狼星

Open App

テーマ:ブランコ #81

突然現れたリーリエと名乗る妖魔族は、勝瑠の付き人…いや付き人外らしい。勝瑠から伝言を預かってきたというーー

「リーリエ。勝瑠は無事なのか?」
『はい…。怪我をしているわけではなく、喋ればするのですが、鎖に繋がれ勝瑠のそばには組織のものと見られる人に警備しています。それにしても、人なのでしょうか…あの人たち』
リーリエはそう言って首を傾げる。
『リーリエはどうしてその警備をくぐり抜けてこれたんだい? 強行突破、してきたようには見えないが…』
『はい。何でなのかその人たち、勝瑠が能力者であることは知っているものの人外は、見えないみたいで…』
その言葉がさっき得た情報と重なる。
人でも人外でもない…。化け物。
「リーリエ、それで勝瑠の伝言は?」
『あっ、はい!! えっと…。『奴らは僕たちの能力を知っている。むやみに近づくな』って』
リーリエはそう言った後、俯いた。リーリエだってその言葉の意味を知っていっているのだろう。
「なるほどな」
僕がそう言うとリーリエはナニか言おうとして口を開き…そのままくるりと背中を向ける。
『勝瑠はいつも私に言うんです。『ブランコ』を大切にしろって』
「ブランコ?」

『   ブつかって
    ラくにならなくても
  がまン強く粘り
 自分をコろしても相手を傷つけるな』

 の『ブランコ』です。変ですよね。自分を殺してまで 
 相手を傷つけるなって』
ハハッと笑っているリーリエは眉をハの字にして笑う。
『勝瑠は優しすぎるんです。人を傷つけるくらいなら死んだほうがマシだって言ってるようなものじゃないですか。もっと頼ってほしいのに。何でも1人でやってしまうんです』
リーリエは下唇を噛んでいた。
『こんな時にしか、私は役に立てないんです…』
「リーリエ…」
僕は震えるリーリエを見てそう呟く。
『確かにな。1人で突っ走ろうとする姿はやっぱり、兄弟なんだな』
『…え?』
リーリエがシャドウの言葉に顔を上げる。
『まぁ、人を傷つけることを嫌うってとこもか』
「そうか?」
『そうだろ。この前も人助けしていたし』
「あれは、たまたまだ」
『そういうとこが可愛くねーんだよ』
シャドウがケケケッと笑う。
「リーリエ、侵入する経路は?」
『え…』
「だーから。そこの建物、侵入する経路は?」
僕がそう言って手を組むとリーリエは首を横に振る。
『だめです! 勝瑠は真様が傷つくのが一番嫌がります!!』
リーリエは首がもげそうなほど振っている。
「勝瑠の伝言無しでもそうしていた」
僕がそう言うとリーリエは首を振るのをやめた。
「僕の弟なんだろ? 助けない意味がない」
僕は片口角を上げる。
『でも…』
「これは僕の考え。リーリエはちゃんと伝言を僕に伝えた。それでいい。これから僕が侵入するときは、全部自己責任でやる。だから、情報教えてよ」
リーリエは僕をまっすぐ見ていた。リーリエの目に涙が溜まっていった。それはもう少しで零れ落ちそうなところ小さなリーリエの手がそれを拭う。
『わかりました。私も援護します』

2/1/2023, 1:42:35 PM