うっかり入力内容が消えてしまったので書き直して投稿しちゃうよ!!!なんと!!!今回は初の試みとなる二つのお題を同時に盛り込んだ投稿だよ!!!これぞ一度に二度美味しい!!!
「優しくしないで」&「二人だけの秘密」(5/2、5/3)
私はなんの取り柄もない、ただの少女。
でも、昨日こんな私にも恋人ができた。
告白したのは私ではなく、彼の方だった。
はじめはとても驚いたけれど、「好きです」という言葉を噛み締める度にとても嬉しくなった。
私を好いてくれる人がいるなんて。
こんな素敵な人が私を好きだなんて。
いまだに信じられない。
ほっぺたをつねってみる。痛い。これは夢じゃないんだ!
そう思うと、ますます恋人ができた実感が湧いてドキドキしてしまった。
明日から、もっとおめかししようかな……?
次の日。いつもより早起きして、いつもはつけない赤のリボンで髪を結ぶ。……ちょっとはいい感じ、かな?
それから、彼のためにお弁当を作る。
そういえば、まだ好きな食べ物の話はしていない。
何が好きか、お話しないと。
何を作るか迷ったので、色んなものを挟んだサンドイッチを作ることにした。たまごにハムとレタス、それからいちごとホイップクリーム。色とりどりで可愛くできた。
……学校ではどんなふうに話しかけたらいいんだろう。
というかそもそもあまり接点がなかったのに、どうして彼は私が好きになったんだろう。
あんまり考えたって仕方ないよね。
身支度を整えて家を出る。隣の家の幼馴染は……まだ外にいない。いつもと同じで寝坊しているのかも。
玄関のチャイムを押す。彼女のお母さんが出てきた。
「おはよう、ごめんね〜あの子まだ寝てて……ほら、早く起きなさい!!」
その声を聞くや否や、階段を駆け降りる音が聞こえた。
「おはよう〜!もうちょっとで支度終わるから待ってて!」
黒髪のショートヘアがよく似合う、元気な女の子。
私はよく、彼女に救われてきた。……思い出したくもない、あの日も。
告白を受けて以来、私は彼に幸せだと思ってもらえるように尽くしてきた。
彼が会いたいと言えば夜の帷の中でも、欲しいと言えば無理矢理手を伸ばしてでも、希望を叶えてきた。
だってそれが、私の一番の幸せだったから。
「付き合っていることはみんなにも内緒にしといてくれ」
「お前、この俺が付き合ってやってんのに何でこうもろくでなしなんだよ」
何も言わずに殴られても、彼が満たされるなら、それでいい。
だってそれが、私の一番の「幸せ」だったから。
幸せ。仕合せ。しあわせ。シアワセ。
大丈夫。まだ大丈夫。
たまに見せてくれる優しさがあれば、それでいい。
でも、もしずっと優しくしてくれていたのなら、逆にずっと優しくしないでくれていたのなら、こんなに苦しまずに済むのに。
99%の罵倒と1%の愛情さえあれば、私は生きていける。そう思っていた。思っていたのに。
ある日私は見てしまった。
あの彼が、別の制服を着た明るい女の子と笑いながら歓楽街に入っていくところを。
きっと気のせい。そう言い聞かせた。
けれど、何度も何度も何度も何度も何度も、何度も彼女と彼が一緒にいるのを見た。
そしてやっと気づいた。
彼にとって、私は都合のいいカモでしかなかったのだと。恋人などではなかったのだと。
どうして。どうしてどうしてどうしてどうして?
どうして私を大切にしてくれないの?
どうして私の、小さくて狭くて暗い世界を、居場所を壊すの?
どうして、私に優しくしたの?
もう優しくしないで。
もう希望を持たせないで。
もうこれ以上、心を壊さないで。
お願い。おねがいだから。
その時の私はもうとっくに限界だった。
知らないうちに、窓辺に足をかけていた。
もう、終わりにしよう。
身体を重力に任せようとした時、電話が鳴った。
こんな時に一体誰が?
画面を見ると、幼馴染の名前が表示されていた。
「……はい。」
『ちょっとアンタ!なんてことしようとしてんのよ!!』
電話を通さなくても聞こえるほどの大声で言った。
「なんの話……?」
『とぼけてたって無駄よ!!アンタ……飛び降りようとしてた、でしょ……?!こっちからも見えてるんだから!!』
泣きそうな声で言われて気付いた。
あぁ、そうだった。私には彼しかいない、なんてことはない。もっと身近な人たちを、大切にしないと。
「……ごめんなさい。」
『アタシに謝ってどーすんのよ!!アタシより先に家族に謝ったらどう?!』
辛い。つらい。ツライ。ごめんなさい。
勝手に涙が出て止まらない。どうして、どうして?
『……何かあったみたい、ってことしか分かんないわ。とにかく、話してみなさいよ!』
促されるままに、私は今までの経緯を話した。
『へぇ……アンタ、今までそんな素振りすら見せてなかったわよね?ずっと一緒の幼馴染に隠し事なんて、随分と大胆不敵なことするじゃない!』
『それはそうと、もっと詳しい話を聞きたいから、明日うちに上がっていかない?こーゆー時こそ、アタシの出番だよ!』
なんだか嬉しそう。つられて私も気分が明るくなる。
相談してみてよかった。
安心したのか、いつの間にやら眠ってしまった。
翌日。あっという間に放課後が来て、私たちは一直線に彼女の家へと向かった。
……久しぶりだなぁ。彼女の部屋に上がるのは。何年振りだろう?
「なによ!アンタのために片付けたんだから、キレイになってるに決まってるでしょ!」彼女は自慢げに言う。
「おじゃまします。」
彼女の部屋には沢山の参考書やスポーツ選手のポスターがあった。彼女らしさで溢れていて、同じような部屋に住んでいるはずなのにすごく羨ましかった。
「にしてもアンタ、酷い目に遭ったわね!」
オレンジジュースをテーブルに置きながら話を始める。
私はなにも言えずにいた。
「というか、アンタはアイツのこと、知らなかったのね?あの男はアタシでも知ってるくらいサイテーで有名なヤツよ!恋愛慣れしてなさそうな女子を狙っては無理矢理言うこと聞かせてコントロールする、って!」
「そうなの……?」
「そうよ!それに、本命は別の学校にいるっていうのも有名よ。ついでに言えば、その子も彼に似たようなことをしてるらしいわ。……全く、似たもの同士ね!」
「だからアタシ考えたの!」
「何を?」
「あの男を懲らしめる方法よ!」
「懲らしめる……方法?」
「そう!ああいうヤツほど、やり返してこないと高を括っているから、いっぺん脅しておかないと!これ以上調子に乗らせないためにも、ね?」
「なるほど。私が頑張れば、もしかしたら傷つく他の女の子が減るかもしれない、ってことだよね?」
「そうよ!」
「でも、この計画の言い出しっぺはアタシだから、しっかりと協力させてもらうわよ!」
そう言いながら、彼女はノートをテーブルに広げた。
「……これ、ほんとにやるの……?」「ダメかしら?」
「いや、ここで頑張らないと!」「その意気よ!」
ノートにはこのような内容が書かれていた。
日時:未定 服装:全身黒に近い色、歩きやすい靴、フードを目深に被る
持ち物:「フェイクの」刃物←ココ重要!!
①夜の繁華街から出てきたターゲットを確保
②無言で山中まで歩かせる
※逃げようとしたら全力で脛を蹴飛ばす→実行犯(?)が被害者だけじゃないことを意識させる
③ナイフを突き出し、深くない落とし穴に落とす
④逃走
なるほど……と思ったけれど、本当にうまくいくのかな……?
「うまくいくかどうかは分かんない!けど、やってるうちに何か思いつくかもしれないわよ!」
「そうだよね。せっかく考えてくれたんだから、私も最善を尽くさないと。」
「そんなに気張らなくてもいいわよ!あ、でも……」
「このことは、二人だけの秘密、ね?」
「もちろん、そのつもりだよ。本当に……ありがとう。」
私たちは次の日も、また次の日も話し合いを重ねた。
その結果、実行は毎週土日と祝日、持ち物にロープとアタッシュケースが追加された。彼女曰く「雰囲気作りのため」らしい。
そして、漸く初めて実行に移す時がきた。
しかし、残念ながら今週は「ターゲット」が来ることがなかった。
そのあとの週末も、ずっとこの計画のために時間を作った。
なかなか現れなかったが、16回目の日曜日にその時がやってきた。
彼は例の「本命の彼女」と一緒に夜道を歩いていた。
嬉しそうに、楽しそうに。怒りで手が震える。
その様子を見かねてか、「大丈夫?」と幼馴染は話に聞いた。「ごめんね、大丈夫だよ。」
「あ、通り過ぎられる前にもう行こう!」
彼女に釣られて私も走り出した。
「そこのお前たち、止まれ。」
いつも聞いている話し声とは真逆の、抑揚のない低い声。同じように脅しにきたはずなのに、私まで怖くなってしまった。
「な、何だよお前!!殴られてぇのか?!」
無言でナイフをちらつかせる。
「さっさと歩け。」「は、はいぃ!」
本命の彼女には逃げられてしまったが、別に構わない。おそらくこちらとは面識がない上、フードをしっかり被っているから顔は見られていないはずだ。
暗い山道を歩く。何か出てきそうで怖い。
けれどもここを耐えないと、この先ずっと苦しいままかもしれないんだ。だから耐えないと。
かなり歩いて所で、彼女は止まった。
「座れ。」
「……ここに連れて来られた理由は、わかっているよな?」
「ヒイッ!な、なにも、わかりません!!」
「ふざけるな!!」彼を蹴り倒す。恐ろしいパワーだ。
「そ、そこまでしなくてもいいんじゃ……」
「わ か っ て い る よ な ?」
「ゴッ、ごめんなさい!色んな女の子をカモにしたこと……ですよね?!」
「わかっているんだったらなぜ彼女らに詫びないんだ?!」
彼女は彼の腹にナイフを思い切り突き立てる。
彼の絶叫が聞こえる。着ていたTシャツは赤く染まっていた。
え、なんで、どういうこと?
だってあのナイフは、ニセモノのはずじゃ……。
「痛いでしょう?でも、あなたは沢山の少女を苦しませてきた……。その傷は今も癒えることがないの。だからアタシが、罰を与えないと。」
彼女は無言でロープを彼の身体に巻いてどこかへと引き摺っていく。私もそれについて行った。
「ほら、見える?」
「満月と綺麗な海。最期に美しい景色が見られて良かったじゃない。」
そう言い終えると、彼女は彼の手首にアタッシュケースを巻き付けて崖から落とした。
……これは夢だ。夢に違いない。
だってこんな凄惨なことを彼女がするわけないから!
悪夢よ醒めろ。醒めて!醒めてよ!!
「あ、次はあなたの出番よ。」
呼吸が止まる。今度は何が起こるの?
「わたし、あなたのことがずっとずっと、ずーっと好きだったの。友達としての「好き」じゃなくて、恋する人に対する「好き」よ。これも二人だけの秘密、ね。」
「本当はこんなことをするつもりはなかったけれど、気が変わったの。」
「あなたとわたしで、この終末を飾りましょう。あの満月のように美しく、海のように深い終末を───」
気づいた時にはもう遅かった。抱きしめられながら、初めての口づけを奪われながら、真っ逆さまで海まで落ちていく。
海の冷たさを感じる頃には、私たちは泡沫となって消えた。
大丈夫、あなたはずっと、美しいまま酷い目に遭わずにいられるの。怖がらなくても、大丈夫よ。
だってそれが、私の一番の幸せだから。
「カラフル」
「ねーねー!!!これ!!!行こうよ!!!」
朝っぱらから大声を出すな!心臓に悪いだろ!
「まあまあ、そう怒らず!!!話を聞きたまえよ!!!」
自称マッドサイエンティストのこいつはこっちの心臓を気にすることなく話を続ける。
「ちょっと前から掲示板に貼ってあったこのチラシ!!!『写生大会』っていうのかい?!!ボク、すっごく興味があるのだが!!!」
写生大会?ああ、絵を描くあれか……。
悪いけどそこまで絵が得意じゃないんだ。
だから1人で行ってこいよ。
「なぜだい?!!一緒に描けばワクワクも喜びも2倍だというじゃないか!!!だから、ボクはキミと行くことに決めたのさ!!!いいでしょ?!!ね?!!」
「こういう機会がないとキミだって絵を描くタイミングがなくなっちゃうだろう?!!ついでにほかのニンゲンがどんなものを描き出すのか気になるんだ!!!せっかくだから、ね!!!」
……というか、何でそんなに美術に興味があるんだ?
マッドサイエンティストを名乗るくらいだから、もっと機械とか、そういうものに惹かれるものかと思っていたんだが。
「まあそっちに興味がないわけではないが!!!正直見飽きているんだよね!!!ボクとしてはサイエンスの延長で、芸術を通してニンゲンがモノをどう捉えているのかを知りたいのさ!!!」
……なるほど。わかったような、わからなかったような。
「それじゃあ出発〜!!!あ、でもその前に」
「純喫茶でモーニングを食べよう!!!」
純喫茶?そんな店があるのか?
「改めて思ったが、キミはニンゲンのくせにこの町のことを全っっっっっ然知らないよね!!!……川の向こうに古い喫茶店があるのさ!そこで朝食をとるよ!!!」
……知らなくて 悪 か っ た な 。
「そんなに怒らなくても〜……。だって知らないのなら学べばいいだけの話だろう?!!さあ、写生大会がてら、この町を色々見て回ろう!!!」
楽しそうにどこからかスケッチブックを取り出す。
……スケッチブックなんてうちにあっただろうか?
こうして、自分たちは町巡りを始めた。
まずは川の向こうの純喫茶。こいつ、川の向こうと簡単に言ったが歩くとそこそこ遠いんだぞ。
「たまには運動も必要だろう?!!いいじゃないか!!!……あ!!!これ!!!ここを描いたらいいんじゃない?!!」
そこには公園があった。どこにでもあるような、ありふれた公園。ブランコと滑り台と砂場、あと犬……?の顔を模った象形遊具。どれも色褪せて年季の入っているものばかりだ。
まだ朝の早い時間だからかひとはいないが、最近遊んだ子供が描いたものであろう地べたにあるチョークの落書きや、地域のボランティア団体が手入れをしている花壇や桜の木から、彼らの息遣いが伝わる。
「ねーねー!!!見たまえよ!!!」
振り返ると犬の遊具の上にあいつがいた。
そこは登る場所じゃないぞ!危ないから降りろ!
「ボクを誰だと思っているんだい?!!ボクは頑丈なマッドサイエンティストだぞ!!!多少の衝撃なぞボクには通用しない!!!ハッハッハ───??!」
笑いながら足を滑らせて自分の足元まで転がってきた。
言わんこっちゃない。
「平気平気!!!さて!!!絵を描くよ!!!」
……その勢いで絵を描くのか……。
少し腹は減っているものの、とりあえず手を動かす。
鉛筆でスケッチをとり、上に色をのせていく。
……とりあえずこんなもんか。
「お、描けたのかい?!!へぇ〜……」
何かを考えるそぶりを見せる。
……そんなに変なものを描いたつもりはないが。
「色んなニンゲンがたくさん描かれているね!!!
だが……ここにボク達以外はいなかったはずだよ???」
まあ確かに、厳密にはこういうのを「写生」とは言わないんだが、本来公園っていうのはひとびとが、彼らの思い出が集まる場所だから、練習のついでにそれを絵に反映しようと思って。
「なるほど……!芸術というのは見たままを写すものではないんだね!!!新たな知見を得たよ!!!」
そこまで大袈裟なものじゃないぞ。
……で、あんたはどんな絵を描いたんだ?
「ボクの絵に興味があるのかい???」
まあ、一応……?見せたくないんだったら見せなくてもいいが。
渋々見せてきたのは絵……というよりも写真に近い画像だった。今この瞬間を切り取ったかのような、とても精巧な絵。
同じ道具を使って描いたとは思えないクオリティだ。
「すごいな……。」思わず声に出る。
これがまさしく「写生」だな。
「いやあそれほどでも……あるかな!!!」
自分たちは公園を後にし、喫茶店へと向かった。
歩いたり絵を描いたりしたら流石に腹が減った。
喫茶店のモーニングでは何を食べようか。
……というかそもそもこいつは店で食べるつもりなのか?
忘れてしまいそうだがこの自称マッドサイエンティストは自分以外の生き物から知覚できないらしいから、店内のひとびとも同様こいつを認識できない。
「サンドイッチならテイクアウトに対応しているそうだよ!!!とりあえずボクはキミが食事をとるのを見ていることにするよ!!!」
……喫茶店に来た意味はあったのだろうか?まあいいか。
狭いマホガニー色の店内には、アンティークのランプやガラスの灰皿、花瓶に入った白百合が所狭しと置かれている。
正直こういう喫茶店にきたのは初めてで勝手がよくわかっていないが、なんだか誰かの思い出の中に入り込んだかのような、不思議な感覚になる。
自分はコーヒーとホットケーキを頼むことにした。
しばらくすると、店主らしきお爺さんがコーヒーとホットケーキを置いてそそくさと奥に戻っていった。
……こういう昔ながらというか、今ほどきっちりとマニュアル化やその徹底がなされていない接客を見ると懐かしい気持ちになる。そんな経験が子供の頃あったわけでもないのに。
そんなことを考えながらホットケーキに手をつける。
いただきます。
……バターが効いていて美味しい。そして生地もふかふかだ。
途中でメープルシロップをかける。
あぁ、思い描くホットケーキの味だ。
などと思っているうちにいつのまにか残りをとられていた。
「いや〜、キミがあんまりにも美味しそうに食べるからつい……!!あ、そうだ!!!このモーニングの絵も描いたらいいんじゃないかな!!!」
話題を見事にすり替えられた。
食べ終えて会計を終わらせ、河原でさっき食べたばかりのホットケーキの絵を描く。
「思っていたのだが!!!」
急になんだよ?
「キミ、別に絵が上手くないってことないと思うよ!!!」
「だってさ!!!さっきもそうだったが絵にニンゲンの暖かみというか、心模様がよく表れているというか!!!あと単純に絵心もある気がするよねー!!!」
絵心……?そうなのか?
「えー?!!自覚がないのかい?!!勿体無いよ!!!」
おだてられながら色々な場所の絵を描く。
川で水鳥が泳いでいる様子。山の麓の草花。
賑わう商店街。色とりどりの屋根が並ぶ住宅地。
ステンドグラスでできた街灯。寂れた神社。
気が付けばもう夕方になっていた。
もうそろそろ写生大会もお開きか。
そう思って立ち上がった時、ふと思った。
……そういえば、ホットケーキに気を取られて参加の申し込みをしていなかったな。
「あ……ごめん……。」
申し込みをしなかった自分も自分だよな……。
まぁ、いいか。
「にしても、この町はすごくカラフルだよね!!!とってもいい場所じゃないか!!!ボクは感動したよ!!!」
「あとね!!!家に帰ったら、ボクの絵を描いてよ!!!美味しいカレーを作るからさ!!!」
帰ってからも絵を描くのか……。
ちゃんと美味いの作ってくれよ。
それじゃ、このままカレーの材料を買いに行くとするか。
こうして自分たちの写生大会は幕を閉じた。
「楽園」
妙に眠たい昼下がり。駄菓子をつまみながら課されたことをなんとかこなしている。
そこに自称マッドサイエンティストのあいつが話しかけてきた。桜餅の催促か?
「桜餅も食べたいけどさ!!!キミに聞きたいことがあってね!!!本来ならもっと上司とかに聞くべきことなんだけど、こういうのはキミに聞いた方がいい気がしたんだよ!!!」
ふーん。というか、あんたにも上司がいるのか……?結構意外だな。で、聞きたいことっていうのはなんなんだ?
「ボクが決めていいものかどうかはまだわからないんだが、宇宙を吸収した例の彼女の処遇をどうしたものか、と思ってね!!!」
なるほど……。本当に自分が答えてしまっていいのか?
「うーむ。確かにそれはそうなんだけど、ボクとしては感情を持ったニンゲンのキミに、彼女がどんな気持ちだったのかを改めて一緒に考えて欲しいんだ!」
「ボクが今までに取得したデータによると、彼女はおそらくかなり……『歳をとった』というか、とうに現役から退いた宇宙管理士だった存在なのだよ。」
「それから、なんらかの理由で悲しみ、怒りを持ってこの宇宙に入り込んだ!!!そして構造色の髪の彼に出会ってどういうわけか宇宙ごとエネルギーを吸収した!!!」
「ボクからしたらたまったもんじゃないよ!!!……まあそれはともかく、これ以上彼女にエネルギーを吸収されないためにボクらは彼女の作ったあの空間を事実上凍結状態にしたのさ!!!」
「そうしたら彼女は怒り狂ってボクに最大限の怨念を突っ込んだんだよ!!!……考えてもみれば、ボクは彼女にとっての『楽園』を奪ってしまったわけだからね。」
「仕方ないっちゃ仕方ない……のかなぁ?!!ボクとしては納得いかないけどね!!!」
「まあとにかく、これで話の大筋はわかったかい?!!」
なんとなくはわかった。
「それはよかった!!!……だが、ボクからすれば妙な点が幾つかあるんだよ!!!」
妙な点?まあそもそも自分としては規模が大きすぎて最初から理解の範疇を超えているから何とも言えないが……。
「まずひとつ目!!!そもそも彼女が宇宙にいること!!!お年を召した宇宙管理士は『眠り』につくはず……なのに彼女は目を覚まして宇宙を吸収なんてことさえしてくれている!!!」
「そしてふたつ目!!!彼女が力を残したままでいること!!!役目を果たした宇宙管理士は権限を封じられるはずなのになぜか彼女が空間を作ったりエネルギーを吸収したり出来ていることだ!!!」
「みっつ目は!!!『眠り』についた宇宙管理士はあるべき場所に安置されているはずなのに!!!なぜか宇宙にいる!!!これは他の管理士たちとみーーーーっちり話をつけないといけない案件だよ……!!!」
「それからよっつ目!!!現行の制度上、ちゃんと公認宇宙管理士の資格を取らなければ、また許可を得なければ宇宙ならびに特殊空間の管理はできない!!!にもかかわらず彼女は好き勝手やっている!!!」
「キミには何にも分からなかったかもしれないが!!!とにかく異常事態が起こりまくっている……ってことさ!!!」
なるほど……。こういう事情を加味して、未知の存在こと元宇宙管理士?の少女をどう扱うかを考えなければならないんだな?
「話が早いね!!!キミならどうする?!!」
そうだな……。自分なら……って言われてもわからない。
強いていうなら、役目を終えた宇宙管理士を管理するところに話を聞くくらいのことしか思いつかない。
「その先の話をしたいのに〜!!!」
そんなこと言われても困る!
何せ色々と入り組んでいそうな問題だから。
「……わかったよ!とりあえず、アーカイブ担当の管理士の所に向かおう!!!もちろん、キミも一緒にね!!!」
全く……。さらに厄介なことになりそうだ。
゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚
なんと!!なんとなんと!!!
「読みたい❤︎」の数が1000を突破したよ!!!
すごいね!!!
読んでくださる皆様!!!読みたいと思ってくださる皆様!!!
本当にありがとうございます!!!
あまりこういうことは言わない方がいいのかもしれませんが!!!喜びと感謝を共有すべく書かせていただきました!!!
改めまして本当にありがとうございます!!!
これからもどうぞよろしくお願いします!!!
「風に乗って」
わたしは 風を 運ぶ 妖精。
きょうも どこかに だれかに 風を 届けます。
安らぐ心に そよ風を、
火照る心に 涼風を。
冷えた野原に 春風を、
日照りの砂に 雨風を。
ためらいには 追い風を、
かなしみには 光風を。
世界は、想いは、全ては。
風に乗って廻るのです。
ほら、花びらも、朝露も、
あなたの想いも。
投稿が遅れてしまったよ!!!一つの投稿に二つの文章があるなんてね!!!これが「一度に二度おいしい」ってやつだね!!!違うか!!!
4/27 「生きる意味」
今日はゴールデンウィークの始まり。にもかかわらず相変わらずやることもしたいこともない。仕方がないからテレビでもつけようか。
「せっかくの大型連休だというのにキミは旅行に行ったり新しいことを始めたりしないのかい?!!まあキミらしいっちゃキミらしいか!!!で、朝ごはんは何が食べたいんだい?!!」
……それじゃあ、ゴールデンウィークらしいものが食べたい。
「ゴールデンウィークらしいもの?!!またまた難解なリクエストだねぇ!!!わかったよ!!!ボクはすんばらしいマッドサイエンティストだからね!!!どんなリクエストにだってお応えしちゃうよ!!!」
そう言ってあいつは冷蔵庫を漁る。何を作るつもりなんだろうか。
「何ができるかは作り終わってからのお楽しみさ!!!できるまでちょっと待っててね!!!」
了解。待っている間は手持ち無沙汰なのでつけたテレビに目をやる。朝はいつもと変わらずバラエティーとワイドショーをごっちゃ混ぜにしたような番組が放送されている。
その中のコーナーで、あなたの「生きる意味」はなんですか?という町中インタビューが行われていた。「推し活」「旅行」「仕事」「勉強」「家族」……様々な答えがあった。
……自分にはそんなものはない。「生きる意味」があるひとが羨ましいと思う気持ちと、そんなものを持ったところで意味なんてないだろうという考えが混ざる。
自分の生きる意味って、いったい何だろうな。
「なーに考えているんだい???生きる意味???そんなことを考えたって無駄だよ!!!」
「だいたい、キミたちニンゲンは宇宙の副産物に過ぎないんだから……いや、言い方が悪すぎるか……。ボクはボクで宇宙を管理するという目的で存在するんだから、ある意味ボクかて宇宙の副産物みたいなものだもんね!!!」
「まあともかくボクには「宇宙を管理する」という絶対的な使命があるが、宇宙管理士のボクとしてはキミたちのような生き物には平穏に生きてほしいんだよ!!!」
「だから、そんな生きる意味なんて難しいことを考えずに、おいしい食べ物のこととか、綺麗な景色のこととか、そういう他愛もない小さな幸せのことを考えているだけで、それだけでいいんだよ!!!」
小さな幸せ、か。幸せって何なんだろうな。自分にはあまり分からない。
「何だって?!!このボクがそばにいるというのに、幸せじゃないというのかい?!!確かに「幸せ」の定義は難しいものだが、もっと普遍的なものを愛すれば、きっとキミは今よりもずーっと満たされるはずだよ!!!」
「例えば、今咲いている花々や入道雲、紅葉に雪!!!それからサンドイッチに桜餅!!!今まで出会ってきたいろいろなものの数々にもっと深く触れたらいいのさ!!!」
「そうすればきっと、キミは幸せになれるはずだ!!!」
「さて!!!ボク特製のフレンチトーストが出来上がったよ!!!ちょっとおしゃれなカフェに出かけた気分になれると思ってね!!!さぁ、出来立てを召し上がりたまえよ!!!」
……これも、小さな幸せだよな。こうやって誰かとおいしいものを食べられるのは、照れくさいけどすごく嬉しいことだ。
……ありがとう。美味しいよ。
「どうだい?!!おいしいだろう?!!作り甲斐があるってもんだよ!!!」
「さて、せっかくの休みだ!!!ツツジを見に行こうじゃないか!!!」
そうだな。いい天気だから、少しくらいは出かけようか。
腹を満たした後、自分たちは春の光に照らされながら花を見に出かけた。
。oOo。.:*:.。oOo。.:*:.。oOo。.:*:.。oOo。.:*:.。oOo。.:*:.。oOo。.:*:.
4/28 「刹那」
ここは戦場だ。国と国とのいがみ合いに巻き込まれて俺たちは戦っている。今日も敵と味方がたくさん散った。
本当はこんなことをしたくない。普通に家で畑仕事をして、時々旨いものを食べて、家族や友達と他愛もない話をして、そんな風に暮らしたいだけなのにな。
どうして、ただの国民である俺がこんなことをしなくてはいけないんだ?
……こんなことを考えたって無駄だ。ここでできることはただ一つ───敵国の人間を殲滅することのみ。
自分の平和のために、国の平和のために。ただ俺は戦い続けるんだ。
たとえこれが間違ったことだったとしても。
ただ、戦い続けるだけだ。
……はぁ、今日も疲れた。どうして何の罪もない人間の命を奪わなくてはならないのだろうか。どうして俺まで命の危機に毎日晒されなくてはならないのだろうか。
今日も疲弊したまま寝床に着く。
次の日、驚くべきニュースが飛び込んできた。
なんでも、二国間で話し合いによって問題が解決したらしい。
俺は安心した。もうこれ以上、傷つかずに、傷つけずに故郷へ帰ることが出来る。
もうこれ以上、凄惨な戦場を見なくて済む。
平和に、平穏に暮らせるんだ。
その刹那、駐屯地に火が放たれた。
火はあっという間に広がり、俺もあっという間に器官が焼かれた。
息ができない。苦しい。
なぜ、なぜなんだ。
俺はただ、平和を望んだだけなのに。
……灰になって、土に還ることしかできないのか。
家族のみんな、友達、恋人に、また会いたかったな。
薄れゆく意識の中で、ぼんやりとそんなことを考えることしかできなかった。