霧夜

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本棚にしまってある、一冊の本。
古びれて、少し色の薄くなった本。

それを手に取り、開いてみると、
とある写真がビッチリと貼られていた。

幼稚園の時の写真、小学校の頃の写真、中学校の頃の写真、そして高校の写真。
本当に色々な写真が貼ってあった。

「俺にも...こんな時があったんだな...」

写真をそっと撫でながら、小さな記憶に想いを馳せた。

---二作目---

時々、ふとした時に考えることがある。

薄暗く、無駄に広い部屋での記憶。
ずっと一人の空間で、ただひたすらに勉強にあけくれた日々の事を。

あの頃は、それが当たり前の環境だと思っていたし、当然の事だと認識していた。
だから何とも思わなかった。
辛いとも、つまらないとも、ましてや...寂しいなんて思う事も。

でも今は...どうだろうか。
一人の時間が、こんなにも辛くて...寂しい。
心にぽっかりと穴が空いたかのように。
布団に蹲っていることしか出来ない。

あの頃の俺は、本当にどうやって過ごしていたのだろうか...。
そんなことを考える。

けれど、

「...ただいま」

あいつの声が聞こえただけで、心の穴が埋まっていくような気がするんだ。

今の俺は、一人のきりの時の寂しさと辛さを知っている。
だけど、誰かと触れ合うことの楽しさと満ち足りるような幸福感を知っている。

そして、

「おかえり...!!」

誰かに...あいつの帰りを待つ事を知っている。

#懐かしく思うこと
105作目

10/30/2023, 10:46:16 AM