蓼 つづみ

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1/26/2026, 9:43:05 PM

終電も失せて、
意味を果たすための音は眠った。
ここは、今日でも昨日でもない。

線路の先は、夜に呑まれて消えている。
目を覚ましているのは、夜行性の灯だけ。

なぜ、ひととして
生まれてきてしまったのだろう。

けれど、
みんな本当は
操られていたほうが
苦しまないのかな。

進みつづける秒針が
余計なおせっかいだと言っている。

操られていることは、
かわいそうじゃないのかもしれない、
なんて
思ったんだ。

題 ミッドナイト

1/25/2026, 10:30:28 AM

つーかさ、
不安だから出来てる事っていっぱいあると思うんだよね。
不安だからこうしよう、ああしようって原動力になってることっていっぱい無い?
不安を全否定しないでよ。
それでいいことも沢山あるじゃん。
不安と共存している均衡は、
安心の亜種でもあるでしょう?
それって、きっと、
生き延びるために形を変えた一形態だよ。

題 安心と不安

1/25/2026, 7:12:41 AM

あなたはただ、
圧倒的に在って、
すべてを同じ熱で通り抜けさせていた。

わたしはただ、
その環境の一部として受け取られることを望んだ。

あなたは測る側の位置から、
わたしの内側が滲ませた音を聴き、
機材越しにそれを検分したあと、
「認める」と言った。

その瞬間、
わたしはどこを見ればいいのか、
一瞬わからなくなった。

安心していいのか、
信じていいのか、
期待していいのか。

──喉から響く旋律の端に、霞がかかって、
──影を通過した後の声が、ひとの心に届かせる。
──おまえは、ひとより過剰に強い。
  もう相当なところまで来ている。
  けれどそれは、
壊れやすさを抱えたまま生きている強さだ。

そう評価を受けて、
わたしは目眩を覚えた。

わたしは目を凝らした。
あなたは嘘を言わない。
その耳に、誇りがあるから。

もう、いまは、
わたしの声は鳴らない。
現実は、わたしの強さも見抜かない。
街を歩けば、あなたの音楽だけが、
あちこちで鳴っている。
相変わらず、響かせるべき声の奏者たちは消される。

それでも、
あの時、強烈に焼き付いた像は
今も緑色に揺れながら、
わたしをどうにか、生かし続けている。

題 逆光

1/23/2026, 10:52:36 AM

【注意】
以下の文章には、性的な無理強いや同意のない行為に関する描写、他者の無理解や社会の鈍感さに対する強い感情表現が含まれています。読むことで心の負担を感じる可能性がありますので、内容に抵抗がある方や、過去に似た体験で傷ついた経験がある方は、無理に読まずスキップしてください。

私は、目が覚めても内容をはっきり覚えている夢を見ることが多い。その夢の中では、五感すべてが現実と同じ重さで存在している。

それは、悪夢だった。

夢の舞台は、小学校の教室だった。
私はスクリーンに映し出される映像を見ていた。
道徳か性教育の授業だと思う。
映像の中では、女性が恋人の男性に嫌そうな表情を浮かべているにもかかわらず、男性は構わず服を脱がせようとしていた。画面はそこで止まり、アナウンスが流れた。「こういったことを不合意といいます」と。

私は映像に強く感情移入していた。
映像の中の女性の「No」は明白で、無理強いされていることもはっきりしていた。しかし、教室の同級生たちはそれをただ教材として眺めるだけだった。

教師やクラスメイトたちの、その無感情さに、私は心の奥で怒りを覚え、落胆した。

夢の中の私はまだ子どもで、教室は価値観が刷り込まれる前の場所なのに、どうしてか誰も異常だと感じないようだ。こんなに明白なのに、人は、教育されなければ感じられないほど鈍感なのか。教師という立場の大人も含め、誰も何も感じていないのかと疑問に思った。

人は、どこで
「これは怒らなくていい」
「これは問題として流していい」と学ばされるのか。
その瞬間を、私だけが直視してしまっていた。

社会全体がこうした状況を教材として扱い、深く考えずに流してしまう構造そのものが恐ろしかった。

自分の感覚が届かない世界。
鈍感な他者と無感覚な大人に囲まれた現実こそ、私にとっての悪夢だった。

オチはない。
だってこれは、解決されない、教訓に回収されない、成長物語にもならない、ただ、ずっと続いてきた感覚を無意識が凝縮してしまった
ただの幻像だから。

冒頭の注意書きが過剰に見えたなら、
あなたはもうこの夢の登場人物かもしれない。

題 こんな夢を見た

1/22/2026, 11:20:14 AM

落ち葉を踏む音、
小さな声が揺れる。

「見て、これ!」
手がひらひらと空を切る。

「うわ、冷たい!」
声が後から追いかける。

風が木の間を抜け、
落ち葉を舞わせるたび
「逃げたー!」と声が弾む。

「ちょっと貸して!」
手が伸びる。
「いや、まだ持つの!」
声が跳ね返る。

踏みしめた葉がパリッ、
チクチクした感触が指先に残る。

「でも面白いね、ふふっ」
小さな笑いが零れる。

息は白く、空気はひんやり。
「見えた?」声が枝をすり抜け
「え、どこ?」少し遅れて届く。

「ほら、そこ!」
手が振られ、葉が舞う。
「わー、飛んだ!」
声が波になる。

光が斜めに差し込み、
葉の色は金に揺れる。

「ねぇ、もっと上!」
手が空をかく。
「無理無理!」声が届く。

意味は揃わず、答えも追わない。
ただ、波として、声が重なり、揺れ、
落ち葉の香りと光と一緒に漂う。

過去に戻れば、私たちは困らなかった。
意味がわからなくても、理解より先に声を出し、
意味より先に反応を返し、
ただ並走するだけでよかった。

言葉になる前の原液、
予測不能な並走、
意味が必ずしも問われない安心感。

そうだ、これが友達であり、
世界は完全に満ちていた。
並走が、時間そのものの感度だった。

題タイムマシーン

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