狼星

Open App
2/2/2023, 2:09:00 PM

テーマ:勿忘草(わすれなぐさ) #82

リーリエもともにミッドナイト組織に立ち向かうことになった。僕はホラーハウスのようなララキの家を去ろうとするーー

『ほ、本当に行くの…?』
ララキが言った。
「あぁ。引き下がらない」
僕はララキに一緒に来てほしいと内心思っていた。しかし、ララキはなかなかここから出ない。さっきだって外に出たのが、非常に珍しいことだったのだから。
ララキは下唇を噛んでいた。
『真は死ぬかもしれないのに行くのか?』
ララキの言葉にぐっと一瞬、息が詰まる。『死ぬかもしれない』その言葉に怖気づいたのだろうか。
ただ、それも一瞬に過ぎなかった。
「誰が簡単に死ぬって?」
僕はララキを見る。自然と僕の口角は上がっていた。
「この命、簡単に取れるもんなら取ってみろ」
僕が言うとララキが目を見開いた。
『全く、ララキは心配性なんだよ』
シャドウがケケケッと笑う。
『大丈夫だ、ララキ。ちゃーんと俺が真のことを守る』
「うるさい。守られなくても、ちゃんと自分の身は自分で守れるわっ!」
僕はシャドウに言うとシャドウは
『あぁ。こんな威勢のいいやつは、簡単には死なねぇな』
そう言ってまた、ケケケッと笑う。
『お前ら…』
ララキが僕たちのことを見て呟くと大きく頷く。
『健闘を祈る』
ララキがそういった。しかし、それには続きがあった。
『と、いつもなら言っているが…。今回は僕も腹をくくろうかな』
「それって…」
『あぁ。着いていこうじゃないか』
僕はガッツポーズをした。


『リーリエ。大丈夫かな…』
僕はリーリエがちゃんと彼らの元へと行けたか、心配になった。
囚われているのは僕なのに、それはおかしいかな…?
そんなことは思わなかった。
『おい、お前。さっきからブツブツ言っているが何を言っているんだ』
見張りの1人がいう。怪しまれたか? そう思いながらも冷静に対応しなければ…。
『僕はこの胸ポケットにある、勿忘草(わすれなぐさ)の押し花にとある想い入れがあってね。変な話だとは思うが、それに話しかけてしまうんだよ』
僕は下手な嘘をつく。するともう1人の見張りが
『そりゃ、おかしな話だな』
そう言って、乗ってくれる。
『嘘だろ、お前。そんなのに騙されるのか…?』
『え、僕騙されてるの…?』
かなりの鈍感のようだ。
『まぁ、そう思われても無理はない。花が喋るなんて。ましてや押し花なんて枯れた花。話せるわけがない、とな』
この話で奴らの気が引けそうだ。そんなことを思っていたその時!
ゾクッと背筋に寒気が走る。そして、何かの圧を…。
その時見たのは……

2/1/2023, 1:42:35 PM

テーマ:ブランコ #81

突然現れたリーリエと名乗る妖魔族は、勝瑠の付き人…いや付き人外らしい。勝瑠から伝言を預かってきたというーー

「リーリエ。勝瑠は無事なのか?」
『はい…。怪我をしているわけではなく、喋ればするのですが、鎖に繋がれ勝瑠のそばには組織のものと見られる人に警備しています。それにしても、人なのでしょうか…あの人たち』
リーリエはそう言って首を傾げる。
『リーリエはどうしてその警備をくぐり抜けてこれたんだい? 強行突破、してきたようには見えないが…』
『はい。何でなのかその人たち、勝瑠が能力者であることは知っているものの人外は、見えないみたいで…』
その言葉がさっき得た情報と重なる。
人でも人外でもない…。化け物。
「リーリエ、それで勝瑠の伝言は?」
『あっ、はい!! えっと…。『奴らは僕たちの能力を知っている。むやみに近づくな』って』
リーリエはそう言った後、俯いた。リーリエだってその言葉の意味を知っていっているのだろう。
「なるほどな」
僕がそう言うとリーリエはナニか言おうとして口を開き…そのままくるりと背中を向ける。
『勝瑠はいつも私に言うんです。『ブランコ』を大切にしろって』
「ブランコ?」

『   ブつかって
    ラくにならなくても
  がまン強く粘り
 自分をコろしても相手を傷つけるな』

 の『ブランコ』です。変ですよね。自分を殺してまで 
 相手を傷つけるなって』
ハハッと笑っているリーリエは眉をハの字にして笑う。
『勝瑠は優しすぎるんです。人を傷つけるくらいなら死んだほうがマシだって言ってるようなものじゃないですか。もっと頼ってほしいのに。何でも1人でやってしまうんです』
リーリエは下唇を噛んでいた。
『こんな時にしか、私は役に立てないんです…』
「リーリエ…」
僕は震えるリーリエを見てそう呟く。
『確かにな。1人で突っ走ろうとする姿はやっぱり、兄弟なんだな』
『…え?』
リーリエがシャドウの言葉に顔を上げる。
『まぁ、人を傷つけることを嫌うってとこもか』
「そうか?」
『そうだろ。この前も人助けしていたし』
「あれは、たまたまだ」
『そういうとこが可愛くねーんだよ』
シャドウがケケケッと笑う。
「リーリエ、侵入する経路は?」
『え…』
「だーから。そこの建物、侵入する経路は?」
僕がそう言って手を組むとリーリエは首を横に振る。
『だめです! 勝瑠は真様が傷つくのが一番嫌がります!!』
リーリエは首がもげそうなほど振っている。
「勝瑠の伝言無しでもそうしていた」
僕がそう言うとリーリエは首を振るのをやめた。
「僕の弟なんだろ? 助けない意味がない」
僕は片口角を上げる。
『でも…』
「これは僕の考え。リーリエはちゃんと伝言を僕に伝えた。それでいい。これから僕が侵入するときは、全部自己責任でやる。だから、情報教えてよ」
リーリエは僕をまっすぐ見ていた。リーリエの目に涙が溜まっていった。それはもう少しで零れ落ちそうなところ小さなリーリエの手がそれを拭う。
『わかりました。私も援護します』

1/31/2023, 1:34:22 PM

テーマ:旅路の果てに #80

ミッドナイト組織へ行く覚悟を決めた真とその判断になにか言いたげなララキ。一方、囚われの身となった勝瑠はリーリエに伝言を頼むーー

「ララキに何を言われようと僕の気持ちは変わらない」
僕はそう言うと出ていこうとドアノブに手をかける。
『その、勝瑠とやらは本当に信用できるのか』
ララキの言葉にピクッと眉が上がる。
「あぁ! 承認だってシャドウがいる」
『彼はシャドウのことを認識しているのか?』
「もちろん!」
『シャドウと名前を呼んだことがあるのか?』
そう聞かれ彼の言動を思い出す。たしかに彼が僕のことを真兄さんと呼ぶことはあっても、シャドウのことは呼んだことがなかった気もする。だが、それが何だというのだ。
「シャドウは、勝瑠のことずっと知っていたんだろ?」
僕がそう言うとシャドウは何も言わなかった。
『シャドウもこうなんだ。もしかしたら勝瑠というやつもソイツらの仲間なんじゃないのか?』
「それは…」
違う…とは言い切れない。だって、証明であるシャドウが黙っている。
「シャドウ、どうしたんだ。さっきは言ってたじゃないか!」
『それが…。真。はっきりしないんだ。俺の記憶が』
「…え?」
『俺の記憶にあるのは真の両親の姿と小さい勝瑠の姿しか…。今の勝瑠が本当にあの勝瑠なのか…。そうじゃないのか…わからない。はっきりしなくなった』
「何を今更」
僕は首を振った。ここまで、情報まで集めてもらったのにそんなこと……。

『真様〜!!』
そう言う小さな声が聞こえてきたのは、ララキ、シャドウ、僕の会話が無くなった、沈黙の間の時だった。それは小さな人外で、御伽噺に出てくる妖精のようなものだった。
「僕?」
自分を指差すと小さい人外はコクリと頷く。
『伝言を預かったゆえ!』
「誰から?」
『勝瑠です!』
勝瑠という言葉に一同は、小さい人外に一斉に視点を集中させた。小さい人外は戸惑ったようにキョロキョロしている
『え、え?』
「あ、ごめんね…。その勝瑠のことに関して話していたものだから…」
『え!? 勝瑠のことを!?』
小さい人外は驚いたように目を丸くさせる。
「そういえば君の名前は?」
『あ! 申し遅れましたが、私はリーリエと申します。勝瑠の…そうですね。真様でいう、シャドウ様の立ち位置にいさせてもらっております』
その言葉にまた一同揃って、目を開きリーリエを見る。
『勝瑠は、真様のことを本当に熱心に探していました。そして、長い旅路の果てにと言ってもいいくらい色んなところを彼は貴方様を探していました』
長い旅路の果て…中学生くらいの子が…?
『なんで俺のことまで知っている?』
『私は陰ながら勝瑠のことを見ていたためきっと見当たらなかったのだと思います。そういう種族でもあるんです。私は』
シャドウという人外もってもわからない、だなんて…。
『なるほど』
そう納得している人外が1人。ララキだった。
『リーリエ。君は妖魔族だな?』
『はい』
リーリエは頷く。
『妖魔族はたしかにそういう種族だ。人間でいう座敷わらしのようなものに近いかもしれないな』
座敷わらし…。たしかに認識するかしないかのスレスレラインの存在…。
『って! そんな私の話はあとからできます! 今は勝瑠の伝言を!!』
すっかり話に夢中になってしまっていた。

1/30/2023, 12:16:09 PM

テーマ:あなたに届けたい #79

ララキの能力のおかげで人外たちから情報を集めることに成功した真。ミッドナイト組織の情報を見つけるーー

「ミッドナイト組織…」
僕がそう呟くと、人外二人の視線がこちらに向く。
『あった?』
「あぁ…」
『なんて?』
僕は口を閉じた。そこにはこう書かれていた。
【ミッドナイト組織。それは人外でも人間でもないものを作り出すと言われている組織、と聞いたことがある。もちろんデマかもしれないし、そんなこと本当にあったらそれは大変なバケモノを作っていることになる。
一体誰がなんのために…。ミッドナイト組織に関してはあまりいい噂は聞かない】
『バケモノ製造組織ってわけか』
シャドウは文章を読んだのか呟いた。
『これはいつも情報をくれる情報屋の字だね』
ララキがそう言って文章を見た。ということはあまりミッドナイト組織というものは知られていないのかもしれない。情報屋が知らないのだから。
『僕はこの組織に関わりを持つことはゴメンだけど、君たちは本当にこの組織にカチコミに行くわけ?』
「カチコミに行くわけじゃないさ。平和に解決できそうだったらそれはそれでいいが…。あまりその線は考えないで良さそう」
僕がそう言うと
『こういうのもあったぜ』
そう言って、シャドウが僕に一枚の紙を渡す。
【そういや、怪しいやつが西路地近くに彷徨いていたぜ。なんだか挙動不審でよ、真夜中に動いていて、なんだか血走ったような目をしていたな。
人外って感じではなかったけど、人間ってわけでもないような…。まぁ、俺の違いかも】
真夜中に活動…人外でも人間でもない雰囲気。さっきの情報屋の情報と似ている…。それに実際、僕も感じていた。アイツは…アイツ等は只者ではない気が…。
「僕も感じた。アイツ、人間の姿をしているのに変形したり、僕の時止めにも逆らってさ。でも、シャドウのことを認識していなかった。僕だけ攻撃を受けて、最終的にはシャドウが奴らを……。でも、最初から最後までシャドウのことが認識できていなかったと思う。気づかない演技だとは思えない」
実際、最後彼らは殺されたのだから。
『もし、そんな化け物いるとしたら…』
そう言ってララキは身震いしていた。
「ララキ。やっぱり僕行かなきゃ。そんな奴ら放っておけない。いや、そんな奴らに弟を連れ去られたままでたまるか」
ララキは僕を見て、何か考えていた。

ーージャラ…。
鎖の音。クソ…。僕が油断した隙に連れ去るなんて、なんて卑怯な奴らなんだ…。
「おい。鎖で繋いだはいいが、コイツ時止めはできないみたいだぜ?」
「そりゃないだろ、あいつの息子なんだから」
「でもよ、遺伝していなかったら……」
「バカッ! そんなこと言うんじゃねぇ! どこでボスが聞いているのかわからないんだぞ!」
「ご、ごめん!」
2人の男がなにやら話している。見張りといったものか…。でも人外一匹の侵入もわからないとは、警備としては劣っている。
『勝瑠…。やっぱ助け呼んだほうがいいよ』
そういったのは、リーリエ。彼女は真兄さんの近くにいるシャドウのようなものだ。
『でも、リーリエ。君はここから出られるかい?』
僕は小さく独り言のように言葉をこぼす。
『えぇ、ここの警備は人外にとって全く対策をしていないみたい。外に何本が続くルートを見つけ、もう外に行けると検証済みよ』
リーリエは頼りになる。僕よりもずっとしっかりしている。『私がもっと先に察知していればこんなことにはならなかった』そう頑なに言う彼女はきっと彼女自身が思っているよりも遥かに、働いてくれているとおもうのだが…。
『じゃあ、真兄さんに伝言を頼む』
そう言って、僕はリーリエに話した。そしてリーリエは僕のもとから真兄さんのもとへ。
あなたへ届いてほしいんだ…。例え、僕が弟だと信じられなくても僕は知っている。あなたが本当の兄さんなんだって…。


※㊗♡1000!!
本当にありがとうございます。作品たちを狼星を支えていただき感謝してもしきれません。
これからも狼星をよろしくお願いいたします。(._.)

1/29/2023, 1:05:21 PM

テーマ:I Love… #78

僕とシャドウとララキは街へ向かった。そう遠くはない。僕は街の雰囲気が嫌いだったーー

人間がたくさんいる…。
僕はいろんな人間にぶつかりそうになる。だから街は嫌いなんだ。人間がうじゃうじゃいるし、普通の人外と違って認識されるから、ぶつかるといろいろめんどくさい。この街の人は特に面倒くさい。
『大丈夫か? 真』
「大丈夫なわけないじゃないか」
僕は小声で言った。人間に聞かれても人外語だからわからないとは思うが、あまりブツブツ言っていると変な人だと思われるだろう。
『しっかし、今日は一段と人間が多いね。何かあったのかなぁ?』
シャドウの腕に抱きついたままのララキが言う。
僕たちには関係ない。僕には人間のことなんて…。
そう思いながらも、たしかにこの人混みの量は嫌だ。
「人間のことだから、何かセールでもしてんじゃない?」
僕が適当に返すとふーんと興味なさそうに呟くララキ。
興味があるのかないのかはっきりしてほしい。答えた僕が馬鹿みたいじゃないか。
『それにしても、まだ目的地につかないのか?』
シャドウが呆れたように言う。
『まぁまぁ、落ち着きなってシャドウ。カリカリしてはうまくいくものも行かなくなるってことよ』
そう言ってララキは、角を曲がる。

『さ~て、ここらへんでいいかな』
ララキは街の人混みと少し外れたところで、クルリとさっきの人混みがあった方を向く。
『ここに設置してっと…』
空をララキがなぞると、あるものが出てくる。
「掲示板?」
『そう。急ぎのようだからね、こういうものを活用しないと。急用の情報集めにはね』
ララキの言葉に少し嬉しくなった。
「ありがとう」
『礼なんていらないよ。まだ、成功したんじゃないんだから』
そう言ってララキは厳しいことを言うと、ブツブツ何かを唱え始めた。ララキは『人外のハッカー』。つまり情報をありとあらゆるところから集めることができる。
『人外たちよ、聞こえるか? ララキだ。情報を集めてほしい』
目を閉じ、手を掲示板に当てて話しているララキ。
ララキが手を離し、目を開ける。すると不思議と掲示板に色々な情報が書かれている。
『すげ…』
『光栄だな。シャドウ』
シャドウに照れくさそうに微笑むララキのしたこと、それは周囲の人外に呼びかけ、掲示板に色んな情報を一気に集める。そういったものだろう。
『さぁ、戻って求めている情報を探そうじゃないか』
ララキがそう言って、掲示板を外し歩き出す。
「持とうか?」
『それには及ばない。これも一、運動だ』
そう言ってスタスタと歩くララキ。

結構な量の情報が集まったが…すべてが全て確実に必要な情報が集まっているわけではない。余分なものは省く必要があるらしい。
僕たちはあの、ホラーハウスに戻ってきた。
『さぁ、やるか』
そう言ってララキは掲示板を下ろす。
『シャドウはこっち…真はこっちを頼む』
「分かった」『おう』
僕たちは返事をすると早速作業に取り掛かった。
【今日は人間がたくさんいるなぁーー】
【I Love… なんて言えないーー】
【次の新月が待ちきれないなぁーー】
くだらない内容ばかりが続き、はぁ、とため息をつく。
次は…? と思い見るとそこにミッドナイト組織というワードが見えて目をカッと見開く。
「これって……」

Next