狼星

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テーマ:逆光 #73

夢に見た二人は僕の両親の可能性があることを知る真。それにはりかいできないことかあったーー

「もし、それが本当に両親だとしたら僕なんで覚えていないんだ?」
僕が疑問に思ったのはそこだ。
両親だけじゃない。勝瑠だってそうだ。兄弟ならわかるはずだ。
『それは僕にもわからない。ただ、僕たちは船の事件があったとき別々になった。僕は兄さんを探したよ。でも見つからなくて。でも、なんとなく感じていたんだ。兄さんが時止めの能力を使っていたから』
僕はわからなくなった。本当に勝瑠のことを信じていいのか、を。
シャドウは何も言わなかった。いつもはうるさいくらいに喋るのに。

『急ぎの用があるから、長い間一緒に行動できないことを許してください』
勝瑠はそう言って人混みに紛れた。
僕とシャドウは沈黙のまま歩き始めた。
『話がある』
いつになく真面目な声で言ったシャドウの雰囲気に、僕は静かに頷くしかできなかった。
「何」
僕が人気のない公園のベンチに座るとシャドウは
『俺は、真を知ってる』
そういった。
「ん? あぁ」
『きっとお前が思っているより知ってるんだ。俺は真のことを』
「何が言いたい」
『俺はお前の両親、勝瑠のことを知っている』 
「は?」
僕はなにか思うよりも先に口がそう言っていた。
『俺は真がなぜ、両親や勝瑠のことを知らないかも知っている』
「なんで…」
『これは言わないでおこうと思っていたことだ』
「なんでだよ!」
『お前のためにならない』
「そんなのわかんねぇじゃねぇか!」
何に怒っているのかわからない。
シャドウに? 自分に?
ただ、シャドウに当たってしまっていることはわかっていた。でも頭に血が上っていて止まることができない。
シャドウも何も言わなくなった。
「ごめん」
僕は少し経ってそれを自覚すると言った。
『いや、俺が言わなかったのが悪い』
「僕もなんにも聞かなかったから…」
シャドウは僕を見た。

『逆光だ』
逆光? 僕は急に言ったシャドウの言葉に理解ができなかった。
『逆光って、自分が光の方向にいるとき起こる現象だ』
「それは知っているけど…」
『真は今、未来という光を背に受けている状態だ』
「つまり?」
『本来は真は光の方へ行くはずなんだ』
未来へ、ということだろうか。
『今、真は過去にいる』
「過去?」
『そう、お前は過去へ進もうとしている』
両親を失った過去ということか…?
『俺も真も本当は現代よりも未来にいるはずなんだ。勝瑠も』
その時、勝瑠の能力を思い出した。タイムリープ…。
過去に行けたのなら、未来へ行くことも可能なんじゃないかって。
つまり、勝瑠は何らかのトラブルが起き、未来から僕たち家族とシャドウを過去へ。そして、そこで両親を亡くした。
僕と勝瑠、シャドウはそのまま未来へ行き、今日に至る。だから勝瑠は僕たちの住んでいた世界がこの現代の先にある未来だということを知っているんじゃないか、と。

だとしたら、さっきの男たちは時使いの僕たちを捕まえに来た奴ら、と考えるのが妥当だろうか。
なんとなくふわっとだが状況を掴めたような、そんな気がした。

1/24/2023, 12:57:12 PM