ひとがいっぱいいる。
風はつめたいけど
光があったかい。
おおきな手は、
見る前から出てる。
指はそろってない。
うまく掴めない。
触れたら、
あ、これ。
ぎゅってしない。
落ちないって知ってるから。
歩く。
足が早くても、
ひっぱられない。
つまずいたら、
上にいく。
上を見なくても、
連れていってくれる。
どこに行くかは、
まだわからない。
ざらざらな指
握ってみると
ぎゅっと返ってくる。
題 手のひらの贈り物
あなたの痛みを
わかろうとするように
私の痛みも
見てください。
この言葉は
私の中に常にある。
誰にも渡さず、奥にしまってきた。
軽く扱われては溜まらない。
すべてを分かることはできない。
だから、分かろうとする姿勢が欲しい。
世界で
誰か、たったひとりだけでいい。
けれどこの祈りは、
高い理想として抱えているのだと、
大人になって、知った。
別の物差しで測られ
見当違いな理解もあった。
それでも
その奥を叩き続けたら
ひらけた場所も、あった。
分かろうとする姿勢は、
わからなさを血の滲む手で
咀嚼した先にある。
題 心の片隅で
足跡がつく前の雪。
「私はこういう人間だ」と
言わされる前の、君。
守られても、隔てられてもいない白。
意味を引き受ける前の、ただの在り方。
沈黙ではない。
語られないままの白さ。
意識の輪郭が生まれる前。
期待も、評価も、役割も、
まだ触れていない。
名を持たない感情が、
確かにそこにある。
雪の静寂はやさしく、
同時に少し残酷。
降りしきるあいだ、
遠くと近くは溶け、
時間は粒になる。
白い面に残るのは、
何も起きていない、という気配。
忘却ではない。
抱えきれないほどの、前触れ。
世界は黙る。
土も、水も、芽吹く予感も、
雪の下で息をひそめる。
踏み入られない雪。
まだ誰のものでもない場所。
世界に名を与えられる前の、
完全な白さ。
題 雪の静寂
君がまだ小さかったころから、
毎年、同じ夜を見てきた。
狸寝入りをして、
親の顔色をうかがっていた年もあった。
朝になるのが待てなくて、
目をこすりながら起きてきた年もあった。
中身を見る前に、
誰かの反応を先に確かめていたこともあった。
気に入ったふりをした年も、
本当に嬉しくて言葉が出なかった年もある。
それでも、
最後にはちゃんと「ありがとう」と言って、
しばらく遊んで、
そのうち日常に戻っていった。
年を重ねるごとに、
箱を見つけたときの反応は小さくなった。
でも、
中身を確かめるときの目だけは、
どこか変わらなかった。
今や君は、自分で働き、自分で選び、
望むものを掴み取れる存在となった。
何よりも、
それは誇りに思うべきことだ。
今年、
私はもう箱を置かない。
けれど、
君が何かを手に入れたとき、
一瞬だけ立ち止まる癖は、
あの頃から続いているはずだ。
それを毎年見てきたことが、
サンタにとっての
いちばんの仕事だった。
題 君が見た夢
なにも先のことなど
考えずにいたかった
けれど
学校や街は
それを
当たり前のように言う
絶対なんて無いと
どこかで知ってしまったのに
それでも
将来という言葉だけは
毎日のように
前に置かれる
先のことなど
何も知らないまま
いま
どこにいるのかも
少し
わからなくなっている
だから
せめて
ここが消えてしまわないように
きみの肌に
触れていたい
題 明日への光