「絵、上手いなぁ!いつか**みたいな絵かけるように頑張るわぁ」
「うん」
そこには美しい桜並木が描かれていた。美術部の同級生だったソイツは絵のコンクール?かなんかに毎回選ばれるような所謂天才で、今回も何か賞とか貰うんだろう。
「桜を描くのって時間かかりそうだから大変じゃない?手とか大丈夫?」
「好きなもの書いてるだけだから」
「流石やな。志望校行けるんやったっけ?」
「うん!なんか推薦とかでさ、大きい美術の学校行ける。ようやく描きたいものが書けるんだ」
「めっっっ…ちゃ良かったやん!!おめでとう!!」
「うわっ、飛びつかないでよ。でもありがとう」
ようやく描きたいものが描けると喜んでいるコイツが喜んでいて、自分も同じような気持ちになった。コイツは絵の才能があると思う。というかある。
物心ついた頃から絵を描くのが好きなんだな、と思っていたし、コイツと話すようになって気付いたら自分も絵を描くのが好きになっていた。
美しい絵を描く才能だけではなく、絵を他人に好きにさせる才能もあるのかな。
「君も大学行っても頑張ってね」
「あはは、ありがと〜」
「将来有名な画家になる僕から君にプレゼントするよ、この桜の絵」
「え?くれんの?めっちゃ綺麗やん」
「いいよ、こんなの適当に描いたヤツだし」
「うわ、ありがとー!嬉しい!」
そうワイワイ騒いでいたら、あっという間に部活は終わってしまった。アイツとは帰る方向が違うから学校を出たら直ぐに1人になってしまう。ちょっと寂しいけど喋り疲れた口にはちょうど良かった。
家に帰ってから桜の絵を再び眺める。
桜並木は晴天の下、薄く優しい色をした桜の花が己の花弁を削り道を彩っていた。まるでこれから往く華々しい未来を暗示するように。桜並木の奥の方は良く見えないがきっと更に美しい景色があると思う。
目頭が熱くなる。
「適当か」
布団に顔を埋め、次に来る言葉を抑えようとした。
「天才なんて嫌いだ」
テーマ『七色』
3/26/2025, 2:21:45 PM