灯火を囲んで
部活の練習で学校から帰るのが遅くなり、1人で夜道を歩いている。都会ではないが、それなりに大きな街の住宅街の中を歩いている。街灯も真っ暗にならない程度にあるが、あまりにも静か過ぎてついつい早足になる。
誰にあとを付けられいる訳ではないけれど、なんたか怖い。いつもより少し暗く、ものすごく静かだ。
あれ?もう10分ほと歩いたのに住宅街を抜けられない。道の両側はずっと家が建ち並でいる。それにどの家も電気がついていない。真っ暗だ。
夕方だから、帰宅してない家もあると思うけど、全部の家の電気がついていないなんてあり得ない。いつのまにか走り出していた。
やだ。怖い。怖い。助けて。家に帰りたい。お母さん助けて。
「ミャ〜〜。」
猫の声がする。思わず立ち止まり、声のする方を見ると金色の目を輝かせたミケ猫がいた。
「ミャ〜。どこから来た?ここはお前のような小娘がくる場所ではないよ。早くお帰りよ。」
ミケ猫が尻尾を振り去って行こうをとする。猫がしゃべりた。イヤイヤ。あの猫、尻尾が2本あった。え?ここどこ?
「待って!行かないでよ。ここどこなの」
「ミャ〜。なんだい。迷子かい。あんたの世界に道案内してもいいが、見返りもなしではねぇ。」
え?見返り?
お金そんなに持ってない。どうしよう。
もしかして血を吸われるとか、あんことされるとか、こんなことされるとか。
え?!やっぱり殺されるよね。
「そんなことしないよ。失礼な奴だニャン。あんた世界に戻ったら、マタタビをおくれ。わしのベットになるくらいたくさんのマタタビだよ。どうだい。」
マタタビのベット?
「はい。それでお願いします。」
ミケ猫あらため猫又さんについて行く。あんなに抜けられなかった住宅街をあっさりと抜け、山道に入っていくと、猫又さんが振り帰り言った。
「これからは声を出すじゃないよ。昔話しであるじゃろ。定番の声を出せは気づかれてしまう。見つかれば、お前は人間ではいられないよ。」
コクコク。
うなずくしかなかった。
山道を少し進むと明かりが見えてきた明かりに向かい、木々を抜けて行くと大きな広場に出た。
そこにはたくさんの人。いや人ではない、猫又さんと同じ妖怪さん達が灯火を囲んで楽しそうに踊ったり、歌ったりしていた。
さながらキャンプファイヤーだ。
大きな火とそこにいる方がたの存在感に「うぁ〜」と声が出そうになるが、猫又さんに睨まれ息を飲む。
危ない。危ない。見つかる。
広場に入って行くとなんだか視線を感じる。え、だって私声出していないから、見えてないよね。大丈夫だよね。
猫又さんを見れば、尻尾をフリフリ知らん顔だ。そうか。知らん顔。知らん顔。
灯火の近くまで来ると傘の妖怪さんに猫又さんが声をかけられた。
「おい。猫又。今日のお供は人間か。」
え?見えてる?
「なんだ唐傘。お前くらい格式の高い妖怪になると見えるのか。さすがじゃニャ〜。
行くぞ。小娘。早く来いニャ。」
「なに言ってんだあいつ。格式って…。
みんなに見えてるのに変な奴。」
え?見えてる妖怪さんと見えてない妖怪さんかいるってこと?
「猫又さん。大丈夫ですよね。家に帰れますよね。」
「心配するなニャ。マタタビのこと忘れるなよ。」
気がつくと辺りが白み始め、霧の中のバス停に1人立っていた。家から1番近いバス停だ。朝の早い時間らしくバスは来ない。
バス停から歩き出す。家はすぐそこだ。
あれから家の庭にマタタビを広げ猫又さんを待っているが、来るのは野良猫ばかり。
まあ、猫さん達マタタビベットに寝転んでニャ〜。ニャ〜って可愛いいからいいけど。
あの時、きっと妖怪さん達には私が見えていたのだと今更ながら思う。猫又さんにからかわれたのかもしれないけど家には帰ってこれた。猫又さんには感謝だ。
だから、マタタビベットも用意したし早く来てよ。待ってるよ。
「なんだよ猫又。行けよ。格式高い唐傘さまが送ってやろうか。あの子怒っては無さそうだぞ。友達になりたんだろ。行けよ」
11/7/2025, 9:35:12 PM