君がいなくなっても僕は笑えたのか
さあ、帰ろうか
【書く練習】
[君と僕の散歩道:8老い]
君と出会って何年たっただろう
君はあまり物が見えなくなってきた
耳も遠くなり呼んでも気づいてくれない
粗相も多くなり、夜泣きもするようになった
ごはんだけはしっかり食べてくれるのが救いだ
おやつも大好きだ
嗅覚をたよりにしておやつにたどり着く
見えないのでうっかり指を噛まれることもあった
それでも散歩は毎日いく
すぐに疲れてしまう時もある
よたよたとおぼつかない足取りだが、
それでも外の新鮮な空気や、匂いを嗅ぐのは楽しそうだ
あと、どれくらい一緒にいることができるだろう
そう考えただけで涙がこぼれた
君がいなくなった世界を想像するだけで胸が押し潰されそうだ
ただ、今は一秒でも長く君と過ごしたい
【書く練習】
[君と僕の散歩道:7いたずら]
家に帰るといつもと違うことに気がついた
スリッパに噛み後がある
いつもはこんなことないのに
叱ろうかと思ったが現行犯ではないので意味はないか
ため息をついて部屋にはいると、部屋一面にティッシュが散乱していた
鉢植えが倒され土が散らばっている
フードをいれるボックスが噛られてヒビが入っていた
とにかくひどい状態だった
見回しても君の姿は見当たらない
叱られるのが怖くて隠れているのか
なぜ?今までこんなことはなかったのに
ストレスがたまっていたのか?
散歩の時間が少なかった?
スキンシップが足りなかった?
混乱しながらキッチンに回った
そこには君と、割れたカップがあった
贈り物の大切なカップだった
一瞬頭に血がのぼり、僕は強く叱ってしまった
君は体をびくりと震わせた
耳を伏せ上目使いに僕を見上げている
僕は大きく深呼吸をして部屋を片付け始めた
でも、この時僕はもっと君の異変に気を配るべきだった
どうしてこんなことをしたのか、もっと考えるべきだった
後に僕は後悔する
君のサインを見逃してしまった
【書く練習】
[君と僕の散歩道:6社交性]
君にたくさんの仲間と会わせたくてドッグランへ来た
君は孤高の存在だ、僕と少し似ている
君は周りには馴染むことはなく
皆から少し離れたところに仁王立ちしている
君のことを知りたくて周りには集まってきた彼らに
目も合わさずに距離を取る
それでも距離を詰めようとする彼らには軽く威嚇をする
でも僕は知っている
君は恥ずかしがりやなんだよね
始めましての子にはいつも緊張してるだけなんだ
その証拠に、いつもの散歩で出会うトイプーのマロンちゃんとは大の仲良しだ
尻尾の振り幅全開だし唸りもしない
君は大勢と仲良くなりたい訳じゃない
友人も少数精鋭なだけ
僕は君に選ばれた友人であることを誇りに思うよ
軽い足取りで戻ってきた君を労おうと頭を撫でた
とたんに君は唸り声をあげて牙をみせる
友よ、それはあんまりだ…
【書く練習】
[君と僕の散歩道:5水遊び]
猛暑から逃れるために近所の川にきた
君は川が大好きだ
シャンプーは大嫌いなのに不思議だ
君はザブンザブンと飛沫をあげて川へ入っていく
中頃まで行くと、犬かきでスイスイと泳いでいく
とても気持ち良さそうでこちらが羨ましくなるほどだ
そんな君を川岸から見ると僕も涼しい気持ちになる
岸から上がって来た君は2回りくらい小柄になっていた
すっかり別犬だ、笑いたいのを必死でこらえる
そろそろ帰ろうか
濡れた体を拭くためにタオルを取って振り返ったとたん…
君は盛大にドリルを放った
僕は目を閉じ暫し固まる
大きく深呼吸をして心を静めた
君はそんなことは知らんと言いたげな顔をしている
ふん、そんな顔をしていられるのも今のうちだ
家に帰ったらシャンプーがまってるのだから
隅から隅までしっかり洗ってやるからなっ