狼星

Open App

テーマ:街へ #77

真とシャドウは弟の勝瑠を探しに勝瑠家を出た。
そして『人外のハッカー』と呼ばれる者の家へーー

『ケッ、着いちまったよ』
シャドウが隣で肩を落とす。
「向かっていたからね。当たり前さ」
『そうだけどよ…。日をおいても良かったんじゃねぇか?』
「それじゃあ、勝瑠はどうでもいいってことか?」
僕の眉がピクリと上がる。
『いや、そういうことを言っているわけではないが…。というか、真がそこまで気にする相手なんてそうそういないからいいんだがな? いいんだが…な?』
シャドウは顔を下に向ける。
分かってる。シャドウがヤツのことを嫌っていると。
僕もわからない。なぜ自分がそんなにも勝瑠のことを救いたいと思っているかなんて。
僕たちの目の前には、一見の不気味な家が立っている。いわゆるホラーハウス。そう言っても過言ではないだろう。
「いくぞ、シャドウ」
傍から見たら、肝試しにでも入っているように見えるかもしれないが、ここにヤツは住んでいる。

「ララキ、いるか」
僕はそのホラーハウスに入ると言った。空が暗いため、家内も当然暗い。
『わー!!』
その時、子供のような高い声が聞こえる。
『久しぶりだね! 真!!』
そう言って棺桶から出てきたのはヤツ…ララキだ。
『あ!! シャドウいるじゃん!!』
後ろでゲ…という声が聞こえた。きっとうわ、見つかっちまった。とでも思っているのだろう。
『どうしたの? 真もシャドウも』
ララキはシャドウに抱きつくと言った。
「急ぎの用なんだ、ララキ」
ララキはシャドウに頬をスリスリとしている。シャドウは嫌そうに体をよじっている。
「ララキ」
『はいはい、わかったよ。まぁ、一回なにか聞いてからだよ』
ララキは渋々シャドウから体を話すと僕と向き合う。
『なんだい?』
「人探しをしているんだ」
『人探しぃ…?』
「あぁ」
僕が頷くとララキは、僕の顔をじぃっと見つめる。
『真が人探しねぇ…』
「なにか問題でも?」
『いいや、別に? 珍しいなと思っただけ』
そう言うとララキは棺桶に座る。
『僕がすればいいことは?』
「『ミッドナイト組織』という組織についての情報を人外たちから聞き出してほしい」
僕が組織の名前を口にすると
『なんだか、聞いたことある名前だなぁ』
そう言いながら顎に手を当てている。

『ねぇ、真』
考えている途中、ララキは僕を呼んだ。
『真、変なことに首を突っ込んでいないよな?』
ララキは真剣な顔をしている。
「わからない」
『わからないって…。それじゃあ、僕は依頼を放棄するよ?』
「それは困る」
『だって危険かどうかわからない組織のこと調べて、真に情報を教えたら、真は絶対に突っ込んでいくじゃない』
そりゃあ、当たり前だ。
『なんでその人探してるのさ』
「…弟かもしれないんだ」
『弟って真、一人っ子じゃないのかい?』
「それを確認するために探しているんだ。勝手に死なれちゃ困る」
僕がそう言うとララキは、何も言わずにまた顎に手を当てた。そして数分後
『わかったよ。真の依頼、引き受ける。しかし、すぐには集まらないよ』
「あぁ、分かっている」
『こっちも最善を尽くすけど、真もシャドウも情報集めて。そんなに大切な人なんだったら協力して』
「あぁ、もちろんだ」
『後、依頼の手数料だけど、帰ってきたら真実を教えてよ。今回はそれでチャラにしてあげる。僕の退屈しのぎくらいにはなるだろ?』
ララキはそう言うといたずらっぽく笑う。
「あぁ…。分かった」
『約束だぞ』
そう言って小指を折る。
『じゃあ、早速街へ行くか』
『街ぃ?』
『情報源が街には多いの、シャドウ』
そう言ってまたララキはシャドウに絡みつく。
嫌そうな雰囲気を醸し出しているにも関わらず、平気なふりしてくっついているララキと僕とシャドウは外へ出た。

1/28/2023, 2:35:47 PM