流石に一ヶ月ちょっと前に書いたお題と同じだと
正直、書く気は湧いてこないなぁ。
最近は似た様なお題が増えたかなとは思っていたが
前回の一年後と今回の1年後のお題に関しては
数字の表記違いだけなので
あまりにも、雑だと感じてしまう…。
ー 1年後 ー
打ちっぱなしのコンクリート剥き出しの階段
螺旋の途中の踊り場は冬は特に冷ややかだった。
どんな声を上げようが、響くだけで返っては来ず
虚しさだけを溜め込んでブリキの扉を開く。
上等な靴箱なんて物も無く玄関先は味気無い色で
散らかった見知らぬ爪先が示す奥では
身知った声の変わり果てた様を聞かされた。
意図せず向かい合った木戸の先へ駆け込んで
いっそ便器と向き合ってしまおうか?
しかし、吐き出せる内容物などは最早無い。
拭い方も知らぬ不快感に酩酊する脳味噌では
靴を脱ぐ事すらも億劫で、ブリキの扉へ背を預け
ずるずると緩慢な動作で腰を落とす度に
意識も瞼も落ち込んで睡魔へ浸かりこんでゆく
後頭部がキンと冷えて目の奥が点滅する。
ここで寝てしまったら、邪魔になってしまう。
後ろ手にドアノブを捻れば
また冷ややかなコンクリートへ逆戻りだ。
背骨の一部を強かに打ち付けたが
元より傷んでいた身体ではこれ以上痛みはせず
子供の自分には乗り越えられない手摺りの先で
冬の晴れた空だけは無粋な程に青かった。
何時になったら、私は家へ帰れるのか。
迷い子とは癒えぬ病ではないかと
あの頃は、そうとしか思えなかったな。
ー 子供の頃は ー
常とは、何処からが常なのか。
普通、常識、平凡、平素、当然。
そして、いつかは必ず終わりが来る日常。
母に金切り声で普通を強要される子供は
一つの異常も持たずに育つ事が出来るのか?
母や父の異常には目をつぶる様にと
呪詛の様に言い聞かされた子供は
いつか同じ事をしないだろうか?
常ならむとは、大変に愉快な言葉であると
私はどす暗い腹の内を抱えて
皮肉な事に、其れこそ常々思うのだ。
自分は変わりたくないが
他人を変えることは厭わない
そんな思想家達の渦中に溺れ
心を日々の最中ですり減らし
何時しか、直せぬ異常の数に
その身を乗り出してしまったならば
花火よりも短く、地面へと咲く。
ほら御覧よ、日常なんぞ
何とも並べず儚いだろうに…。
言葉で定義出来る事は知性の賜物
而れども、曖昧とは悪では無い。
ー 日常 ー
小さい頃の私は、随分とわんぱく者で
外を学友達と日が暮れるまで駆け回っていた。
皆が帰った後でも、自分は家に帰るのが億劫で
家の下の駐輪場へ寄り添う様に生えていた藤の木に登っては、大きく二又に別れた幹の部分に
背中が凝り固まる事も厭わず、くるりと丸まって
夜遅くまで眠りこけていた事が良くあった。
一度だけ、私は
その場所で朝を迎えた事がある。
桜が見頃を終える、春の終わり際
瞼越しの眩さに朝を知り、木の上で目を覚ました。
寝惚ける隙すら無いままに
四季彩の濁流に強く叩き起された意識。
藤の花は淡い色ながらも確かに色付き
藤棚から数え切れぬ程に垂れ下がる。
斜め上からの朝日を透かす緑の葉や
太めの枝、支えの石柱の数々は
緻密に描かれた淡い紫を飾る為の額縁に見えた。
風に揺られる度に、その色の群れは波打ち
一瞬、また一瞬と違う作品へと変貌を遂げていた。
幼い私は、懸命に心のシャッターを切っては
一コマ一コマの表情の違いにすっかりと魅入り
数多の神聖な作品に身を置いたまま惚けて
いつの間にやら太陽が天辺へと着き
姉さんが呼びに来るまでの時間を
悠々と跳び越えてしまっていたのだ。
何故、このお題で
この様な話をしたのか。
それは、好きな色とは好きな景色と同じく
無理に一つに絞らずとも良いでしょう?と
他愛も無い、そんな話を、悪戯めいて
あなたへ投げ掛けたかったからですよ。
ー 好きな色 ー
ふいに鳴った電話から貴方の声が届く
駅まで迎えにお気に入りの傘を開いて
一人雨の中、見慣れた道を歩いてゆく
何かを思い出しそうだったけれど…
人と雨に当たらぬ様に意識を逸らす
駅のホームで貴方が手を振っている
走り寄ってから思い出したの
家で待っている、もう一本の傘の事を
近くの店で買おうかと伝えたけれど
貴方は慣れた様子で私の傍へ寄って
たまには一緒の傘で帰るのも良いね
そう言って、優しく笑っていた。
ー 相合傘 ー