狼星

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テーマ:旅路の果てに #80

ミッドナイト組織へ行く覚悟を決めた真とその判断になにか言いたげなララキ。一方、囚われの身となった勝瑠はリーリエに伝言を頼むーー

「ララキに何を言われようと僕の気持ちは変わらない」
僕はそう言うと出ていこうとドアノブに手をかける。
『その、勝瑠とやらは本当に信用できるのか』
ララキの言葉にピクッと眉が上がる。
「あぁ! 承認だってシャドウがいる」
『彼はシャドウのことを認識しているのか?』
「もちろん!」
『シャドウと名前を呼んだことがあるのか?』
そう聞かれ彼の言動を思い出す。たしかに彼が僕のことを真兄さんと呼ぶことはあっても、シャドウのことは呼んだことがなかった気もする。だが、それが何だというのだ。
「シャドウは、勝瑠のことずっと知っていたんだろ?」
僕がそう言うとシャドウは何も言わなかった。
『シャドウもこうなんだ。もしかしたら勝瑠というやつもソイツらの仲間なんじゃないのか?』
「それは…」
違う…とは言い切れない。だって、証明であるシャドウが黙っている。
「シャドウ、どうしたんだ。さっきは言ってたじゃないか!」
『それが…。真。はっきりしないんだ。俺の記憶が』
「…え?」
『俺の記憶にあるのは真の両親の姿と小さい勝瑠の姿しか…。今の勝瑠が本当にあの勝瑠なのか…。そうじゃないのか…わからない。はっきりしなくなった』
「何を今更」
僕は首を振った。ここまで、情報まで集めてもらったのにそんなこと……。

『真様〜!!』
そう言う小さな声が聞こえてきたのは、ララキ、シャドウ、僕の会話が無くなった、沈黙の間の時だった。それは小さな人外で、御伽噺に出てくる妖精のようなものだった。
「僕?」
自分を指差すと小さい人外はコクリと頷く。
『伝言を預かったゆえ!』
「誰から?」
『勝瑠です!』
勝瑠という言葉に一同は、小さい人外に一斉に視点を集中させた。小さい人外は戸惑ったようにキョロキョロしている
『え、え?』
「あ、ごめんね…。その勝瑠のことに関して話していたものだから…」
『え!? 勝瑠のことを!?』
小さい人外は驚いたように目を丸くさせる。
「そういえば君の名前は?」
『あ! 申し遅れましたが、私はリーリエと申します。勝瑠の…そうですね。真様でいう、シャドウ様の立ち位置にいさせてもらっております』
その言葉にまた一同揃って、目を開きリーリエを見る。
『勝瑠は、真様のことを本当に熱心に探していました。そして、長い旅路の果てにと言ってもいいくらい色んなところを彼は貴方様を探していました』
長い旅路の果て…中学生くらいの子が…?
『なんで俺のことまで知っている?』
『私は陰ながら勝瑠のことを見ていたためきっと見当たらなかったのだと思います。そういう種族でもあるんです。私は』
シャドウという人外もってもわからない、だなんて…。
『なるほど』
そう納得している人外が1人。ララキだった。
『リーリエ。君は妖魔族だな?』
『はい』
リーリエは頷く。
『妖魔族はたしかにそういう種族だ。人間でいう座敷わらしのようなものに近いかもしれないな』
座敷わらし…。たしかに認識するかしないかのスレスレラインの存在…。
『って! そんな私の話はあとからできます! 今は勝瑠の伝言を!!』
すっかり話に夢中になってしまっていた。

1/31/2023, 1:34:22 PM