黒山 治郎

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1/21/2025, 9:27:52 PM

いつかの光を夢見る先行きへの不安
なおも膨らみ続ける胸と鞄の中身
正しく向き直り続ける水盆の中心針


針が示すのは、方角だけではなかった。

航路から後戻りという選択肢を消して
この進路が足元を泥濘るませない事を祈る。

縮込めていた背と共に、小さな帆を風で張り
利き手の指が白くなる程、舵輪を強く握り締め
仕上げにと溺れ慣れた顔を大きく拭った。

夢物語の出航を告げる鬨の声は 一つ。

ー 羅針盤 ー

1/19/2025, 6:13:12 PM

こんなに冷ややかに澄んだ空気の夜は
なんだか人が少しだけ嫌になる。

暗いコンクリートの石階段へ座り込み
冷気に熱を奪われ白く切り抜かれた呼吸が
口から延々と狼煙の様に上がるのを見ると
誰にも見つかりたくない気持ちが溢れて
情動に溺れそうな胸中を護る為に
私は一層、強く膝を抱えてしまう。

…ただひとり、君にだけ

どうしようもなく逢いたくなって
他の熱源じゃ心は冷めたままなんだと
独白で何処までも空っぽな駄々をこねた。

ー ただひとりの君へ ー

1/7/2025, 11:58:00 PM

耳鳴りついでに勝手に背を押してくれるなよ
もう踏み出すつもりなんざなかったのに
全くもって要らぬ世話を焼いてくれたもんだ

背を合わせていたお前が先に逝っちまうから
背中が吹きっさらしに押されるんだろうが

追い風なんて御大層に呼ぶ気も起きない
臆した己を無機質に戦場へと追い立てる風は
盾にもなれねぇ無駄な体躯を嘲笑って刺す
ただの冷えきった突風でしかねぇんだよ。

ー 追い風 ー

10/3/2024, 7:42:54 PM

声だけを聴いた時は
なんとなく、足りないと思った

話し合えた時は
知れたことを、嬉しく想った

顔を合わせた時に
会いたかった人だと
漸く、そう腑に落ちた。

“巡り会えたら”に
可いが足されて
巡り会えた“か”ら
私達は成る可くして
縁が巡ってきたじゃないかと
互いに笑い逢えたんだ。

ー 巡り会えたら ー

10/3/2024, 7:30:19 PM

天鵞絨の様な艶やかな毛をなびかせて
私の数歩先をゆく、小さな君
こちらを見上げて目を細め
軽やかな声を聞かせてくれた君

叶うならば
もう一度、私は君とあの道を歩きたい。

ー 奇跡をもう一度 ー

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