霧夜

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✙視線の先には✙


僕の視線の先には、いつだって彼がいた。
頼もしい背中、大きい背中、優しい背中、格好いい背中。
僕はいつもそんな彼の背中を追いかけながら生きてきた。

ある日を境に、その背中は僕の前から消えてしまった。
突然だった。酷く悲しんだ。自分には彼の背中を追いかける以外に出来ることがなかったのに。
僕はこれから何を見て生きていけば良いのかと、もう一度憧れである彼の背中を見てみたいと。
そう願った。

けれど、長い年月を過ごしていくうえで分かったんだ。
彼は僕の視線からいなくなったのではない。彼が僕の隣に立っているから、背中を見ることが出来なかったのだ。
彼の背中に追いつきたいと頑張っている中で、いつしか僕は彼に追いついて一緒の道を歩んでいたんだ。
僕は今彼と同じ景色を見ていた。

僕の視線の先には、彼とのキラキラとした輝かしい未来が写っていた

7/19/2023, 10:10:45 AM