霧夜

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7/27/2023, 12:44:54 PM

神様が舞い降りてきて、こう言った。

君は生きたいの?
それとも死にたいの?

突然現れたかと思えば、おかしなこと聞いてくる。
体は僕と同い年くらいの青年。羽が生えてて、空に浮かんでて、神様なのは間違いなのだろう。
この時、僕は神様も案外頭が悪くて視野が狭いのかもしれない。と思った。


屋上の柵の上に乗って飛び降りる直前の僕にそんな事を聞くなんて、神様は馬鹿なのかもしれない。

7/26/2023, 11:02:07 AM

❀誰かのためになるならば❀


「俺のお陰で誰かが救われるんだったら、別に俺がどうなっても良いんすよ」

そんな事を、言わないで欲しい。

「どうせ、俺なんかの心配をしてくれるような人なんて、いないですから」

そう言いながら、彼は苦しげに口角を上げる。
彼は何時もこうなのだ。
どんなに傷付いていても、相手を心配させまいと、無理して笑顔を作ろうとするのだ。
そんな彼の顔を見るたびに、胸が締め付けられて、こっちまで苦しくなってきて。
そして、今回はーー。

ギュ〜ッ

「え?どし「そんな悲しい事を、もう私の前で言うな」」

私はいつの間にか、彼に抱き着いていた。


「お前の相手を思いやる気持ちの強さは知ってる。どれだけお前が優しいのか知っている。だけど…せめて私の前だけでは…お前の弱い所を、見せてくれ」


私より少しだけ小柄な身体を包み込むように、強くけれど優しく抱き締めた。
こんな身体で、誰よりも強い責任感と底なしの優しさを心の中に持っている。

「お、俺は大丈夫すよ…弱いところだって貴方に沢山見せてるし…だから貴方が心配することなんてなにもないっすよ」

ほら、まただ。
彼は自分の気持ちに蓋をして、大丈夫大丈夫と相手のことを一番に考えようとする。
そういう所は彼の良い所であり、悪いところでもあると思う。

「……お前はさっき、自分の事を心配するやつはいないと言ったな?」
「え、た、確かに言いましたけど…?」

ここまで言っても、まだ彼は何も分かっていない。
彼は自分の事になると最高に疎いのだ。俺は溜息を吐きそうになるのを、必死に堪える。

「…誰もいなくなんてない。お前の友達だって、他の寮のやつだって…勿論、私だって、お前が大切だ。心配しない訳がないだろう?」

「…………」

「だから、そんな事を二度と言うな。お前はもっと人を頼ることを覚えろ。…それとも、頼りたくないと思うほど、お前は周りを信頼してないのか?」

「何言ってるんですか!!信頼してるに決まってるじゃないですか!!」

「信頼してるなら、尚更周りを頼れ。周りに頼るのを躊躇ってしまうならば、せめて私を頼れ」

逆に頼って貰えないと信頼されて無いと思うだろ
と付け加えると、彼は俯きながら黙ってしまった。
きっと、今彼にこんな事を言っても、誰よりも人思いな彼はすぐにそんな事なんて忘れてしまうだろう。
だから、少しでも忘れさせないように、彼が安心できるように。そんな彼を俺は更に強く抱き締めた。

7/22/2023, 10:15:03 AM

皆さんは、過去と未来に行けるのならば、まず何をしますか?

未来の変わっているであろう街を散策しますか?
過去に戻って、昔の暮らしを見てみますか?
未来の自分の姿を確認しますか?
過去に行ってし、後悔したことをやり直しますか?

他にもしたいことがある人は沢山いると思います。
もしも、僕が過去や未来に行けるのならばーーーーー





冷たくなっていく彼の体温。
青白くなっていく彼の肌。
無理して笑顔を作ろうとしている彼自身。


「どうして…どうして…!!君がッ、こんな事に…!!」

もう少し僕が彼の異変に気づけていたら。
もしも僕が彼の代わりをしてあげられていたのなら。

「そんなに…辛そうな顔…するなよ…ッ。俺まで…辛くなるだろう?」


「ハハッ…おれ…お、前と…、であ、えて…よかった……よ…」

そう言って、彼の命は事切れた。

「あ、あぁ…だって!!だってッ!!君が亡くなるなんて!!僕やだよ!!ねぇ!起きてよ…嘘だって言ってよ…ねぇッ!」

いくら揺さぶっても、彼の青い瞳が再び開くことはなかった。
俺はその後の記憶が曖昧だった。
ただ、自分が彼専用のベットをびしょびしょにしたことだけは分かった。


僕がもっとこうしていれば良かった、ああしていれば良かった。本当はどうするのが正解だったの?
どうすれば彼を救い出すことができたの?

絶望
悲しみ
自分への怒り
そして、後悔

この感情が俺の中でドロドロと混ざり合い、もう何を考えたら良いのか分からなくなっていた。
僕はこの時、本気で考えたんだ。
過去に戻って、全てを一からやり直したいと。


✙もしもタイムマシンがあったなら✙

7/21/2023, 10:24:45 AM

今一番欲しい物

僕は、今までの人生で本気で欲しいと思うものに出会えたことがなかった。
強いて言うなら大好きなくまのぬいぐるみが欲しいと思った時くらいだった。
元々周りに関心がなくて、特にこれと言って好きな物とか叶えたい願いがあるわけでも無かった。

彼と出会う前は。

「おい、早くしないと置いていくぞ?」

僕は初めて、大切にしたいと守りたいとほしいと思うものに出会った。
彼は不思議な人だった。
周りからいつも注目を集めていて、愛想も良くて、何より優しかった。
そんな彼に僕は心惹かれたんだ。

欲しい物を手に入れる方法なんて分からない。
けれど、けれど。
僕は生まれて初めて出会った本当に欲しい物を手に入れるために、なんだってしようと思えたんだ。


7/19/2023, 10:10:45 AM

✙視線の先には✙


僕の視線の先には、いつだって彼がいた。
頼もしい背中、大きい背中、優しい背中、格好いい背中。
僕はいつもそんな彼の背中を追いかけながら生きてきた。

ある日を境に、その背中は僕の前から消えてしまった。
突然だった。酷く悲しんだ。自分には彼の背中を追いかける以外に出来ることがなかったのに。
僕はこれから何を見て生きていけば良いのかと、もう一度憧れである彼の背中を見てみたいと。
そう願った。

けれど、長い年月を過ごしていくうえで分かったんだ。
彼は僕の視線からいなくなったのではない。彼が僕の隣に立っているから、背中を見ることが出来なかったのだ。
彼の背中に追いつきたいと頑張っている中で、いつしか僕は彼に追いついて一緒の道を歩んでいたんだ。
僕は今彼と同じ景色を見ていた。

僕の視線の先には、彼とのキラキラとした輝かしい未来が写っていた

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