「夜景」
ここは山の展望台。
昔は恋人たちがここに集まり、夜景を背景にデートをしたり、あるいは告白・プロポーズなんかもしていたらしい。
きっと彼らにとっては甘い、もしくはほろ苦い思い出の場所だったのだろう。
でも、今は誰もいない。
もっと美しい夜景の見られる場所がたくさんできて、わざわざここに足を運ぶ人がいなくなってしまったのだ。
強いて言うなら、変な噂をきっかけに心霊スポットとして時々肝試しにくる学生が来るくらいで、ただ純粋にこの景色を楽しむためにここにいるのは私くらいのものだ。
私はあの夜景に、夜景の一部になりたかった。
暖かい家の灯りも、勤勉な会社員や学生のいるオフィスや学校も、カラフルな繁華街も、どこも私の居場所ではなかった。
私はどこにも行けなかった。
暗いところに閉じこもり、人を避け、人に避けられ、誰にも、街にも愛されなかった。
綺麗な夜景だ。とても、綺麗な。
でも、あそこは私の居場所じゃない。
もっと、もっと高くへ行こう。
山に登る。静寂が耳を貫く。光はない。
だんだん心も静かに、しかしどこかで高揚している。
疲れているはずなのに、体は軽くなっていく。
今なら、どこかに飛んでいけそうだ。
夜の街よりもずっと明るく、高いところへ。
一歩踏み出せばきっと行ける。
天国か、それとも地獄か。
私はずっと下に見える夜景に、一歩踏み出した。
最後に見た星空と夜の街並みは、とてもとても輝いて、なぜだか涙で滲んでいました。
これで私も光になれるのかな。
「花畑」
今日は天気がいい。が特にやることもない。
やることといえば、2歳児(推定)の子守くらいだ。
……にしても、聞き分けのいい幼児でよかった。
「ねー」「……」「ねー!」「……」「ねーねー!」
「ねーー!!」「……」「ねーーー!!!」「なになに?」
「どあのむこう いきたい!」「外に出たいって?」
「おしょと!ボク、おとーしゃんのおへやからねー、ちょっとだけでたことあるのー!でもねー、ニンゲンしゃんのおへやのおしょと、なんにもちらなーい!」
「外は危ないぞ?車もいっぱいだし、おちびには猫すら危険かもだしなぁ……。それから、勝手に外に出したからってあんたの弟に叱られるかもしれない。それが一番面倒くさい……な。」
「じゃー、ひとりでいくもーん!」「だめダメ駄目だって!!」
「ボクだいじょーぶだもん!」「まだ子どもだから駄目だ!」
「……とりあえずあんたの弟に相談するから!」
『あぁ、話なら聞いていたよ!そのくらい想定内さ!少しならいいんじゃない?ただ……危険な目に遭わせたら、いくらキミでも容赦はできないなあ……。』
こいつ、いつの間に……?!
『ま、キミだったら大丈夫でしょ!ふたりとも、散歩にでも行っておいで!』
はぁ?!……ってもう通信切れてるし。
「わー!おしょと!おしょとー!」
仕方ない。とりあえずひとのいなさそうなところに行こうか。
「ほら、歩こう。」「おてて!」「?」「おてて、こーやって!」
「??」「ん!おてて、ちゅなぐー!」
手を繋ぎたかったのか。子どもらしいな。
人がほとんどいないと思って川の近くに来てみた。
「ねー!あれ、みてー!ふわふわいっぱい!」
えっ、ふわふわ?
「あぁ、たんぽぽの綿毛か。いっぱい生えてるな。」
「たんぽぽ?たんぽぽのおはなばたけなのー!」
花畑……ってほどでもないと思うけどな……。
「あっ、こら!食べちゃダメだぞ?!」
「たんぽぽ、たべない?」「少なくとも食べて美味しいもんじゃないよ?」「んー。」
「でも、さっきおっきいたんぽぽやしゃん、いたよ?」
「……??」「とっ、とにかくこのたんぽぽは食べちゃダメだからな!」「はーい!」
おちびは嬉しそうに綿毛のたんぽぽを摘んでいる。
「おとーとに、おみゃーげちたら、よろこぶねー!」
「たんぽぽをお土産に?」「んー!」
このきょうだいの頭とたんぽぽの綿毛……ちょっと似てるな。
ふとこの子の頭を撫でてみる。綿毛みたいだ。
「んー?」「綿毛によく似てると思って。」
「じゃー、もっとなでなで、ちてー!」「はいはい。」
聞き分けはいいが少々わがままだな。
……でも、それが可愛い……かも。
「わー!わたげたんぽぽ!いぱーいとれた!」
「もう帰るか?」「ん!でも、おっきいたんぽぽやしゃんいこー!」「……そうだな、行こうか。」
こうして自分達はたんぽぽの花畑を後にした。
そして「おっきいたんぽぽ屋さん」を自分は探す。
何だ?大きいたんぽぽって───「あー!」
「おっきいたんぽぽやしゃん!」
「……綿菓子だ。」綿菓子屋だったのか。
「いいにおーい!」「綿菓子、欲しい……よな。」「んー!」
自分は綿菓子を3つも買った。変に思われてないか心配だ。
「おっきいたんぽぽ、ちょーだい!」
「棒が付いてて危ないから、帰ってから食べような?」「ん。」
ちょっと不機嫌そうだ。でも「容赦できない」らしいから許してくれ。ちびと自分のためなんだ。
「ただいまー、でしゅ!」「ニンゲンしゃんもおかえりー、なの!」ただいまとお帰りを両方言うスタイルなのか。
……ただいま。お帰り。
「おとーとがいってた!てあらい、うがいだってー!」
「てあらい、うがい みしぇてー!」
「あー、うん。」まじまじと見られると恥ずかしい。
「てあらい、うがい!おぼえたー!」
「手洗いうがいのあとで綿菓子を食べようか。」
「わーい!おっきいたんぽぽ!」
「え?!おっきいたんぽぽ、たべていーの?!ちっちゃいの、だめーなのに!」「大きい方は食べても平気だよ。お菓子だからね。」「おっきいたんぽぽ、おかちなのー!」
「いただきまーちゅ!あ!なくなっちゃった!なんでー?」
「でもあまーい!おいちい!」
満足そうで何よりだ───「んぐ?!」
「おいちでちょー!」ちょ、そんなに綿菓子を口に突っ込むなよ!……確かに美味しいけど!
笑顔は可愛い!でもやっぱり子どもはよくわからん!
……もうちょい分かり合えるよう頑張るか。
そう思いながら自分は口に綿菓子を突っ込まれていた。
「前回までのあらすじ」(番外編)───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
まあ一方的にお願いしただけとはいえ!!!
とても嬉しいことだね!!!
────────────────────────────────
「空が泣く」
引っ越しの準備とやらでマッドサイエンティストはちびっこをひとりで置いていって数日。甘えん坊がひとり増えたくらいで、だいたいいつもと変わらない暮らしを送っている。
「ね!ね!ニンゲンしゃん!」「ん?」
「ずーっとふちぎなの!」「何が?」「あれ!」
「だっこちて!」「はいはい。」
抱っこを求めたと思ったら窓まで連れて行けと。
ちっさいこどもはよくわからん。
「何?何が気になるんだ?」「あれ!あおいの!」
「青いの?どこも青くないけど?」「あれ!あーれー!」
「もしかして……空か?」「うえのほう、あおいの!」
「しょら ていうのねー!おべんきょなのー!」
「今は太陽っていう明るい星が出ているから明るいけど、太陽が沈むと暗くなって、それを夜って言うんだ。」
「え?ちゃんとたいよー?もどってくる?」
「寝てる間に戻ってくるよ。」
「へー!よる じゃないじかんもあるのー?」
「あー、うん。太陽が昇って間もない時間を朝、太陽が高いところにいる時は昼、沈みそうな時間を夕方って言うんだ。朝早くや夕方は空が綺麗なオレンジ色になるんだ。」
「みたいみたーい!きれーなの?」「うん、とっても綺麗だよ。」「今日は天気が良さそうだから、きっと夕焼けが見られると思う。」「たのちみー!」
「それじゃあ、夕方になるまでこの国の文字を勉強しようか。」
「おべんきょ!がんばるのー!」
健気なやつだなぁ、そう思って自分はひらがなを教えた。
ひらがなを教えているうちに夕方になった。
昼間の晴天とは打って変わって厚い雲がこの町を覆っている。
……今日は夕焼けが見られそうにない。
「あれー?おしょら、えんえんなのー。おとーと、ボク、しんぱいなのー?」「おしょら、かわいしょうなの。」
不安そうな目でこちらを見る。じ、自分には何もできないぞ?
空が泣く、か。小さい子は不思議なこと言うなー。
「あー、空は泣いてるんじゃないよ。ただ雨が降ってるだけさ。雨のおかげで植物──お花や木が元気になるんだ。運が良ければ虹も見られるかもね。」
「にじー?にじ ってなーに?」
「雨と太陽の光が作る七色の橋、みたいなものかな?」
「ボク、にじ みたーい!」「そのうち見られるよ。」
「んー……でも今日は難しそうだな。」
「ボク、つぎのあめ、たのちみー!」
「そうだな。自分も楽しみだよ。」
「にじ、みんなでいっちょにみよーね?」
「そうだな、またいつか。」
そう言って自分たちは天からの恵みをガラス越しに見つめた。
「前回までのあらすじ」(番外編)───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
まあ一方的にお願いしただけとはいえ!!!
とても嬉しいことだね!!!
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「君からのLINE」
私には友達がいない……のにかわいいLINEスタンプだけが増えていく不思議。送る相手も送ってくる相手もいないのに……。
「咳をしてもひとり」と同じ何かを感じる……。
おーい君ー!誰だかわからないけどなんかいい感じのLINEを送ってきてよー!!えっ?!友達ができる壺?!買います買います!え?!5万円?!!それはちょっと……。
( ・᷄ὢ・᷅ )
「命が燃え尽きるまで」
ボクは宇宙を守るという使命を果たすために生まれた、いや、作られた。父……血の繋がりなんてないが、ボクを作った人の想いは今も生き続けている。ボクはそれを託されて今日も働くんだ。
父はたくさんの宇宙を、たくさんのひとたちを、守りたかった。父には守りたいものがたくさんあった。
最後の最後まで、守ろうとした。
でも、守れなかった。
だって父は、生き物だったから。
生き物はいつか、その命が尽きるから。
仕方のないことだ。
彼が守りたかったものたち。救いたかったものたち。
数多の美しい宇宙。実験と労働で苦しんだ宇宙管理士。
そして、ボクと一緒に生まれた機械。
それらを、彼らを苦しめないために、ボクは何でもした。
できることは全て、思いつくことは全て実行したよ。
その結果、時間はかかったけれど、お父さんの守りたかったものは全部、ちゃんと救えた。
これからもきっと。
そういえば、ボクにも守りたいものができたんだ。
お父さんも守りたいと思っていたはずのボクのきょうだいと、それからあるひとりのニンゲン。
こっそり彼らの様子を覗いたら、ふたりとも安心した様子で抱きしめあっていたよ。
……どれだけ愛おしいんだろうと、そう思った。
この命が燃え尽きるまで、ボクはずっと動き続ける。
ボクの命は命とも呼べない、模造品かもしれない。
でも、ボクはきっと愛を知っている。
愛する誰かのためなら、たとえ白眼視されようとも、居場所がなくなろうとも関係ない。
愛で燃え尽きるまで、愛がなくなるまで、ボクはこれからもずっと生き続けるよ。
大好きなものを守るために。
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
まあ一方的にお願いしただけとはいえ!!!
とても嬉しいことだね!!!
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