書ける気がしないんだ。
動かせないペン先がインク溜りを広げるばかりだ。
誰かに届けたかった筈の内心が罵る今は
進化も退化も忘れて妙な意地しか残ってない。
生み出せず、歩き出せず、学べもしない
先人達の教えすら書き損じとして丸めてしまう。
煙草の先端は痕跡すら残して真っ直ぐと燃える
命よりも未来よりも煌々と明るい気がして
私の言葉なんて目じゃない程に皮肉が効いていた。
ー 言葉にできない ー
人の為の苦労なら買うべきだと
漠然と、そう思っていた。
覚束なくても続けていれば
多少なりとも何時かは形になってくると
他人を 少しでも 愛せる様に
人嫌いが治って、歪を忘れて
自然と笑える口元を思い描いて
無理に暴かれた過去を塗りつぶせる様に
恐れと怯えに視界が滲むことが無くなれば
私の胸中も泰平を得られるだろうと
でも、駄目だ。
形のない短い秋に 恋い焦がれるように
時間と心だけが無下に割かれて
嫌に長い夜は表情も無いまま
私の独白を絡め取り潰し丸めて
朝に焼ける網膜ばかりを繰り返し再生する。
ちっぽけな言葉など誰にも届きはしないと
影を吸った白紙を風が去らうだけ。
失恋が決まっているなんて
飽きれるほどの喜劇でしかない。
ー 秋恋 ー
落ちた海中で、もがく事も忘れて
水面の先を、ただ見つめていた。
高尚な感情群は遠にその多くを亡くしてしまった。
それでも湧き上がった酸素への渇望は
流れに追い付けず千切られる雲の様に
泡沫の形を経て、私から逃れ空へ昇る。
定められた形である事にも飽いてしまった頃
視界は泡を吐く度に白に縁取られ始め
水面鏡の私は見送ろうと笑う事を選ぶ。
酸素が減り空を溶かした青い水中の底へ進む
途中、魚群の影には擽ったい様な寂しさを見て
落ちたのが海であった事を幸福に想った。
ー 空に溶ける ー
怪我をする度に脳裏に過ぎる過去の手
幼い頃の私の上で豆電球が
右へ左へと 揺れる、揺れる。
知らず知らずのうちに
胸に溜まって澱みだした空気を
どうしても吐き出す術が思い付かず
手馴れた様子で、また煙草に火をつける。
過ぎた出来事は煙で見送ってやろうと
吸っては吐いてを無言で繰り返す内
私の周りは火葬場よりも静寂が尖っていった。
過去になった、あの痛み達は離れない訳じゃない
生きる為の習慣づいた方法だから
真っ先に解決策として思い出してしまうのだ。
ー どうしても… ー
いつだって、知り得ない。
未知の上で両手を広げて
バランスを取れてるつもりになって
がむしゃらに歩き続けているだけなんだ。
ー まだ知らない世界 ー