月夜

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8/2/2024, 12:06:24 PM

清潔そうな白い部屋
薬品の匂い
それでも不潔に感じられるのは、
病人特有の匂いのせいだろうか

塩分のカットされた、
とろみ剤の混ざった病院食の匂い
おじいちゃんに会いに来たであろう孫の笑い声と、
しーっと口に指を当てる母親
チカチカと光る音の聞こえないテレビ
カーテンの隙間から見えるベッド
スライドドアの静かな開閉音
廊下の向こうからは、
エレベーターの呼出音

あ、僕の来客の足音がする

『病室』

8/1/2024, 2:12:27 PM

あのね、
明日ね、
もし晴れたらね、
公園に行ってね、
ブランコと、すべり台と、タイヤに乗るやつもやってね、
木の下でお弁当を食べてね、
ちょっとだけ眠ってね、
4時までに白鳥号に乗るんだよ!
わかったぁ?

うーん、そうだね、うーん…。

テレビに映る明日の天気は、
降水確率10パーセント
猛暑
最高気温は35℃
熱中症警戒アラート発令中だ。


『明日、もし晴れたら』

7/31/2024, 11:51:20 AM

ほら、そうやって。
心地いい言葉でわたしを騙さないで。

いつまでもそばに居るだとか、
嫌いになることはないだとか、
わたしといる時がいちばん楽しいだとか。

嘘ばっかり、その場の気分で発せられた言葉たち。

わかってた。わかってた。わかってたのに。
わたしは時々、誰かと”二人”でいたくなる。

こんな気持ちになるのなら、
さみしい気持ちに、虚しい気持ちに、
深く、深く、ずぶずぶと、
沈みこんでしまうくらいなら、


───最初から、ひとりでいさせてくれたらよかったのに。


『だから、一人でいたい。』

1/14/2024, 12:31:04 PM

花になって、儚く美しく生きたい
鳥になって、囚われずに空を飛びたい
雲になって、自由に姿を変えたい
星になって、誰かの心の拠り所になりたい

わたしは、どうしようもないほど、なんにも持っていない

綺麗な心も、身体も、生きる糧も、持っていない
君に何かを与えられるものなんてない
君から何かもらう資格なんてない

どうして君は、わたしにかまうの。
どうして君は、わたしの傍にいようとするの。
どうして君は、わたしの為に泣いてくれるというの。
どうしてわたしは、君と一緒だと心地いいだなんて思ってしまうの。


『どうして』

12/12/2023, 5:20:29 AM

「またね」

そう言ったのに。

いつものように、話していた。
今日はどんな楽しい話をしようか?
少年みたいな声で、わははと笑う。
つられて私も笑う。
けれど今日はなんだか、センチメンタルな彼の言葉が心をざわつかせる。
どうしたの?と聞いたのに、ごめんねと言われた。
それでも彼は「またね」って、
そう言ったのに。

SNSの投稿は、楽しいものだけ残している。
少しの毒は、次の日には消す。歌と、ご飯と猫だけのアルバム。
今日も昨日の毒を消していく。
今日はご飯と猫も消してみる。
明日もきっと毒を吐く。
美味しいご飯も載せるかもしれない。
次の日には美味しいご飯しか残さない。
みんな気づかない。


今日も私はだれかと笑っている。




『何でもないフリ』

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