狼星

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テーマ:安心と不安 #74

シャドウから過去の話を聞いた真。
状況をなんとなく把握できた今、勝瑠に会いに行くーー

「ここだったよな」
僕はアパートのドアの前に立つ。それは、勝瑠と初めてまともに話した部屋だ。
『インターフォン鳴らせば?』
シャドウは僕に言った。
分かってる。分かっているけどなんだか怖い。
真実を知ってしまったからだろうか。知らないときは他人だと思っていた彼を、弟だと急に認識したからだろうか。これが安心と不安の境……。
『真』
そう言われてハッとなる。ドアが少し開いた。
『聞こえてるよ。そこまで分厚い壁じゃないからさ』
そう言ってドアを開けたのは、勝瑠だった。
『真兄さん。どうしたの?』
「忙しいって…」
『あぁ…。終わったから大丈夫だよ』
勝瑠はニコッと笑いかける。
『立ち話も何だし、中に入ってよ』
勝瑠はそう言ってドアを空ける。僕は何か違和感を覚えた。なんだろう、なにか違う…。
『どうしたの? 真兄さん』
勝瑠が首を傾ける。
「ねぇ…勝瑠。日記はどうした?」
僕は彼の手を見て言った。彼の手にはいつも持っていたはずの『閉ざされた日記』が無かった。
『兄弟だって、認識されてないんじゃなかったのかよ』
急に勝瑠の口調が凶変する。
『は? なんだコイツ』
「お前は誰だ」
僕は後ずさる。
『あ~あ。うまく騙せれば、計画も楽だったんだけど』
そう言って勝瑠の顔がぐにゃっと曲がる。
姿を表したのは……。

1/25/2023, 1:47:43 PM