物心ついた頃、と言うのだろうか、
もとより、雨の日は嫌いじゃなかった。
降り始めの土の匂いと、
アスファルトから立ちのぼる熱気が、
何故か懐かしい気分をわき上がらせる。
特にお気に入りなのは遠くに見える山並みだ。
薄い雲が山頂からまっ逆さまにくだって、
霧のベールに包まれた山々は、
まるで水墨画みたいに見える。
なんて幻想的。
ずっと見ていたい。
天から注ぐ水のカーテンが少しの間、
現実から私の姿を隠してくれる。
まだ、やまないで欲しい。
そう願ってしまうくらいには、
雨の日は嫌いじゃない。
▼雨に佇む
8/28/2022, 8:01:09 AM