狼星

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1/28/2023, 2:35:47 PM

テーマ:街へ #77

真とシャドウは弟の勝瑠を探しに勝瑠家を出た。
そして『人外のハッカー』と呼ばれる者の家へーー

『ケッ、着いちまったよ』
シャドウが隣で肩を落とす。
「向かっていたからね。当たり前さ」
『そうだけどよ…。日をおいても良かったんじゃねぇか?』
「それじゃあ、勝瑠はどうでもいいってことか?」
僕の眉がピクリと上がる。
『いや、そういうことを言っているわけではないが…。というか、真がそこまで気にする相手なんてそうそういないからいいんだがな? いいんだが…な?』
シャドウは顔を下に向ける。
分かってる。シャドウがヤツのことを嫌っていると。
僕もわからない。なぜ自分がそんなにも勝瑠のことを救いたいと思っているかなんて。
僕たちの目の前には、一見の不気味な家が立っている。いわゆるホラーハウス。そう言っても過言ではないだろう。
「いくぞ、シャドウ」
傍から見たら、肝試しにでも入っているように見えるかもしれないが、ここにヤツは住んでいる。

「ララキ、いるか」
僕はそのホラーハウスに入ると言った。空が暗いため、家内も当然暗い。
『わー!!』
その時、子供のような高い声が聞こえる。
『久しぶりだね! 真!!』
そう言って棺桶から出てきたのはヤツ…ララキだ。
『あ!! シャドウいるじゃん!!』
後ろでゲ…という声が聞こえた。きっとうわ、見つかっちまった。とでも思っているのだろう。
『どうしたの? 真もシャドウも』
ララキはシャドウに抱きつくと言った。
「急ぎの用なんだ、ララキ」
ララキはシャドウに頬をスリスリとしている。シャドウは嫌そうに体をよじっている。
「ララキ」
『はいはい、わかったよ。まぁ、一回なにか聞いてからだよ』
ララキは渋々シャドウから体を話すと僕と向き合う。
『なんだい?』
「人探しをしているんだ」
『人探しぃ…?』
「あぁ」
僕が頷くとララキは、僕の顔をじぃっと見つめる。
『真が人探しねぇ…』
「なにか問題でも?」
『いいや、別に? 珍しいなと思っただけ』
そう言うとララキは棺桶に座る。
『僕がすればいいことは?』
「『ミッドナイト組織』という組織についての情報を人外たちから聞き出してほしい」
僕が組織の名前を口にすると
『なんだか、聞いたことある名前だなぁ』
そう言いながら顎に手を当てている。

『ねぇ、真』
考えている途中、ララキは僕を呼んだ。
『真、変なことに首を突っ込んでいないよな?』
ララキは真剣な顔をしている。
「わからない」
『わからないって…。それじゃあ、僕は依頼を放棄するよ?』
「それは困る」
『だって危険かどうかわからない組織のこと調べて、真に情報を教えたら、真は絶対に突っ込んでいくじゃない』
そりゃあ、当たり前だ。
『なんでその人探してるのさ』
「…弟かもしれないんだ」
『弟って真、一人っ子じゃないのかい?』
「それを確認するために探しているんだ。勝手に死なれちゃ困る」
僕がそう言うとララキは、何も言わずにまた顎に手を当てた。そして数分後
『わかったよ。真の依頼、引き受ける。しかし、すぐには集まらないよ』
「あぁ、分かっている」
『こっちも最善を尽くすけど、真もシャドウも情報集めて。そんなに大切な人なんだったら協力して』
「あぁ、もちろんだ」
『後、依頼の手数料だけど、帰ってきたら真実を教えてよ。今回はそれでチャラにしてあげる。僕の退屈しのぎくらいにはなるだろ?』
ララキはそう言うといたずらっぽく笑う。
「あぁ…。分かった」
『約束だぞ』
そう言って小指を折る。
『じゃあ、早速街へ行くか』
『街ぃ?』
『情報源が街には多いの、シャドウ』
そう言ってまたララキはシャドウに絡みつく。
嫌そうな雰囲気を醸し出しているにも関わらず、平気なふりしてくっついているララキと僕とシャドウは外へ出た。

1/27/2023, 3:46:38 PM

テーマ:優しさ #76

ミッドナイト組織。それが僕たち、時を操る能力に体制のある組織の者たち。紫の紋章組織の正体ーー

『終わったぜ、真』
シャドウが下でぺろりと口の端を舐める。
「そうか」
僕は座っていたソファーから立ち上がる。
『勝瑠の居場所に検討は?』
「全く」
『だよな…』
シャドウはガクッと肩を落とす。
「まぁ、見つけられないことはないと思う」
『なんでいいきれるんだよ』
「アイツ等だよ」
僕は指差す。もう彼らの姿はそこにはなく布切れだけが残る。
「何らかの形で情報くらいは共有しているだろう。その情報を辿ればいい」
『なるほどな…って、それ誰がやるんだよ!』
そこが問題…と言いたいところだが、宛がある。
『…ヤツか?』
「あぁ…」
シャドウはハッとなって気がつくと言った。シャドウも知っているヤツ。それは人外のハッカーとも呼ばれるヤツだ。
『アイツ苦手なんだよな。付き纏ってくるし』
「シャドウに魅力でも感じているんじゃない?」
『ケッ。よせよ。そんな柄じゃねぇ』
「それを彼に言えばいいじゃないか」
シャドウは黙る。
『お前には気遣う優しさってもんがないのかよ』
「人外にも、人間にも必要ない」
僕はそう言うと勝瑠家を立ち去る。後を追うようにしてシャドウが僕についてくる。

1/26/2023, 1:58:37 PM

テーマ:ミッドナイト #75

真実を知りに勝瑠の家を訪れた真とシャドウ。
そこに待ち受けたのは偽勝瑠だったーー

『全く、勘の良いガキは嫌いだよ』
そう言って出てきたのは、ほっそりした男。口にはタバコ…ではなく飴を咥えている。
「誰だ、勝瑠はどこにいる」
『ここにはいないよ』
只者じゃないことは分かる。だが、今のは何なんだ。顔が変形した…。
『ソイツはね、時を操る力があるから』
「……」
男は話す。全て知っている情報だ。しかし、なぜそれを僕にバラす必要があるのか不明だった。
『君にもあるんじゃないの? 時を操る能力』
急に男が低い声を出す。
なんだ…? 雰囲気が変わった。
『真、やべぇぜ…』
シャドウが僕に言った。男にシャドウの声は聞こえていないようだ。ということは人外では無い…?
でも、能力を知っていること。そして、さっきからチラチラ見えている首筋にある紫の紋章により、この男が勝瑠の言っていた用心しなければならない男だと言うことを。
シャドウの言った、やべぇというのはさっきから背後から近づいているもう一つの人影のことだろうか。
ずっと考えていた。これは時間稼ぎなんじゃないか、と。余分な話をしてまで彼を背後につかせたかったのだろうか。

僕は第三の目を閉じる。当然のごとく、男たちは動いている。どうして動けるんだ。人外しか動けないはずなのに。
『正体を表したようだね、君』
『もう逃げ場、ない』
後ろから低い声が聞こえる。
「それはどうかな」
僕がそう言うと姿勢を低くする。うまくシャドウと連携を取り、2人を一方向にまとめる。
『な、何だ?』
シャドウが2人に絡みついた。やはりシャドウの姿は見えていない。
『これも能力か!!』
細い男が叫ぶ。
「さぁね」
僕がそう言うとシャドウに縛られている2人に近づく。
「さぁ、勝瑠はどこにいるんだ?」
僕がニヤリとして聞くと、2人は青い顔をした。
『い、言えねぇ!』
細い男が言った途端、シャドウがその男を絞る力を強める。
『ぐぁ…』
細い男が呻く。
「骨が折られるのも、時間の問題かもね」
僕がそう言うと細い男から背後に近づいていた、ガタイのいい男に近づく。男はオドオドしていた。
見かけによらずこっちのほうが情報を吐いてくれそうだ。
『マクロ! 絶対に、言うんじゃねぇぞ!! ミッドナイト組織において、その情報を漏らすことは許さねぇ!』
マクロと呼ばれた男は細い男を見る。
僕が近づくと首を横に強く振る。2人共だめか。強制的に拷問するのはこっちの面倒だし、こいつ等はあまり強そうじゃない。細い男の能力は結構面白かったけど、シャドウの存在に気づけないくらいだから低級だろう。
シャドウと視線を合わせ
『あとは好きにやっていいのか?』
そう聞かれたので頷く。
シャドウはケケケッと笑う。僕は少し離れたところで彼らのことを見ていた。情報吐けばこんなことにはならなかったのに。馬鹿だな。そう思いながら。まぁ、この僕とシャドウを弄んだ時点でバカは確定なんだが…。

ミッドナイト組織。
細い男が言っていた言葉。それが彼らの紫色の紋章を身に着けている組織のことなのだろうか。
あぁ、やっぱり話を吐かせてからやったほうが良かったかなと、後悔するのだった。

1/25/2023, 1:47:43 PM

テーマ:安心と不安 #74

シャドウから過去の話を聞いた真。
状況をなんとなく把握できた今、勝瑠に会いに行くーー

「ここだったよな」
僕はアパートのドアの前に立つ。それは、勝瑠と初めてまともに話した部屋だ。
『インターフォン鳴らせば?』
シャドウは僕に言った。
分かってる。分かっているけどなんだか怖い。
真実を知ってしまったからだろうか。知らないときは他人だと思っていた彼を、弟だと急に認識したからだろうか。これが安心と不安の境……。
『真』
そう言われてハッとなる。ドアが少し開いた。
『聞こえてるよ。そこまで分厚い壁じゃないからさ』
そう言ってドアを開けたのは、勝瑠だった。
『真兄さん。どうしたの?』
「忙しいって…」
『あぁ…。終わったから大丈夫だよ』
勝瑠はニコッと笑いかける。
『立ち話も何だし、中に入ってよ』
勝瑠はそう言ってドアを空ける。僕は何か違和感を覚えた。なんだろう、なにか違う…。
『どうしたの? 真兄さん』
勝瑠が首を傾ける。
「ねぇ…勝瑠。日記はどうした?」
僕は彼の手を見て言った。彼の手にはいつも持っていたはずの『閉ざされた日記』が無かった。
『兄弟だって、認識されてないんじゃなかったのかよ』
急に勝瑠の口調が凶変する。
『は? なんだコイツ』
「お前は誰だ」
僕は後ずさる。
『あ~あ。うまく騙せれば、計画も楽だったんだけど』
そう言って勝瑠の顔がぐにゃっと曲がる。
姿を表したのは……。

1/24/2023, 12:57:12 PM

テーマ:逆光 #73

夢に見た二人は僕の両親の可能性があることを知る真。それにはりかいできないことかあったーー

「もし、それが本当に両親だとしたら僕なんで覚えていないんだ?」
僕が疑問に思ったのはそこだ。
両親だけじゃない。勝瑠だってそうだ。兄弟ならわかるはずだ。
『それは僕にもわからない。ただ、僕たちは船の事件があったとき別々になった。僕は兄さんを探したよ。でも見つからなくて。でも、なんとなく感じていたんだ。兄さんが時止めの能力を使っていたから』
僕はわからなくなった。本当に勝瑠のことを信じていいのか、を。
シャドウは何も言わなかった。いつもはうるさいくらいに喋るのに。

『急ぎの用があるから、長い間一緒に行動できないことを許してください』
勝瑠はそう言って人混みに紛れた。
僕とシャドウは沈黙のまま歩き始めた。
『話がある』
いつになく真面目な声で言ったシャドウの雰囲気に、僕は静かに頷くしかできなかった。
「何」
僕が人気のない公園のベンチに座るとシャドウは
『俺は、真を知ってる』
そういった。
「ん? あぁ」
『きっとお前が思っているより知ってるんだ。俺は真のことを』
「何が言いたい」
『俺はお前の両親、勝瑠のことを知っている』 
「は?」
僕はなにか思うよりも先に口がそう言っていた。
『俺は真がなぜ、両親や勝瑠のことを知らないかも知っている』
「なんで…」
『これは言わないでおこうと思っていたことだ』
「なんでだよ!」
『お前のためにならない』
「そんなのわかんねぇじゃねぇか!」
何に怒っているのかわからない。
シャドウに? 自分に?
ただ、シャドウに当たってしまっていることはわかっていた。でも頭に血が上っていて止まることができない。
シャドウも何も言わなくなった。
「ごめん」
僕は少し経ってそれを自覚すると言った。
『いや、俺が言わなかったのが悪い』
「僕もなんにも聞かなかったから…」
シャドウは僕を見た。

『逆光だ』
逆光? 僕は急に言ったシャドウの言葉に理解ができなかった。
『逆光って、自分が光の方向にいるとき起こる現象だ』
「それは知っているけど…」
『真は今、未来という光を背に受けている状態だ』
「つまり?」
『本来は真は光の方へ行くはずなんだ』
未来へ、ということだろうか。
『今、真は過去にいる』
「過去?」
『そう、お前は過去へ進もうとしている』
両親を失った過去ということか…?
『俺も真も本当は現代よりも未来にいるはずなんだ。勝瑠も』
その時、勝瑠の能力を思い出した。タイムリープ…。
過去に行けたのなら、未来へ行くことも可能なんじゃないかって。
つまり、勝瑠は何らかのトラブルが起き、未来から僕たち家族とシャドウを過去へ。そして、そこで両親を亡くした。
僕と勝瑠、シャドウはそのまま未来へ行き、今日に至る。だから勝瑠は僕たちの住んでいた世界がこの現代の先にある未来だということを知っているんじゃないか、と。

だとしたら、さっきの男たちは時使いの僕たちを捕まえに来た奴ら、と考えるのが妥当だろうか。
なんとなくふわっとだが状況を掴めたような、そんな気がした。

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