「夜明け前」
星屑を散りばめた黒。
西の空に明かりが灯る。
眠りから醒めた藍。
静かな風が吹く。
光を誘う青。
小鳥の鳴き声と車の音が、どこかから聞こえる。
私は眠れもせず、起きられもせずにこの時を見つめて、もうこんな時間が来てしまったか、とほっとしながら、憂鬱になりながら思う。
真夜中は私だけのためにある時間。
誰にも邪魔されない、私だけの世界。
しかし永遠には続かない。
世界が眠りにつくように、漆黒も眠りにつく。
世界が目覚めるように、漆黒も目覚める。
ただそれを繰り返して、いずれ全てに置いて行かれる。
希望の夜明けに、ため息ひとつ。
世界の目覚めに背を向けて、私は目を瞑りました。
「本気の恋」
溜まっている洗い物や洗濯物を処理しながらテレビをチラ見する。内容はよくわからないけど、おそらく恋愛リアリティーショーのような趣旨の企画なのだろう。
……小さい子もいることだから変えておこうかな。
「ねー!ニンゲンしゃん!『こい』ちてる?」
「しないよ。自分はそういうの興味ないからさ。」
「ニンゲンしゃん!ほかのひとがおてほんだってー!ほんきのこい なんだってー!」
「ねー。」「ん?」「こい てなにー?」
そっからか。まあ自分もあんまり分かってないけど……。
「恋っていうのは人を好きになって、そしてその人を自分のものにする……みたいな……?」「んー?」「難しいよな。」「たぶん、ちがう。」「そっか。違うのか。」
「えとねー、こいはねー、もっとあったかいのー!」
「あったかい……?」「んー!」
「ひとをもっとだいすきになってねー、えとねー?」
「わかんない!」「そっかー。分かんないかー。」
「そういえばさ、お兄ちゃん……(?)。何で自分のことを怖がったりとかしないんだ?」
「だって!⬛︎⬛︎ちゃ……おとーとのだいじなこ だから!」
「大事な子?」「ん!だって、まえ、ニンゲンしゃんがおけがちたとき、おとーとおこったもん!」
「だから、だいじなこー!」
そういえば初めて会った時、この子のせいで怪我したんだったっけ。その後のこと全然覚えてないけど、あいつは自分のために怒ってくれたのか。
そうだったのか。
「おとーとのだいじなこは、ボクのだいじなこー!」
自分は小さなこの子を抱きしめずにはいられなかった。
「わー!ぎゅーなのー?!わーい!」
この気持ちは恋ではないのは確かだ。
この気持ちはなんだろう。
「ぎゅー!うれちいのー!おとーとにも、やったげてねー!」
喜び?優しさ?
それとも───。
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
まあ一方的にお願いしただけとはいえ!!!
とても嬉しいことだね!!!
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「カレンダー」
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
まあ一方的にお願いしただけとはいえ!!!
とても嬉しいことだね!!!
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「ニンゲンくん、ボクは本部まで諸々を取りに行ってくるから、ちょっとの間きょうだいを頼むよ!!!」
「えー!いっちゃうのー?!やー!」
「仕方ないだろう?!!荷物がなきゃ生活できないんだから!!!」「むー!」「キミははだかんぼで生きていくのかい?!!」「やー!」「絵本も欲しいだろう?!!」「んー。」
「⬛︎⬛︎ちゃん、おはなしへんなのー!」「???」
「ふつうにおちゃべりできないー?」「ん???」
「いちゅもみたいにおはなし、してー!」「……?」
「あー、分かった分かった。」
「いくらニンゲンくんの前にいるとはいえ、もう強がる必要はないか。」
「ニンゲンくん!!!いざ聞きたまえ!!!」
「今からボクはもう……キミの前で強がるような真似はしない!!!」
「なんせボクだってまだ子どもだよー?子ども扱いしてくれるキミの前ならわざわざ尊大に振る舞う必要もないよねー?ニンゲンくん、いいでしょ?」
「好きにしたらいい。」「相変わらずあっさりしてるねキミは!」「⬛︎⬛︎ちゃ、ちょっとへんだけどまーいっか!」
「あ、そうだ!これ、つけておかないときょうだいの言っていることがわからなくなっちゃうからさ!⬜︎⬜︎、こっち来て!」
「んー?」「翻訳機能搭載のピンだよ!」
「公認宇宙管理士の資格を剥奪されたから色んな機能が使えないんだよー。ひどいよねー?」「ねー?」
「とりあえず、ボクはもう行くね!」「いってらちゃーい!」
……置いて行かれた。自分の家なのにそういう表現をせざるを得ない状況だ……。ほとんど知らない幼児とふたりきり。
……自分にどうしろと?
「ニンゲンしゃん!あれ、なにー?」
小さな機械は壁にかかっているカレンダーを指差す。
「あぁ、あれはカレンダーだよ。」「かれんだ?」
「今日が何日か、何曜日かと予定を確認するんだ。」
「よてー?てなーに?」「何月何日何時に、どこで何をします、っていうやつだよ。例えば明日、買い物に行きます、とか。」
「ふーん。じゃ、ニンゲンしゃんのよてー!おちえて!」
「カレンダーに書いてるよ?」「うしょ、だめだよー!なんもないー!よてー、ないの?」「……。」
「じゃー、ニンゲンしゃんとボクと⬛︎⬛︎ちゃん!あしょぶー!えーと……このあかいとこ!あしょびのひー!」
幼児に勝手に用事を入れられた。
「ね、ね!」「ん?」「『あしょぶ』てかいて!かれんだ!」
「あー、はいはい。」日曜日に「あそぶ」。
「よてー!あるね!よかったねー!」
……そういえば、この子はずっと時間が止まったまま、だったんだよな。果てしもない時間が知らないうちに過ぎていて、色んなひとたちに置いて行かれて。どれだけ寂しかったろう。
大きなお世話かもしれないけど、少しでもこの子の心の隙間を埋められたら、ちょっとは自分の価値も、見出せるかな、存在が報われるのかな。
「ニンゲンしゃん!」「ん?」「だっこ!」「はいはい。」
無邪気な笑顔だ。あんまりかわいいから、ほっぺたを触ってみた。羽二重餅みたいに柔らかい。
「ニンゲンしゃん!わらってるー!」
嬉しそうに笑っているのを見て、知らないうちに顔が綻んでいた。……久しぶりに笑った気がするな。
「あちたのよてー!ニンゲンしゃん、わらうってかいてー!」
難しい予定を入れられてしまった。
まあいいや。
予定なんてなくても笑えそうな気がするから。
「喪失感」
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めたよ!本部への挨拶回りも済んで、次はニンゲンくんに謝罪をするつもりなのだが……。
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「⬛︎⬛︎ちゃん!みんなにごめんなさい!できた!えらいでちょ?」「うんうん、えらいえらい!」「やたー!おかしちょーだい!」
「とその前に、ニンゲンくんのところにも行くんだよ?」「やー!」「ええ?!!キミが行くって言い出したんだろう?!」
「んーんー!およーふくおきがえー!」「あぁ、なるほど?」
そうだった。兄がずっと着ていたのは入院着だった。
これから元気に過ごすには似合わないね。
「それじゃあ、お父さんのお部屋にまた戻ろうか!」
「おうちだー!」
無邪気な笑顔を見て、ボクはなんだか懐かしくなった。
「おとーしゃんただいまー!いいこにちてたー?」
いい子にしてた?か。お父さんがよく言っていた言葉だ。
……。
早速タンスを漁る兄。あーそんなに中身をポイポイしないの!
「これ!これきるー!」
取り出したのはよく着ていた子供服。やっぱり懐かしい。
「はいはい。着せてあげるからこっちにおいで。」「ん!」
「よーし!これで完成!」「わー!かわいい?」「可愛いよ〜!」「⬛︎⬛︎ちゃんもかわいいー!」「へへ、そうかな〜?」
「おきがえできたー!いってきますするー!」
「さっきしたところだけど、お父さんにもう一回挨拶しようか!」「んー!」
「おとーしゃーん!おきがえちた!かわいい?」
「あのねー!ごめんなしゃいするからいってきますなのー!」
「おとーしゃんもおきがえちてねー!ばばーい!」
小さい子はボクの頭脳を持ってしてもよく分からないなぁ……。
それじゃあ、ボクも行ってくるよ。
……謝罪を受け入れてもらえたらいいんだけど。
◆*:.'.:*◆*:.゚.:*◆*:.'.:*◆*:.゚.:*◆*:.'.:*◆
--某ニンゲン宅付近にて--
「実はニンゲンくんの家に本部から直接アクセスできるようにポータルを作っておいたのさ!」「あのドアの向こうにニンゲンくんがいるんだよ!」「んー……。」
「⬜︎⬜︎、どうかしたの?」「ニンゲンしゃん、ごめんなしゃいのおみゃーげないのー。」「まぁまた今度でいいんじゃない?」
「だめー!おみゃーげあげるー!」「うーん……。」
「あ!こうするのはどうだい?……。」「ん!」
「もう呼び鈴を押すね?」「やー!ボクがおしゅー!」
「キミじゃ届かないだろう?……やれやれ。」
兄の小さな体を持ち上げて呼び鈴を押させる。
「ぴんぽーんていった!」「ちゃんと押せたねー!」
◆*:.'.:*◆*:.゚.:*◆*:.'.:*◆*:.゚.:*◆*:.'.:*◆
……誰だ?うちに用事のあるひとなんていないはずだ。
ゴミの捨て方を間違えたんだろうか。
最近、色んなことを間違えてばっかりだ。
自分があいつに酷いことを言ったのにまともに謝れもせず、結局残ったのは……乱れた生活といやに静かな部屋、それから喪失感だけだった。
宇宙を管理するやつからしたら自分なんかいようがいまいが変わらないのに、ずっと一緒にいてくれた。守ってくれた。
そんなあいつを、自分は拒絶したんだ。
たとえ機械であろうが、作り物であろうが、あいつの優しさは、暖かさはきっと本物だった。いや、偽物でもよかった。
あいつは自分を───。
呼び鈴が再度鳴る。
……流石に出ないとまずいな。
「……はい。」
「やあニンゲンくん、久しぶりだね?」
「ニンゲンしゃん!こんにちはです!」
え?いや、なんであんた達が?
「キミに用事があるんだって!ぜひ聞きたまえ!」
「ニンゲンしゃん!おはなちー!」
「あ、そうそう。兄には心を読む機能が搭載されていないのと、まだまだ赤ちゃんだからっていうのもあってだね!なるべく簡単な言葉を使って頂きたい!」
あぁ、わかった。
「まぁ、玄関で話をするのもなんだから……上がってよ。」
「はーい!」「あー!!!待って!!!」「んー?」
「靴は脱ごうね?!!」「はーい!」
……すぐに出ないどころか、汚い部屋に上げることになってしまった。自分はつくづく駄目な奴だよな。
「ニンゲンしゃん……。」小さい兄?が悲しそうな顔でこっちを見つめてくる。兄の方も変わった瞳だな。
白っぽかったり黒っぽかったり、見る度に少しずつ色が違う。
「ね、ね。おてて、おけがだいじょぶ?」
「あ、あぁ。すぐに治してもらったからもう平気だよ。」
「んー……。」
「おてて、おけがごめんなしゃい。ニンゲンしゃんのおうち、ないないしちゃうだったの、ごめんなしゃい。」
もう泣きそうになってる。
「ごめんね。ごめんなしゃい。」
そう言いながら抱きついてきた。抱きつかれて改めて思った。
……この子、めちゃくちゃ小さいな。
腰くらいの高さに頭がある。2、3歳くらいか?
そんでもって……相当可愛い。
「そんな気にしなくていいよ。自分だってまだ夢見てるみたいな、変な気持ちだからさ。ほら、泣かないで。」
自分はついこの子の小さな体を抱き上げてしまった。
「ぎゅー!」……重くはない。
けど全然離れてくれない。とれない。
「……ニンゲンくん。そんなこんなで色々悪かったよ。ボクからも何かお詫びをしたいところだが、逆にまた頼み事をしなくてはならなくなってしまった!」
へ?また?
「そう言いつつ嬉しそうじゃないか〜!!」
「ま、とりあえず聞きたまえ!」
「実はだね……宇宙管理機構内に資格を持っていない者は来客を除き長く滞在できない決まりなのだよ。」
「そのうちこの決まりもボクのパワーで破壊するつもりではいるが……言いたいことは分かったね?」
いや、わからん。
「はぁ……全く!!!」
「しばらく……というか今のところ50年くらいの間でいいから、兄の居場所としてキミの家を貸してくれないかい?!!」
「はぁ?!!……まあ断る理由もないか……。分かったよ。」
「さすがニンゲンくん!!!そう言ってくれると思っていたよ!!!本当に助かるよ!!!ありがとう!!!」
「⬜︎⬜︎、今日からキミはここで暮らすんだよ!」
「⬛︎⬛︎ちゃんもいっちょ?」
そういやどうn「当たり前だろう?!!」そうか。
「というわけで、これからもよろしく頼むよ、ニンゲンくん!!!」「よろちくたのむよー!」
「あ、あぁ……?」
一件落着と思いきや、これから小さな居候が一人増える生活が始まるらしい。
……これからもよろしく。
「世界に一つだけ」
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めたよ!このまま控訴されなければいいが……。
そういえば、ほとんど変化はないけどちょっとあらすじを書き換えたよ!!!多少は読みやすくなっただろうか!!!
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「⬜︎⬜︎、今日でこのお部屋ともお別れだね。」
「おうちかえるー?」「うーむ……。」「かえろー!」
「……その前に、すべきことがあるだろう!」
「すべきこと てなあに?」「しなきゃいけないことさ!」
「んー。なにすべきこと?」「挨拶だよ!あいさつ!」
「あいさちゅ?」「そう!」
「この部屋の管理人くんには随分とお世話になったろう?だからありがとうって言わないとね!」「わかったー!」
「あ!ありがとうのおえかきしゅるー!」「お絵描き?」
「ん!おにーしゃんとボクと⬛︎⬛︎ちゃんのおえかき!」
そう言いながらクレヨンを手に取る。兄に描画機能は備わっていないから、辛うじて色で判断できるくらいの拙い絵だ。
「できたー!」「おっ、みんな笑っていて可愛いね!」「かわいい?やたー!」「おにーしゃんもよろこぶねー!」
嬉しそうにほっぺたを桃色にして笑顔を浮かべている。
「さて、お片付けしようね!」「ん!」
兄は小さな手でクレヨンと画用紙を箱にしまって自慢げな顔をした。えらいえらい。
「さて、もうこれであらかた片付いたね。それじゃあ管理人くんにありがとうって言おうか!」「んー!」
この牢獄ともお別れか。名残惜し……くはないが悪くはなかったね。もうお世話になりませんように!
「管理人くん!」「はい。……もう出られるんですね。おめでとうございます。」「ホッとしたよ〜!全くもう!!」
「それはそうと、今まで色々とありがとう!」
「おにーしゃ、ありがと!」
「これ、ありがとうのおえかきー!おにーしゃんにあげる!」
「これは?」「おにーしゃんと、ボクと、⬛︎⬛︎ちゃん!」
「……ありがとうございます。大事にしますね。」
「だいじだいじだよー!」
「随分と世話になったね。それじゃあ、そろそろ行くよ。」
「⬛︎⬛︎ちゃん!」「ん?」「おててちゅなぐー!」
「あー、はいはい!」
「おにーしゃ!ばばーい!」「さようなら。」
ボク達は宇宙管理機構本部へと向かう。
「⬜︎⬜︎、いい贈り物だったね!あの絵は世界に一つだけの、とっても可愛いプレゼントだ!きっと彼も大事にしてくれるよ!」
「わー!やたー!」
「そうだなあ……次は、宇宙管理機構に謝罪……ごめんなさいしないとね。」「ごめんなしゃい?」「キミは宇宙破損の幇助をした訳だからね。お姉さんも一緒に行く予定だよ。」
管理士整備室に旧型管理士を迎えに行き、偉い連中が集まった部屋に入ろうとしたその時。「⬛︎⬛︎ちゃん、まってー!」
「急に何だい?」「ごめんなしゃいのおえかき!」
「えぇ……。」「おえかき、だめー?」
「もしかしたら別のものの方が喜ばれるかもしれないわね。」
「おねーしゃん、なにがうれちいの?」
「そうね……私がお詫びで貰うのなら、もっと実用的なものが嬉しいわ。でも、思いがこもっていればきっと気持ちが伝わるんじゃないかしら。」「むー!わかんないのー!」
「そうだ!この光を当てるだけで固まる素材で何か作ったらどうだろうか!」「あ!ボク、これでおほしさまつくるー!」
「いぱーいつくってみんなにあげるのー!」
「……というわけで旧型さんも手伝ってくれないかい?」
「ええ、いいわよ。」
「兄の我儘に付き合わせて申し訳ないね。」
「私だって貴方の宇宙に傷をつけたのだから、手伝わなければ。」
こうして手作りの星がたくさん出来上がった。
「おほしさま、せかいでひとちゅだけなのー!」
「ごめんなしゃいのおほしさま!みんなうれちいかな?」
……いや、本当に大丈夫だろうか……。
舐められていると思われたりしていないだろうか。
大分不安だが……。
冷や汗を拭えないまま部屋に入る。
「……失礼致します。」
「この度は兄と旧型管理士が大変ご迷惑をお掛けし、大変申し訳ございませんでした。また、寛大な処置をいただき、誠に有難うございます。」
「……申し訳ありませんでした。この子に誘われたからといって、私は多くのひとびとを傷付けてしまった。いくら謝ったところで、私の罪は消えません。」
「みんな、ごめんなしゃい。ボク、わるいこなの……。でも、いまはいいこです!あちたはもっといいこです!これ、ごめんなしゃいのおほしさま!」
勝手に作った星を配り始める。こらー!
「せかいでひとちゅのおほしさま!ごめんなしゃいのおほしさま、だいじだいじなのー!」
その様子を見て、偉い連中は口々に兄を可愛がる。
「かわいい子だね。あと50年は公認宇宙管理士の受験資格はないが、きっと頑張ってみんなの役に立つんだよ。」
「うん!がんばるー!」
「上手に作れたねー!」「がんばたよー!」
「ちっちゃ……!本当に700兆歳?」「わかんない!」
「見た目に騙されはしな……可愛いな。」「んー?」
……あんまりにも小さいからいくら偉くても強くは言えないのか。大人も大変だなあ……。
「おにーしゃんおねーしゃんも、がんばてねー!」
「……それではこのあたりで失礼いたします。」
「みんなばばーい!」「……皆さま、さようなら。」
こうしてボク達は部屋をあとにする。
「旧型さんはまた整備室に戻るのかい?」
「今のところは。でも、これからのことは分からないの。」
「まあゆっくり決めたらいいさ。」
「あら、私はこっちなの。また会いましょうね。」
「ああ、気をつけてね!」「おねーしゃん、ばばーい!」
「⬜︎⬜︎、キミにはもう一人謝るべきひとがいるよ。」
「あ!ニンゲンしゃん!おけがちてたのー。いたいいたいなのー。」「だから謝りに行かないとね。」「んー。」
……果たしてボク達はニンゲンくんに謝りに行けるのだろうか……!
To be continued…