霧夜

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10/30/2023, 10:46:16 AM

本棚にしまってある、一冊の本。
古びれて、少し色の薄くなった本。

それを手に取り、開いてみると、
とある写真がビッチリと貼られていた。

幼稚園の時の写真、小学校の頃の写真、中学校の頃の写真、そして高校の写真。
本当に色々な写真が貼ってあった。

「俺にも...こんな時があったんだな...」

写真をそっと撫でながら、小さな記憶に想いを馳せた。

---二作目---

時々、ふとした時に考えることがある。

薄暗く、無駄に広い部屋での記憶。
ずっと一人の空間で、ただひたすらに勉強にあけくれた日々の事を。

あの頃は、それが当たり前の環境だと思っていたし、当然の事だと認識していた。
だから何とも思わなかった。
辛いとも、つまらないとも、ましてや...寂しいなんて思う事も。

でも今は...どうだろうか。
一人の時間が、こんなにも辛くて...寂しい。
心にぽっかりと穴が空いたかのように。
布団に蹲っていることしか出来ない。

あの頃の俺は、本当にどうやって過ごしていたのだろうか...。
そんなことを考える。

けれど、

「...ただいま」

あいつの声が聞こえただけで、心の穴が埋まっていくような気がするんだ。

今の俺は、一人のきりの時の寂しさと辛さを知っている。
だけど、誰かと触れ合うことの楽しさと満ち足りるような幸福感を知っている。

そして、

「おかえり...!!」

誰かに...あいつの帰りを待つ事を知っている。

#懐かしく思うこと
105作目

10/29/2023, 12:12:52 PM

ある日の深夜
コーヒを片手に、書斎の机に腰かける。
木製テーブルに、白紙のノートを広げて
お気に入りの青いシャーペンを、手に取って。

さぁ、今日も二回目の朝を迎えようか

---二作目---

選ばなかった、選択肢。
それが、『もしも』の未来として、俺の脳裏に思い浮かぶ。

もしも、あの時親に反発していたら?
もしも、あの勧誘を断っていたら?
もしも、あいつと戦わなかったら?

もしも、もしも、もしも。

あったかもしれない未来。
あったかもしれない結末。

もしかしたら、その未来は、今より幸せだったのかもしれない。
けれど...

「?どうしたんだ、珍しくぼーっとして」

その『もしも』の世界では、俺とこいつは、出会えていたのだろうか...?
こいつと仲良くできていたのだろうか?
こいつと...恋仲になれていたのだろうか?

...そう考えると--

「いや、なんでもねぇよ」

この世界が、一番幸せな未来だと思えるんだ。

#もう一つの物語
104作目

10/28/2023, 11:08:43 AM

薄暗く、あちらこちらに物が散乱した、狭苦しい部屋。
足の踏み場なんて無くて、凄く歩きずらい。
食べ物の残骸が、脱いだ衣服が、乱雑に散らばっている。
そんな部屋には何時も、カタカタと言う無機質な音だけが響き渡る。

さぁ、今日も広い光の世界に飛び込もうか。

:解説:
彼は外の世界に、あまり馴染むことが出来なかった。
その為、ある時から部屋に引こもるようになった。
生きる希望なんてなくて、部屋もそれに比例するように汚くなって行った。
けれどそんな彼にとっての唯一の居場所は、知らない誰かと繋がれる、ネットの世界だけでした。

---二作目---

暗い暗い、牢獄の中。
ポチャリ、ポチャリと、水滴が不規則に落ちてきて、冷たい牢屋の中に響く。

寒くて、寒くて...寂しくて。
只々、牢屋の隅で膝を抱えることしか出来ない。

...でもこれは、仕方ない事。
俺が、父様の期待に応えられなかったから。
俺が...価値の無い惨めな奴なのがいけないのだ。

だからこうなってる。そう、全ては何も出来ない自分の自業自得なのだ。
そう自分に言い聞かせる様に、唇を強く噛み締める。

...泣きたい。
辛い。
泣きたい。

でも出来ない。
泣いてはいけない。

怒られるから。
「うるさい」と「静かにしろ」と殴られるから。
また怒鳴られるのは嫌だから。

もう、生きてる理由なんてない。
死ねることなら死んでしまいたい。
だって俺が死んでしまっても、損をする人は居ないから。
...でも死ぬことは怖い。
今はこの臆病な自分が、そもそもこんな事になる要因を作った価値の無い自分が、心底恨めしい。

嗚呼、どうやったら俺は、この苦しさから解放されますか?


-----

ガリゴリガッシャーン!!!!

暗がりの中、突然光を与えてくれたのは--

「......お前、大丈夫か...?」

綺麗な青い髪を持つ、綺麗な青年だった。

#暗がりの中で
103作目

10/27/2023, 11:34:21 AM

戸棚の奥から、お気に入りの茶葉を取りだして
沸かしたお湯を、ティーポットの中に注ぐ
いい香りがしてきたら、少しの間蒸して置いて
その間に、色鮮やかなクッキーを、お皿に盛りつけようか

あとは、二つのカップに紅茶をゆっくり注ごう
ほら、ふわりと優しい香りが、してきたでしょう?

さぁ、準備は出来た。
今から、二人だけのお茶会を始めようか。

--二作目--

休日の、少しだけ早い朝の時間。
そんな朝に、あいつは決まって紅茶を淹れてくれた。

優しい花の香りが、まるで部屋全体を包み込むように、ふわりと香る。
そんな匂いを堪能しながら、紅茶に口をつければ、少し冷えた身体を優しく暖めてくれる。
ふぅ、と小さく吐息を漏らすと、あいつはいつもふっと笑う。

「お気に召してくれた様で何よりだ」

そう言いながら、あいつも紅茶に口ずけて、同じく吐息を漏らす。
それに釣られるように、俺もクスリと笑いを零す。

こんな、何気ない休日の一時。
紅茶の香りに包まれながら、そんな小さな幸せを噛み締める


#紅茶の香り
102作目

10/26/2023, 11:49:39 AM

「トリガナイタ」

俺とあいつで決めた、特別な合言葉。

中々素直になってくれないあいつからの、精一杯の愛言葉。

...さぁ、少しだけ、外に出る準備をしようか。

あいつからの「会いたい」の言葉に応えるために。

--- 2作目---

「好きだ」

今日も、あいつは俺に愛情をくれる。
普段より柔らかい、甘く優しい声で。
優しく、抱き締めながら。

こんな時間は、いつも安心出来る。
愛されてるんだな、と感じることが出来る。

いつも、何も出来ずに体を預けてばっかり。
俺はあいつに、何も返せていない。
それでもこいつは、それでもいいと言ってくれる。


「......おれ、も...好き...///」

だから、だから。そんな優しい...あいつになら、少しだけ素直になってもいいかな、と。
そう思えたんだ。


#愛言葉
101作目

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