春爛漫とは、『春の花が咲き乱れ、光に満ちた様子を表す言葉』である。
春爛漫と聞けば、淡く色付いた桜の木々を想像する人が多いだろう。
梅「…自分達も咲き乱れてるんですけどッ!!」
菜の花「いや、梅さんいいほうじゃないッスか。平安時代とかめっちゃ歌詠まれてたんでしょ?」
藤「確かに春と言えば桜みたいなとこあるなぁ。その他の花も頑張ってるんやけどねぇ」
チューリップ「ジブンもガンバって咲いてマス!」
梅「チューリップくんカラフルでいいよね。日本系の花にはない鮮やかな感じアレ好きだわ〜」
チューリップ「アリガトーゴザイマス!ガーデニング力入れてます!初心者にもオススメデス!」
蒲公英「遅れましたぁ〜」
菜の花「あ、チッス!いいよいいよ、綿毛飛ばすから遅れるって言ってたもんね〜」
藤「二人は相変わらず仲ええねぇ」
菜の花「両方天ぷらが美味しいんで!」
蒲公英「意外と知られてないんですよねぇ…食用にもいけるんですけどぉ…」
藤「そうなん?今度ウチも天ぷら食べてみたいわ」
蒲公英「ぜひぜひ〜!あ、春乃七草堂さんの蒲公英の天ぷらが美味しいですよぉ」
梅「自分酸っぱいから子供から疎まれがちなんだよなぁ。おにぎりでは王道だけどさ」
チューリップ「梅干し大好きデス!熱中症タイサク!」
梅「お前分かってんな…ホント大好き…」
桜「お待たせしました。春の主役さん来ましたよ」
ツツジ「お弁当持ってきました!」
桜「ツツジちゃん特製躑躅酒です」
チューリップ「桜さん、これなんて読むんデスカ?」
桜「つつじと読みます。ツツジちゃんの名前を漢字で書くとこうなるんですよ。この躑躅酒は甘くてとても美味ですよ」
ツツジ「よく漢字難しいって言われます…」
チューリップ「そんなことナイデス!カッコイイデース!クールジャパン!サムライ!」
ツツジ「チューリップさん…!私なんて昔から子供達に吸われてばっかりだった私をそんな好きだなんて…!」
チューリップ「そこまで言ってないデス」
桜「ほら、そろそろ開けますよ。乾杯しましょう。早くお酒が飲みたくて堪らないんです」
梅「じゃ、カンパーイ!!」
桜「乾杯〜」
菜の花「やっぱ菜の花を料理するなら天ぷらしかない気がするんスよ」
蒲公英「そうですかぁ?おひたしも好きですよぉ」
藤「相変わらずツツジちゃんのお弁当は美味しいなぁ。流石やわ」
ツツジ「そんな、藤さんまで私のことを…!?私にはチューリップさんがいるのに…!」
チューリップ「全部気のせいデス!でもツツジさん料理上手デス!」
春爛漫とは、『春の花が咲き乱れ、光に満ちた様子を表す言葉』である。
…が、花々が集まって美味しい食べ物を食べて酒を飲むこの様も、春爛漫と言ってもいいのかもしれない。
テーマ『春爛漫』
「絵、上手いなぁ!いつか**みたいな絵かけるように頑張るわぁ」
「うん」
そこには美しい桜並木が描かれていた。美術部の同級生だったソイツは絵のコンクール?かなんかに毎回選ばれるような所謂天才で、今回も何か賞とか貰うんだろう。
「桜を描くのって時間かかりそうだから大変じゃない?手とか大丈夫?」
「好きなもの書いてるだけだから」
「流石やな。志望校行けるんやったっけ?」
「うん!なんか推薦とかでさ、大きい美術の学校行ける。ようやく描きたいものが書けるんだ」
「めっっっ…ちゃ良かったやん!!おめでとう!!」
「うわっ、飛びつかないでよ。でもありがとう」
ようやく描きたいものが描けると喜んでいるコイツが喜んでいて、自分も同じような気持ちになった。コイツは絵の才能があると思う。というかある。
物心ついた頃から絵を描くのが好きなんだな、と思っていたし、コイツと話すようになって気付いたら自分も絵を描くのが好きになっていた。
美しい絵を描く才能だけではなく、絵を他人に好きにさせる才能もあるのかな。
「君も大学行っても頑張ってね」
「あはは、ありがと〜」
「将来有名な画家になる僕から君にプレゼントするよ、この桜の絵」
「え?くれんの?めっちゃ綺麗やん」
「いいよ、こんなの適当に描いたヤツだし」
「うわ、ありがとー!嬉しい!」
そうワイワイ騒いでいたら、あっという間に部活は終わってしまった。アイツとは帰る方向が違うから学校を出たら直ぐに1人になってしまう。ちょっと寂しいけど喋り疲れた口にはちょうど良かった。
家に帰ってから桜の絵を再び眺める。
桜並木は晴天の下、薄く優しい色をした桜の花が己の花弁を削り道を彩っていた。まるでこれから往く華々しい未来を暗示するように。桜並木の奥の方は良く見えないがきっと更に美しい景色があると思う。
目頭が熱くなる。
「適当か」
布団に顔を埋め、次に来る言葉を抑えようとした。
「天才なんて嫌いだ」
テーマ『七色』
テーマ「誰も知らない秘密」
アタシには、とある事実を抱えている。
それは既婚者を好きになってしまったということ。
その人は私の頭を撫でてくれるし、抱きしめてくれる。いつも一緒にいるその人が、アタシは大好きだった。
でも大好きになった時には既に遅くて、彼は指輪をずっと、左手の薬指に結婚指輪をつけていた。銀色にキラキラしててすぐ飲み込めそう。
いっその事飲み込んで隠してやろうかしら。さっさと消化してどこかへ消えてしまえばいいのに。
ワガママ言ったところでそんなの不可能だって分かってるからいいの。良くないけどね。
あの人には、アタシより愛している人がいる。
その人は、いつも見上げることしかできないアタシとは違って、同じ目線に立って、あの人と愛し合える、そんな人。
わざと突っついて目線をこっちに持ってこさせるの。
わざと甘えるみたいに声をかけてアタシに意識を向けさせるの。
わざと足元に擦り寄って、上目遣いで鳴くの。
わざとお布団の上に、あの人の上に乗って、愛してると言うの。
「ニャア」
朝、目を覚ますと双子が目の前にいる。お互い喋りたくないから洗面台で身支度を終えるまで喋らないと約束している。
のそのそと洗面台で顔を洗って歯を磨いて、お互いがお互いを認識してからようやく僕達は始まる。
「おはよう…まだ眠いよぉ、姉さん」
「私も、眠いけど…」
「今日お休みだし二度寝しちゃおう?ね?」
「兄さんったら仕方ないんだから。特別よ、でも朝ごはん食べてからね」
「わーい!姉さんの朝ごはん大好きなんだ」
「はいはい」
そんな呑気に過ごす僕達の生活はきっと普通じゃない。勉強とか…たまにテレビで聞く「義務」というもの全てが果たされていない。でも僕達はそれを構わないって思ってる。だってお互いがいればなんとかなるって知ってるから。
「姉さん、二度寝!はーやーく!」
「食べるのが早いんだから…」
「おやすみのちゅーして」
「うん」
ちゅーというより、触れているだけ。そして僕がちゅーをやり返すというのが僕達が眠るまでの儀式のようなもの。
「兄さん」
「どうしたの?」
「だーいすき!」
「僕ももっともーっと好き」
「えへへ…」
これが僕達の普通であり、日常であった。でも、それはある日突然奪われた。
「あのね、」
「どうしたの?」
すごく嫌な予感はした。
「姉さんね、兄さんが1番大好きなのに、姉さんはダメな姉さんだから、男の子を叩いちゃった…」
聞くに、姉さんはその男の子にときめいてしまったらしい。なんて事だ…
「どうしよう…兄さん…」
「大丈夫、大丈夫だよ。そいつは今どこなの?」
「知らない。どうしようか、また女の子みたいにする?」
「うん!名案だね。何使う?」
「糸ノコギリ!父さんもこれでやったもん。兄さんは何使うの?」
「うーん…ハサミ!まだ小さいからその方が切りやすいかと思って」
「縄とタオルは?」
「持ったよ。じゃあ行こっか!」
「あ!待って、大事なこと忘れてる」
「ん?」
「行ってきますのちゅーだよ!」
「ごめんね、姉さん」
いつも通り触れるだけでも、いつもより少し強めのちゅーをしてから男の子の家に向かった。
いつもと雰囲気を変えた髪型。今日は、なにか特別な日だ。中学生になって初めて友達の家に遊びに行く。
あーもーなんてグチグチ言いながら己の癖毛に腹を立てている。簡単だと銘打たれたヘアアレンジを試してみるも、くせ毛が邪魔をして全く上手くいかない。
「ねぇママ、上手くできてるー?!」
「知らん」
昨日から練習しとけばよかった。電車を使って遊ぶのも初めてなもので、全く不安で不安で仕方がない。昨日は服しか決めなかったし、服だってこれでいいのかずっと不安。大丈夫だよね?芋っぽくない?
「行ってきます」
「いってらっしゃーい」
妹の小学生らしい挨拶を背中に感じて、駅まで向かった。駅までなんで30分もかかるんだよ。走りたくても髪が崩れたらとか不安で走れないし…はぁ…大丈夫だよね?どうしよう、電車の進行方向間違えたらヤバい。詰む。
ガタンガタンと独特なリズムを鳴らしながら止まった電車を見て、よし、方向は間違っていないとひとつ安心した。
そして、友達の家に1番近いらしい駅まで来て、改札を抜けると友達を見つけた。
「あ、こっちこっち」
「合ってた〜!」
「急にどうしたん?」
「マジ不安やった」
………。
「今日マジ楽しかったわ」
「自分も!んじゃまたね」
「もち、ばいばーい」
帰りはちゃんと帰れるだろう。あー、楽しかった。また友達と遊ぼう。