ここのところ、忙しくてもうクッタクタ。
やっとこ定時で上がれた土曜日、
6日分の洗濯物と向き合う。
…山盛り過ぎて、早々に白旗を揚げた。
『こんな職場辞めてやる!』
これ、いつ決意したっけ。忘れた。
とりあえず、何年も前から思っているだけで、
いまだに実行されていないことは確か。
体はダウン寸前気味だけど、
心のほうは、なんとか保っている。
どうしてだろう?
「遅くまでお疲れ様、大変だね」
「大丈夫?今日は電話取らなくていいよ」
「本当やってらんない、白目剥くわ」
そうだった。
こーんな何気ない言葉に、支えられているからだった。
周りの人の優しさに、感謝。
笑っちゃうような一言に、感謝。
それで私も笑顔で頑張れちゃったりする。
心の温度がポッと上昇して元気になれちゃう。
人の心に火を灯すのって、案外簡単なんです。
些細なことで、出来ちゃうんです。
私の文を読んでくださる方にも、日々感謝。
あなたの発した何気な~い言葉、
誰かの心を暖かくしていますよ!
絶対に!間違いない!!
▼心の灯火
▼些細なことでも
初めて見た時、いいなって思った。
頭が良くて、仕事ができて、
着ているスーツもセンスがあるし、
少し強引な性格も、男らしくていいなって、思った。
「彼、遊び人だよ」
同僚の忠告は本当だった。
何度目かのデートの帰り際。
告白しようとしたけど、あなたに遮られた。
『照れ臭いからさ、改まった言葉は無しにしよう。
ねえ、これからも傍にいてくれる?』
あのとき勝手に期待して頷いた、愚かな私。
今日も誘われるまま、彼の車に乗り込む。
車内を彩るのは流行りのラブ・ソング。
街明かりに照らされた横顔と、
ハンドルを握る大きな手に、
やっぱりいいなって、思う。
ああ、いっそ、
あなたの嫌がる「改まった言葉」を言ってしまおうか…。
いつになく真剣な表情の私に気がついて、
車を停めた彼がシーッと、唇に人指し指をあてた。
それから悪戯っぽい笑顔が近づいてきて、
私の頭は都合のいい方へ流されていく…。
また、この関係に名前をつけられなかった。
今はただ、この衝動に身を任せるだけ。
▼言葉はいらない、ただ・・・
もう信じらんない!
お母さんったらなんでこんな大事なこと忘れちゃうの!?
「従兄弟のショウちゃん家、今年はウチ来るって」
「え!いつ!?」
「明日」
ばかばかばか!
いまさら美容院行く時間もないし、
ネイルは伸びちゃってるし、
…あ!イチオシのコスメも終わりかけじゃん…。
「ちょっとアンタ、いつまで準備してるの!
いい加減挨拶しに来なさい!」
なによ!誰のせいだと思ってんの!
…でも仕方ない、会わなかったらもっと後悔するもん…。
今できる精一杯のお洒落をして、
バクハツしそうな心臓を抱えながら、
ひとつ年上の彼に会いにいく。
「こ、こんにちは…」
「…あ、久しぶり…」
ぎこちない会話。
息が止まりそう。
だって目に飛び込んできたのは、
記憶よりずっと大人びた、
真っ赤な顔の君。
▼突然の君の訪問
物心ついた頃、と言うのだろうか、
もとより、雨の日は嫌いじゃなかった。
降り始めの土の匂いと、
アスファルトから立ちのぼる熱気が、
何故か懐かしい気分をわき上がらせる。
特にお気に入りなのは遠くに見える山並みだ。
薄い雲が山頂からまっ逆さまにくだって、
霧のベールに包まれた山々は、
まるで水墨画みたいに見える。
なんて幻想的。
ずっと見ていたい。
天から注ぐ水のカーテンが少しの間、
現実から私の姿を隠してくれる。
まだ、やまないで欲しい。
そう願ってしまうくらいには、
雨の日は嫌いじゃない。
▼雨に佇む
ずっと憧れてたの。
まっしろいドレス、きらめく指輪、
タキシードを着た大好きなあの人と歩く道。
ただ、訪れる別れには、
最後の最後まで、目をつぶっていた…。
あのね。
『お祝いだから』って、
はりきってご馳走を作ってくれた時、
「本当は行かないで欲しい」と、
目が訴えているの知ってたよ。
だからあたしも、
「もう少しだけ、あなた達の娘でいたい」と、
思っちゃったよ。
今日、純白の晴れ着に包まれて、
父母の大きな手を離れ、大切な人の元へゆく。
堪えきれっこないと分かりながら、
溢れる涙をむりやり奥に押し込めて、
やっぱり不格好に震えた声で伝えた。
「今まで育ててくれて、ありがとう」
▼さよならを言う前に