蓼 つづみ

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3/28/2026, 11:24:06 AM

世間一般で「無償の愛」と聞くと、まず多くの人が思い浮かべるのは、ほとんど例外なく母親が子どもに注ぐ愛だ。

しかし、本当は違う。みんな、勘違いしている。

親の愛はもちろん深く強いけれど、社会的な役割や期待、過去の経験や理想像の影響を受けやすい。

でも、幼児が母親に向ける視線には、条件も計算もほとんどない。存在そのものをそのまま認め、受け止める力がある。

「はい、どーぞ」と差し出される小さなドングリ。
目の奥がまっすぐで、境界はない。

その瞳に映る自分は、飾りも作りもない存在としてだけそこにある。

何かを返さなきゃ、説明しなきゃという思考は、一瞬で消える。

これが、本当の無償の愛だと、20歳で親になって初めて気づいた。

親は産まれた瞬間から「完全な親」ではない。戸惑いも迷いも、足りない知識や経験もある。成人しても君子のように完璧ではない。

それでも、子どもはそれを評価しない。曇りなく、まっすぐに、存在そのものを受け止めて見つめる。そして、ただ「ママ」として慕う。

その瞬間、見つめられる側は、自分の未熟さや迷いも含めて丸ごと受け入れられている感覚に押される。

子どもの視線こそが、親を親たらしめる魔法みたいなものだ。

だから、ね、その瞳にあぐらをかいてはいけない。
純粋な視線を利用する親になってはいけない。

まだ未熟な子どもで、親を愛していない者はいない。
でも、親は違う。哀しいけれど、子を愛せない親はいる。

世間は逆に言う。子を愛さない親はいない、と。

哀しくても、
私にできることは目の前にあるその視線に、応えること。

そうやって、至らないまま18年間を駆け抜けた。
あの小さな瞳の魔法は、形を変えて今も生きている。

題 見つめられると

3/27/2026, 10:30:17 AM

傷も、癖も、過去も、
望むかどうかに関わらず、積み重なっていく。
人の核は、簡単には変わらない。
ときに歪みを抱えたままでも、
関係の中で、少しずつ響き合う部分がある。
安心できる相手の前では、
張り詰めていた縁が、ゆるやかにほどけていく。
境界を尊重され続けることで、
「ここにいても大丈夫だ」と、身体が覚えていく。
それは、無理に変わることではない。
ただ——
自然に整うように調律される感覚だ。
そこに気づくまでが、少し苦しい。
何度も踏み越えられ、
そのたびに線を引き直して、
ようやく、
「これは壊れない関係なのだ」と理解する。
私は、きっとそれを学んでいく。

題 My Heart

3/26/2026, 10:44:16 PM

それは…、
自分がどんな世界を望んでいるかの設計図かもよ。

「欠乏」や「欲求」を
「ないものねだり」と呼ぶと、抱きしめやすくなる。

仕方ないよね、ちょっと欲しかっただけだもん。

大人になると、
欲しがること自体を削って、
無かったことにする人も多いから、
その気持ちは大切に持っていて。

だって、その方が可愛いから。

題 ないものねだり

3/25/2026, 10:23:44 AM

どうして「気を許したせいだよ」と言いながら、
私の嫌がることをするのだろう。

私は、ただ線を引きたいだけだ。
それが負担だと伝えたいだけだ。

境界を示した途端、相手は去る。
まるで、浸食できない私には用がないみたいに。

私は、友達でいたかっただけだ。

「好きだから甘える」と言いながら、
配慮のない態度を繰り返す。
それを、好きと呼ぶのだろうか。

負担だと伝えれば、
「じゃあやめようか」と、あっさり距離を取る。

結局、
“受け止めてくれる私”でしか、
関係は成り立っていなかった。

押せば動く存在だと思われるのが嫌いだ。

応じられないだけで、残念そうな顔をされる。
その反応が、私の輪郭を削る。

私は救われたいわけじゃない。
ましてや、過剰に煽てられて喜ぶわけでもない。
求めているのは、尊重だけだ。

どうして境界を示すたび、ひとりになるのだろう。
優しくされたいのは、私のほうだ。

それは私を好きなんじゃなくて、
私に映る自分の理想像を見ているだけなのに。

本当に気を許せる関係は、
線を引かれたときに、
それを“距離”ではなく、
“地図”として扱えることだ。

線を引いても、そこに居続けてくれると分かること。
それを、安心と呼びたい。

だから私は、
どこまでも受け入れる人にはならない。

それでも隣にいられる人とだけ、
関係を続けていく。

題 好きじゃないのに

3/24/2026, 10:57:33 AM

「いつも私だけが、傘をさしている」
自分の動作を言葉にしてみただけの、彼女の声だった。

雨はもう、やんでいる。
彼女はいつも、それに気づくのが遅い。
だから傘をさしている。
それだけのことだ。

僕は空を見るより前に、
歩調の向こうから届く彼女の言葉の調子を聞く。

「それは、日傘になってよいですね」

僕の声に振り向いた彼女の髪が風に揺れる。
指先が、傘の柄へと繊細に触れている。

視線を合わせようとすると、
いつも少しだけ遅れる。

ほんの一瞬の、許された距離。

僕は、彼女の視線を修整しない。
ただ、傘の影に揺れる瞳をそっと見つめる。

雨は、もうない。
だけど、どこかではまだ、傘は必要なまま。

題 ところにより雨

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