朝、目を覚ますと双子が目の前にいる。お互い喋りたくないから洗面台で身支度を終えるまで喋らないと約束している。
のそのそと洗面台で顔を洗って歯を磨いて、お互いがお互いを認識してからようやく僕達は始まる。
「おはよう…まだ眠いよぉ、姉さん」
「私も、眠いけど…」
「今日お休みだし二度寝しちゃおう?ね?」
「兄さんったら仕方ないんだから。特別よ、でも朝ごはん食べてからね」
「わーい!姉さんの朝ごはん大好きなんだ」
「はいはい」
そんな呑気に過ごす僕達の生活はきっと普通じゃない。勉強とか…たまにテレビで聞く「義務」というもの全てが果たされていない。でも僕達はそれを構わないって思ってる。だってお互いがいればなんとかなるって知ってるから。
「姉さん、二度寝!はーやーく!」
「食べるのが早いんだから…」
「おやすみのちゅーして」
「うん」
ちゅーというより、触れているだけ。そして僕がちゅーをやり返すというのが僕達が眠るまでの儀式のようなもの。
「兄さん」
「どうしたの?」
「だーいすき!」
「僕ももっともーっと好き」
「えへへ…」
これが僕達の普通であり、日常であった。でも、それはある日突然奪われた。
「あのね、」
「どうしたの?」
すごく嫌な予感はした。
「姉さんね、兄さんが1番大好きなのに、姉さんはダメな姉さんだから、男の子を叩いちゃった…」
聞くに、姉さんはその男の子にときめいてしまったらしい。なんて事だ…
「どうしよう…兄さん…」
「大丈夫、大丈夫だよ。そいつは今どこなの?」
「知らない。どうしようか、また女の子みたいにする?」
「うん!名案だね。何使う?」
「糸ノコギリ!父さんもこれでやったもん。兄さんは何使うの?」
「うーん…ハサミ!まだ小さいからその方が切りやすいかと思って」
「縄とタオルは?」
「持ったよ。じゃあ行こっか!」
「あ!待って、大事なこと忘れてる」
「ん?」
「行ってきますのちゅーだよ!」
「ごめんね、姉さん」
いつも通り触れるだけでも、いつもより少し強めのちゅーをしてから男の子の家に向かった。
11/21/2024, 11:40:58 AM