明日、もし晴れたなら。
彼が行きたがっていたレストランに行こう。
美味しい料理を食べて、他愛も無いことを喋って過ごす。
その後は、最近噂の雑貨屋さんに足を運ぼう。
部屋に飾る雑貨を買って、二人でペアルックのものを買うのも良いだろう。
それで、最後に二人で広々とした草原に行って夜空を見に行こう。
彼は夜空を見るのが好きだから。
地面にゆったりと寝転がりながら、キラキラと輝く星星と、金色の月を眺めよう。
明日は二人揃っての久々の休日。
愛しの彼と過ごす明日を想像しながら、ワクワクを胸に仕舞いながら、僕はひっそりと瞼を閉じた。
大切な人が増えていく度に、僕はまるで波に飲み込まれるような恐怖感に襲われる。
いつか僕は、彼らに捨てられてしまうのではないかと。
見限られて、冷たい視線を送られる日が来るのではないかと。
僕のせいで、皆が傷ついてしまうのではないかと。
大切だからこそ、怖い。
大切なものを失う痛みなんて、感じたくない。
だから、一人でいたい。
一人でいれば、何も失わずに済むから。
そう気付いた時、僕は部屋に引きこもり始めたんだ。
僕は今日も今日とて、静かで暗い部屋に引き篭もる。
誰にも、干渉されないように。
#澄んだ瞳
彼は、いつも周りから”鉄仮面を付けているようだ"と言われることが多い。
まぁ確かに、皆の前では彼は基本的に無表情だし、感情をあまり表に出そうとしない。
だけど、僕は知っている。
「わぁ〜!!見てみろよ!!すっごい綺麗だぞ…!!」
彼が本当は、表情豊かなことを。
空を見上げる時も、地面に咲いているお花を見る時も、彼の瞳はキラキラと輝き、子供のような反応を見せるのだ。
いつもの大人のように冷製でしっかり者の彼も好きだけど、子供のようにはしゃいでる彼も、僕は大好きだ。
風がビュービューと吹き荒れて、枯れ葉から車や建物の残骸が、意気揚々と風に乗り回る。
砂埃が踊るように舞い、遠くの景色が全く見えない。
こっちに向かってくる嵐。
普通に飲み込まれて、死にそうだけど、それでいい。
寧ろ早く来いよとか思ってる。
まぁ叶わないかもしれないけれど。
一回でいいからこっから離れてみたいな。
なんて淡い期待を抱きながら、近づいてくる風の渦を眺める。
嵐が来ても、今日と今日とて、リンゴの木である僕は地面に生え続ける。
#嵐が来ようとも
いつもは静かな夜の街が、今日は騒がしさと楽しさに包まれる。
いつもは静かな君が、まるで子供のようにはしゃぎ、表情をコロコロと変える。
星の輝きとはまた違う花火の光が、暗がりの夜空を明るく照らす。
空を見上げる彼の瞳が、いつも以上に輝いて、「綺麗だな」と微笑む彼がいる。
花火よりも輝いて、僕だけの消えない綺麗な花火が、現れる。
そんな数日の、短い祭の時間が、花火が見れる時間が、僕はとっても大好きだ。