秋風
夏は海水浴、花火大会、BBQ、いろいろ楽しいことが1杯だった。少し涼しくなって来た頃吹く秋の風。これもなかなか気持ちのいいものだ。いつも、これくらいの季節だといいなぁと思ってしまう。
でも秋の風、秋風が吹く頃、もし、あなたが、港に小さな舟を見つけたら気をつけたほうがいい。
なぜって?
その小舟の終着地は賽の河原だからね。
ヒヒヒ。
小舟が見えて、瞬きをしたら、次に目を開けた時には小舟の中。
ギィーコ、ギィーコ。と赤鬼か青鬼が舵を漕いでいるはずさ。
ギィーコ。ギィーコ。
僕?
僕は小舟の船長かな。
秋風が吹く季節に僕に会わないこと祈っているよ。
ヒヒヒ。
予感
勘も良くないし、もちろん霊感なんてないけれど、ちょっとだけ不思議なことがある。
高校生の頃から電車通学している。これから、満員電車に乗るのかと毎朝憂鬱でしかない。でも時々、本当に時々、「今日は座れそう」と思うことがあった。始発でもないし、私が乗る頃には席なんて空いていることはない。どう考えても座るのは無理だ。
〇〇線の電車が到着します。危ないですから黄色い線の内側お下がりください。
やっぱり満員。人の波に押されながら電車の中央近くまで流され仕方がなく、つり革につかまる。
ガタン。ガタン。
高校前駅までは40分だ。長い。そして、今日も押しつぶすされるほどの人だ。ああー。憂鬱。
次は〇〇駅。〇〇駅。お出口は右側です。
次の駅名が告げられた時、目の前の中年男性が立ち上がった。
え?ラッキーじゃん。
男性と私が入れ替わる形で席に座ることができた。こんな混んでいるのだ。目の前の席が空いたら高校生だって座る。座って悪いことはない。高校生だって疲れる。
それから半年が経ち、また駅で「今日座れそう」と思った。なんとなくだけど座れそう。そんな感じだ。
電車はいつも通り満員電車で、でもやっぱり私の前に座っている人が立ち上がる。
ラッキー。座れる。
あれ?
もしかして、駅で座れると思えは座れるのかな。それって凄いじゃん。明日もやってみよう〜。
次の日、ウキウキしながら「今日も座れる」と自分にいい聞かせていた。
しかし、座れなかった。
なんでよ!明日こそは座れる。絶対に座れる。毎朝、呪文ように「座れる。座れる」とつぶやく私に駅で声をかける友達はいなかった。寂しいじゃん。
「だってあんた。ブツブツ言って怖いよ〜声なんてかけられない」
本当に不思議だか、自分で念じても席座ることはできないが、フッと「座れるかも」と思ったとき、予感がした時だけ座ることができた。不思議だ。
社会人となった今も満員電車に揺られる生活を送っている。予感を感じる間隔が徐々に開き、もうほとんどない。
ちょっと寂しい気がする。また、あの予感を感じことができるだろうか
friends
友達なんて1人もいない。教室にも、塾にも、部活にもどこにもいない。進学校だからなのかなぁ。みんながライバルみたいに競って勉強している。
私は、学校でも完全に浮いている。
だから、わたしの友達は雨のなかに佇むあの子だけ。
雨の日にだけ会いに来てくれるあの子は、そっと私に寄り添ってくれる。ただそれだけ。でも、私にとっては大切な友達だ。
あの子の顔を見たことはない。だって、いつも隣に立っているから、顔を合わせることはない。
あの子の声を聞いたこともない。だって、いつも私の話しを聞いてくれるから、あの子は黙って頷くから、声を出さない。
でも、確かにいるの。手を繋いたことならあるわ。冷たい手だった。
あの子だけが友達だから、誰にもあの子のことは言わない。
でも、あの子のことを妖怪だという大人がやってきた。やめて。あの子を払わないで。あの子は何もしないわ。私の友達なのよ。
いくら叫んでも「もう大丈夫たから。怖かったね」って大人は言う。
違う。怖いなんて思ったとない。あなたたちの方がよっぽど怖いわ。
あの子を、私の友達を帰して。
雨が降ってもあの子は来なくなった。払われてしまったのだろうか。
悲しい。
寂しい。
1人になってしまった。
ピンポーン。
「はーい。どちら様。まあ、お隣に。そうですか。ちょっと待っていてね。」
母が私を呼ぶ声が聞こえ、2階の部屋から玄関先まで降りてきた。
「お隣に引っ越してきたそうよ。娘さん、あなたと同級生ですって。あいさつしなさい。」
母に促されて玄関であいさつをした時、同級生とななる子の顔を見た。
雨のあの子だ。
顔を見たことはないけれど、私には分かる。絶対にあの子だ。
あの子も優しく微笑む。
やっぱりあの子は妖怪ではなかった。だって払われてないもの。目の前にいるもの。
でもあの子は言った。
「あたしは生まれ変わったのだと。あなたを1人にできないと思ったら、生まれ変わっていた」らしい。
そんなことあるのかな。それでも嬉しい。私の新しい、ううん。古い友達ができた。
明日からは、楽しい学校生活が待っている。
君が紡ぐ歌
あの子が資格試験の勉強を始めて8ヶ月。
毎日、会社から帰って夕食を済ませると、部屋で勉強を始める。休日も1日中勉強してするために、図書館へ通っている。
「どうしても資格が取りたい。やっと、やりがいを見つけのよ。だから頑張ろうと思って。」
学生時代は勉強嫌いで、赤点ギリギリだだたのに強い思いがあるとこんなにも違うのね。お母さんは感動しています。
学生のときから頑張ってくれても良かったと思うけれど、娘を応援する気持ちは変わりない。
カリカリ。カリカリ。
ペンが走る音。勉強を頑張っている音。
娘が夢に向かって進むための音。努力の歌声は言い過ぎかな。でも、娘が紡ぐ新たな歌声だ
大丈夫。絶対に合格するからね。
ファイト。
光と霧の狭間で
雨あがりの夕方から霧が出始めた。丁度いい。私を隠してくれる。
でも、急がなければ、すぐに朝になってしまう。
「正治。早く。もっと大きくなるように土を掘ってちょうだい。」
「へい。お嬢さん。でもこれはなんですかな」
「いらなくなったゴミだっていったでしよ。お前には関係ないわ」
「へい。」
力だけはありそうな使用人に土を掘らせ、あのスーツケースを埋める予定だ。霧に朝の光りが当たらない狭間の時間の内に終わらなければならない。
あの子が悪いのよ。そうよ。私から全てを奪おうとするからよ。何が妹よ。父と関係のあったらしい、ただの使用人の産んだ子供のくせに。穢らわしい。
母子して父に媚びへつらい、気持ち悪く体を寄せてニヤニヤしている。あーあ、気持ち悪い。あれが妹。いいえあれは妖怪よ。
「お姉さまって〜、婚約者が居るんですか〜」
あれをこのままにしていてはダメよ。婚約者の隆さんにも近づこうとしている。許さないわ。
そうね。妖怪は退治しないと。危険なものは排除しないと。危ないわ。
「ねぇ。新しいワインが手に入ったの。貴女も飲まない?」
ワイングラスに赤いワインを注ぎ、あの女に渡す。嬉しそうにワインをガブガブと飲んでいく。なんて、はしたない。
あの女が口から泡を吹きながら、その場に崩れ落ちた。そして。動かなくなった。
あの女をスーツケースに何とか詰め、使用人の正治にコスモス畑まで運ばせ、穴を掘らせる。朝になれば、この霧が晴れてしまう。あー。早く。早く。霧が晴れる前に。
上手くいった。誰にも会わなかった。
なのに、なのに、なぜ?
お父様が探偵を連れてきた。なせ?
「お嬢さん。もう終りにしませんか?」