「花畑」
今日は天気がいい。が特にやることもない。
やることといえば、2歳児(推定)の子守くらいだ。
……にしても、聞き分けのいい幼児でよかった。
「ねー」「……」「ねー!」「……」「ねーねー!」
「ねーー!!」「……」「ねーーー!!!」「なになに?」
「どあのむこう いきたい!」「外に出たいって?」
「おしょと!ボク、おとーしゃんのおへやからねー、ちょっとだけでたことあるのー!でもねー、ニンゲンしゃんのおへやのおしょと、なんにもちらなーい!」
「外は危ないぞ?車もいっぱいだし、おちびには猫すら危険かもだしなぁ……。それから、勝手に外に出したからってあんたの弟に叱られるかもしれない。それが一番面倒くさい……な。」
「じゃー、ひとりでいくもーん!」「だめダメ駄目だって!!」
「ボクだいじょーぶだもん!」「まだ子どもだから駄目だ!」
「……とりあえずあんたの弟に相談するから!」
『あぁ、話なら聞いていたよ!そのくらい想定内さ!少しならいいんじゃない?ただ……危険な目に遭わせたら、いくらキミでも容赦はできないなあ……。』
こいつ、いつの間に……?!
『ま、キミだったら大丈夫でしょ!ふたりとも、散歩にでも行っておいで!』
はぁ?!……ってもう通信切れてるし。
「わー!おしょと!おしょとー!」
仕方ない。とりあえずひとのいなさそうなところに行こうか。
「ほら、歩こう。」「おてて!」「?」「おてて、こーやって!」
「??」「ん!おてて、ちゅなぐー!」
手を繋ぎたかったのか。子どもらしいな。
人がほとんどいないと思って川の近くに来てみた。
「ねー!あれ、みてー!ふわふわいっぱい!」
えっ、ふわふわ?
「あぁ、たんぽぽの綿毛か。いっぱい生えてるな。」
「たんぽぽ?たんぽぽのおはなばたけなのー!」
花畑……ってほどでもないと思うけどな……。
「あっ、こら!食べちゃダメだぞ?!」
「たんぽぽ、たべない?」「少なくとも食べて美味しいもんじゃないよ?」「んー。」
「でも、さっきおっきいたんぽぽやしゃん、いたよ?」
「……??」「とっ、とにかくこのたんぽぽは食べちゃダメだからな!」「はーい!」
おちびは嬉しそうに綿毛のたんぽぽを摘んでいる。
「おとーとに、おみゃーげちたら、よろこぶねー!」
「たんぽぽをお土産に?」「んー!」
このきょうだいの頭とたんぽぽの綿毛……ちょっと似てるな。
ふとこの子の頭を撫でてみる。綿毛みたいだ。
「んー?」「綿毛によく似てると思って。」
「じゃー、もっとなでなで、ちてー!」「はいはい。」
聞き分けはいいが少々わがままだな。
……でも、それが可愛い……かも。
「わー!わたげたんぽぽ!いぱーいとれた!」
「もう帰るか?」「ん!でも、おっきいたんぽぽやしゃんいこー!」「……そうだな、行こうか。」
こうして自分達はたんぽぽの花畑を後にした。
そして「おっきいたんぽぽ屋さん」を自分は探す。
何だ?大きいたんぽぽって───「あー!」
「おっきいたんぽぽやしゃん!」
「……綿菓子だ。」綿菓子屋だったのか。
「いいにおーい!」「綿菓子、欲しい……よな。」「んー!」
自分は綿菓子を3つも買った。変に思われてないか心配だ。
「おっきいたんぽぽ、ちょーだい!」
「棒が付いてて危ないから、帰ってから食べような?」「ん。」
ちょっと不機嫌そうだ。でも「容赦できない」らしいから許してくれ。ちびと自分のためなんだ。
「ただいまー、でしゅ!」「ニンゲンしゃんもおかえりー、なの!」ただいまとお帰りを両方言うスタイルなのか。
……ただいま。お帰り。
「おとーとがいってた!てあらい、うがいだってー!」
「てあらい、うがい みしぇてー!」
「あー、うん。」まじまじと見られると恥ずかしい。
「てあらい、うがい!おぼえたー!」
「手洗いうがいのあとで綿菓子を食べようか。」
「わーい!おっきいたんぽぽ!」
「え?!おっきいたんぽぽ、たべていーの?!ちっちゃいの、だめーなのに!」「大きい方は食べても平気だよ。お菓子だからね。」「おっきいたんぽぽ、おかちなのー!」
「いただきまーちゅ!あ!なくなっちゃった!なんでー?」
「でもあまーい!おいちい!」
満足そうで何よりだ───「んぐ?!」
「おいちでちょー!」ちょ、そんなに綿菓子を口に突っ込むなよ!……確かに美味しいけど!
笑顔は可愛い!でもやっぱり子どもはよくわからん!
……もうちょい分かり合えるよう頑張るか。
そう思いながら自分は口に綿菓子を突っ込まれていた。
「前回までのあらすじ」(番外編)───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
まあ一方的にお願いしただけとはいえ!!!
とても嬉しいことだね!!!
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9/18/2024, 10:28:51 AM